ロシア人は、チェスの名手。

クリエーティブ・ビジネス塾26「007その2」(2013.7.18)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、『007は二度死ぬ(You only live twice)』
1967年の映画『007は二度死ぬ』は、日本人にとって何ともは恥ずかしい映画でした。
登場するのは、相撲取り、海女、忍者。風景は、バラックの上にそびえる東京タワー、舗装されていない土ぼこりの道、そこを走る最新型スポーツカー・トヨタ2000GT。そして日本俳優は、丹波哲郎若林映子浜美枝。平成の高校生が聞いても驚くような英語を話します(丹波はがんばってますが・・・)。そこにダンディ、スノッブデカダンスジェームス・ボンドが登場するのですから、映画を見なくても、想像できるようなもの。
ところが小説『007は二度死ぬ』は、読んでビックリ。英国の諜報活動の力と小説家イアン・フレミングの実力にひれ伏してしまいます。いままで何人かの外国人の政治家や文化人が、日本や日本人について語ってきましたが、フレミングのように的確に書いた人を知りません。
象徴的な例を挙げます。たとえば日本のウイスキー。フレミングは、「サントリー・ホワイト」をほめます。あの安いヤツは、ほかの高いヤツより飲める。エッ、エッ、エッと、驚き、いままでホワイトをバカにして、スコッチ(スコットランド製のウイスキー)を無理して買ってきた、自分が恥ずかしくなります。
2、日本人の謎と共感
レミングは、まず日本の特徴として、自殺の多さにあげます。毎年25000人が自殺している。恋人同士が日光の華厳の滝から身を投げる。大島の火山・三原山も自殺で人気がある。噴火口の焼けつくような傾斜をかけおり身を投げる。
なぜ自殺をするのか。フレミング忠臣蔵をとりあげます。47士は主君の恨みを果たしたあと、ハラ切り=切腹で自殺している。
さらに自殺は、神風特攻隊に話は広がっていきます。勲章はもらえない、必ず死ぬ、自殺で国に奉仕する攻撃。そしてカミカゼ作戦を発明した大西提督も降伏時には切腹で死んでいる。
忠臣蔵、神風特攻隊、そして自殺。私たちはそこに関連があると考えませんが、英国人フレミングにとっては、理解不能の共通項目でした。
「日本人の死に方というのは、ちょっと謎」。フレミングはボンドに言わせています。
逆に、日本人の自然生活に共感を寄せています。大きく開け放った引き戸から、かすかに港と海の匂いがただよってくる。日本の家は、住人と自然との仕切りをできるだけうすくしておこうとするすばらしい設計になってる。
さらに、ボンドはこんなことを考える。本当に健康と活力の黄金色に輝いている海女の姿を見ながら、昼間は水平線まで海女を乗せた小舟を漕ぎ、たそがれに小さくて清潔な家にいっしょに帰る。余生をこうして過ごせたら、これ以上すばらしいことはない。
3、インテリジェンス
インテリジェンスとは諜報活動、スパイです。私たち日本人は、交渉相手としての中国人、韓国人、米国人の特性を、どのようにとらえているでしょう。フレミングは実践的に外国人を考えます。
「賭博がアメリカ産業のなかで単独では最大のもの・・・鉄鋼業より、自動車産業より大きい」(『ダイアモンドは永遠に』同 P.30)
「ロシア人というやつは、大したチェスの名手だからな。・・・敵への一手一手をあらかじめ計算に入れているんだ。敵の手をちゃんと読んでいて、それに対抗する手を打ってある」(『ロシアより愛をこめて』P.283)
「ドイツ人というやつは、ひと皮めくればきっときちょうめんな変りもの」(『ムーンレイカー』P.154)
では、フレミングは日本人をどう見たのか?
「日本人というのは外人を内緒のしゃれの肴にして喜んでいる」(『007は二度死ぬ』P.80)
ズバリです。どうですか。フレミングは見抜いています。つまり日本人は島国根性、身内とガイジン(外人)をはっきり区別しています。陰険で、暗い。それより私たちは、商売の顧客として、外国人をもっと研究すべき。心のTPPが必要です。