稲盛和夫、昭和7年生まれ。やはり戦前生まれは違う。

クリエーティブ・ビジネス塾29「稲盛和夫」(2012.8.1)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、JAL
2010年に会社更生法の適用になった日本航空JAL)が、2012年9月に再び上場されようとしています。つぶれた会社が名実共に復活します。実現すればフェイスブック以来の大型上場になります。JALを生き返らせたのは、稲盛和夫(1932〜)です。稲盛は日本航空会長として、無給で復活への指揮を執り会社を建て直しました。
稲盛は1959年に京都セラミック(京セラ)を起業し大企業に育て、1984年に第2電電(DDI)を興し現在のKDDIの発展につなげています。そのかたわらに稲盛は、哲学、宗教、文明、人生、そして経営、さまざまな著作を書き上げています。稲森がすごいのは理論と実践の一体化です。理屈を言うだけではありません。実践します。口だけはありません。結果を残しています。こんな経営者いません。また逆にビジネスで実績を残した哲学者もいません。
稲盛の著作の中から『生き方』(サンマーク出版)を読みます。8年前に出版された本はいまだに売れつづけてます。米・中・韓、とくに中国では100万部を越えるベストセラーになっています。
2、生き方
「『この世になにをしにきたか』と問われたら、私は迷いもてらいもなく、生まれたときより少しでもましな人間になる」(前掲p.15)。
では、ましな人間とは何か。
「人間として正しいことを追求する」(前掲p.20)
では、正しいこととは何か。
「正しい生き方とは、けっしてむずかしいことではない・・・嘘をつくな、正直であれ、人をだましてはいけない、欲張るな・・・」(前掲p.135)
27歳で京セラを始めたとき、経営の知識はゼロに近かった。そこでこう決心します。
「原理原則、・・・『人間として何が正しいか』・・・」(前掲p.84)
ビジネスで何の実績もない、学校の先生が言っているのではありません(誤解がないように学校の先生を馬鹿にしているのではありません)。日本を代表する経営者が言っているのです。
そして人生の幸福を一つの方程式で表現します。
「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」(前掲p.24)
まず足し算ではなくかけ算であることに注意、つぎに熱意と能力は0点から100点まであるが、考え方にマイナス100点からプラス100点まである。つまり考え方が間違えなら熱意も能力も何も達成できない。補足すれば、考え方とは「人間として何が正しいか」です。
3、稲盛ではなく、「稲」と「森」
ビジネスには関心がないならば、考古学、歴史、文明論から稲盛和夫に関心を持つべきです。
長江文明です。稲盛は長江文明の学術調査に資金を提供し、1995年に哲学者の梅原猛とともに中国杭州良渚遺跡(りょうしょいせき)を訪れています(稲盛和夫『ガキの自叙伝』p.206 日本経済新聞社)。長江文明とは、世界最古の黄河文明より以前の文明です。梅原猛稲盛和夫のサポートにより、安田喜憲京都大学教授らの世界史をくつがえす研究が続けられています。
第一に長江文明は「稲」作文明でした。これまでの世界の4大文明は、エジプト、メソポタミア、インダス、黄河文明は、みな麦作文明でした。稲作は水を大切にし、土地を大切に、自然を大切にしました。麦作は土地を開き、最後は荒れ地にし、自然を破壊する文明でした。
第二に長江文明は、湿潤地帯で生まれた「森」の文明でした。森には再生と循環がありました。キリスト教のヨーロッパでは人間の幸福のために、森を破壊しました。
第三に長江文明には文字がありません。未発見なのかもしれません。しかし文字は核兵器のような人類の悲劇の発明だったのかもしれません。
長江文明は、地球環境の時代に、欠かせぬ研究になっています。稲盛ではなく「稲」と「森」、この2字のなかに人類の未来を解くカギがあります。