キリスト教には問題がたくさんあります。あたらしいローマ教皇に期待

クリエーティブ・ビジネス塾10「ローマ教皇」(2013.3.12)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、コンクラーベ
2月28日にベネディクト16世教皇を退位したために、教皇選挙会(コンクラーベ)でフランシスコが新ローマ教皇に選ばれ、3月19日に就任ミサが行われました。ローマ教皇とは何か。全世界カトリック教会の精神的指導者で、カトリック教会のローマ司教です。法王とも呼ばれます。教皇は、初めキリストの12使徒のひとりペテロの後継者とされていましたが、やがてキリストの代理者と呼ばれるようになりました。さらに世界で一番小さな国バチカンの首長で国家元首でもあります。
キリスト教徒は世界に20億人います(うちカトリック信者は12億人)。イスラム教徒は11億人、ヒンドゥー教徒は10.5億人です。日本のキリスト教徒は約300万人、神道系1億700万人、仏教系9800万人(なぜ日本の人口が2億人以上になってしまうかは、初詣は神道、葬式は仏教・・・1人が2つ以上の宗教を解答するから)。
今回の教皇選挙は、教皇が「生前退位」した、598年ぶりの特異なケースです。かつての生前退位は1415年のグレオリウス12世。教会分裂を解決するためのものでした。しかしそのとき宗教改革が起こり、プロテスタントが誕生しています。今回の選挙のテーマは、台頭するイスラム教を封じ込め、巻き返すためです(『文芸春秋』4月号 P.418「古典でしか世界は読めない」佐藤優)。 
2、キリスト教
ユダヤ教キリスト教イスラム教はすべて旧約聖書聖典にしています。現代の主要な問題は「モーゼの十戒」のなかにあります。
1)一神教・・・「あなたはわたし(あなたの神、主)のほかに、なにものをも神としてはならない」(旧約聖書 出エジプト記第20章)。これが一神教です。しかも神は「ねたむ」とはっきり書いてあり、わたし(神)を憎むものは、父の罪を子に報いて、3〜4代に及ぼします。
「一神論は多神論よりはるかに戦闘的です。ひとつの神の絶対的正義を信じ、その神の正義を妨げるものをすべて悪魔と考える」(梅原猛『森の思想が人類を救う』P.156 小学館ライブラリー)。
9.11テロ、イラク戦争、アフガン紛争だけではありません。かつてスペイン人はキリスト教の布教という名のもとに、アズテク文明、インカ文明を亡ぼし、虐殺と征服を正当化しました(安田喜憲一神教の闇』P.020)。
2)魔女・・・「人にはふさわしい助け手が見つからなかった。そこで主なる神は、(中略)人から取ったあばら骨でひとりの女を作り、人のところにつれてこられた」(創世記第2章)。一神教は男性原理の宗教です。イエスマホメッドも男性です。十戒には「あなたは姦淫してはならない」、さらに「隣人の妻、しもべ、はしため・・・隣人のものをむさぼってはならない」とあります。普遍的な性道徳を説いたものではありません。あきらかに男性を戒めたものです。
キリスト教で女性は蔑視されています。ジャンヌ・ダルクが火あぶりの刑にされたように、17世紀のヨーロッパでは1000人の女性が魔女裁判で処刑されています(前掲安田P.055)。新しい教皇を選ぶために集まっているのは115人の「男性」、なんとも異常な風景です。
3)自然破壊・・・モーゼの十戒は、神と人、人と人の関係をあり方を書いたもので、自然には一切触れていません。地球環境に危機をもたらしのはキリスト教です。中世のキリスト教の宣教師は、人間の幸せのためならヨーロッパの森をいくら破壊してもかまわないと、叫びました。その結果、17世紀にはヨーロッパの森の90%がなくなっています(前掲安田P.32)。
3、イスラム
「(イスラム過激派)ビン・ラディンのメッセージは、テロを、力なき抑圧された民族から強者の傲慢に対する答えである。また強者の高慢と、神を冒涜する思い上がり、そして残虐に対する正義の刑罰である、としている」(前掲 佐藤優からの孫引き)。今日も世界でテロは続いています。
新しいローマ教皇は、イスラム、現代の危機、キリスト教の問題に対してどう対処するのでしょうか。過激派を封じ込めるために、穏健派を異文化対話で味方にする、と佐藤優は示唆しています。新ローマ教皇の新しい言葉が注目されます。