007は、英国国防省の職員です。

クリエーティブ・ビジネス塾25「007」(2013.7.11)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、007(ダブルオーセブン)
007を知ってますか?ゼロゼロセブン、ダブルオーセブン。どちらでもオーケー。ここではネイティブに忠実に、プロっぽく「ダブルオーセブン」と読みます。
最近最新作の映画『スカイフォール』が、レンタルされるようになりました。007は、1960年代から全世界をとりこにしている超大ヒット作です。
原作は、英国の秘密情報部員ジェームス・ボンド(007)の活躍を描いた、スパイアクション物語。作者は英国人のイワン・フレミング(1908~1964)。英国の陸軍士官学校で学んだ後に、ロイター通信のモスクワ支局長などを勤め、実際に海軍情報部で諜報活動に従事しています。だから007には、奇想天外の面白さだけでなく、迫真のリアリティがあります。
なぜヒットしているのか?それも世界でヒットしているのか?
まず、ボンドがDandy(ダンディ=一級品)。おしゃれで、キザ。女にモテて強い、理想の男性だからです。つぎに、Snob(スノッブ=俗物根性)。上流気取りで、学問や知識をひけらかすから。貧しい者が知りたがる、うんちくがあるからです。そして、Decadence(デカダンス=退廃)、豊かな社会の行く末を見ている。成り上がり者や消費社会を小馬鹿にしているからです。
つまり、007にあこがれる私たちとは、かっこわるく、モノを知らず、貧しい者です。原作者、イワン・フレミングは、億万長者と貴族の両親のもとに生まれ、最高の学識と国際舞台の最前線で活躍した経験を持っていました。007は、かつて世界の頂点にあった英国でしか生まれない、そしてその英国でも頂点に立つ者だけが書けるユーモア(上品なしゃれ)の物語です。
2、『007は二度死ぬ』(You only live twice)
007シリーズの第5作、『007は二度死ぬ』が日本で撮影され、1967年に公開されています。60年代の日本は高度成長期といえまだまだ貧しかった。映画はヒットし、007ブームが起こりましたが、いま見るとなんとも恥ずかしい映画になっています。
まず出演者。日本からは丹波哲郎若林映子浜美枝が出演しています。丹波は熱演していますが、全員どうにも英語が下手です。
つぎに映像。相撲、忍者、海女が登場する日本の古い絵はがきです。本物の相撲取り佐田の山が登場します。国技館(蔵前)も。ボンドが桟敷で相撲を観戦します。たくさんの忍者が空手着を着てトレーニングします(なんともダサイ)。海女さん(あたりまえですが女性)が、着衣をつけたまま(これもあたりまえ)、海に潜ります。でもとてもヘンな映像です。
さらに日本の自慢のスポーツカー、トヨタ2000GTが登場します。でも砂ぼこりの道を走ってどうなる。東京タワーも写されます。でもヘン。高層ビルも何もない、バラックの街に、鉄骨のタワーがそびえ立っているのですから。超アンバランス。
それで、飲むのはドン・ペリニヨン。いわゆるドン・ペリ。アー恥ずかしい。ここから芸能界や業界はドン・ペリ、ドン・ペリと言うようになったのですね。
3、日本人
ベントレー、マーシャルのヘッドライト、シトロエン、ヴェスパのスクーター、ゴードンのジン、バカルディのラム、ドライ・マティーニウォッカ・トニック、ドン・ペリニヨン、そしてサヴィル・ローのスーツ。
以上は007に登場する小道具です。60年代の日本人がどれほど理解していたのでしょうか。
ひょっとすると今も日本人は変わっていないのかもしれません。英語はじゃべれない。レストランで「すいません!」と大声で叫ぶ。大勢で「生ビール!」を注文する。スーツのセンスが悪い。ブランドバッグを持っている。アイコンタクトをして聞いたり話したりできない。そしてダンディにとっていちばん重要なのは、米英のマナーや生活習慣を学ぶだけでなく、日本の国益を主張することです。でなければ、秘密情報部員の仕事は成り立たちません。いうまでもなく007のジェームス・ボンドは英国の国益のために命を投げ出して戦っています。だからカッコいい。昨今、人道主義者のように抽象的な世界平和を主張する日本人を多く見かけます。これは何ともダサイ。