トヨタの奇跡。豊田家の奇跡。

クリエーティブ・ビジネス塾20「トヨタ」(2014.5.14)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、奇跡
トヨタトヨタ自動車)は1000万台の自動車を売る世界第1位の自動車会社です。2位はGM(ゼネラルモータース=米国)、3位はVW(フォルクスワーゲン=ドイツ)。トヨタが世界のトップ。まずこのことが奇跡です。自動車はダイムラー(ドイツ)とベンツ(ドイツ)により1886年に発明され、1908年にT型フォード(フォード=米国)が発売され大量生産方式が確立し、誰もが乗れる「クルマ」になりました。対して日本は話ならないほどの自動車後進国でした。たとえば1940年(昭和15年)の自動車生産台数は米国447万台に対して日本4万6千台、日本は米国の100分の1の生産力しかありませんでした(『私の履歴書豊田章一郎 日経4/5)。
つぎのトヨタの奇跡は、社長が豊田章男(とよだあきお 1956~)であることです。トヨタ自動車の創業は1937年。豊田自動織機株式会社の自動車部門が独立し設立されたものです。豊田自動織機の母体を作ったのは発明王豊田佐吉(1867~1930)です。その息子豊田喜一郎(1894~1952)も、さらにその息子の豊田章一郎(1927~)も社長、さらにその息子が豊田章男であることです。
2、モータリゼーション
トヨタの奇跡はそのまま日本の奇跡といえるものです。
1)モータリゼーション・・・産業社会が自動車中心に動いて行くようになることをモータリゼーション(車社会化、自動車化)といいます。米国のモータリゼーションはT型フォードにより1920年代に始まり、ヨーロッパはドイツのアウトバーン(高速道路)により1930年代に始まっています。日本は先述のように1940年に米国の100分の1。モータリゼーションは欧米よりはるかに遅く、戦後1964年オリンピックの後から始まったとされています。つまり欧米から30~40年遅れていた日本が自動車生産でトップに立つ奇跡を起こしています。
2)マーケティング・・・クルマを知ることで私たちはマーケティングを学べます。マーケティングとは4P(Product=何を作るか , Price=いくらで売るか , Place=どこで売るか , Promotion=どんな広告を打つか)を使ってクルマを売ることです。たとえばトヨタには、ヴィッツカローラ、アクア、プリウスマークX、86(ハチロク)、ハリアー、クラウン、レクサスなどのラインアップがあります。それらは生活者の「ライフステージ」や「ライススタイル」にマッチするように作られています。
3)グローバリゼーション・・・クルマは国際社会です。まず物づくり。自動車を作るとは欧米に学ぶことでした。トヨタの歴代の社長はみな外国から学んでいます。そして私たちドライバー。芸術に国境がないように、クルマにも国境はありません。どこの国行ってもどの国のクルマに乗っても運転できます。見知らぬ人同士でもクルマの話題になれば誰とでも親しく話すことができます。クルマに乗るとは国際人になることです。現代の私たちは豊かさに自信を持ち過ぎ、鎖国のように内向きになりすぎています。奇跡にあぐらをかいていることはできません。世界に学ぶ必要があります。
3、トヨタ
トヨタは2014年3月の営業利益を史上最高の2.3兆円と発表しました(日経5/1)。自動車メーカーとして史上初1000万台を売りました。無敵のトヨタのようですが、そのトヨタにも弱みがあります。
トヨタはオリンピック、ワールドカップと並ぶ世界最大のモータースポーツイベントF1に7年も参加しましたが(2002~2007)、とうとう一度も勝利を挙げられず、景気後退とともに撤退しています。
トヨタのクルマには個性がない。プリウス、アクアが売れているが、あのデザインのクルマが世の中に増えていいのか。批判があります。トヨタのクルマはいいクルマですが、セクシーじゃない、ドキドキさせない。真面目でいい人ですが、危ないところがない、魅力に欠けるのです。
しかし豊田章男社長はやってくれそうです。2010年彼は、米国議会代議員の公聴会プリウス欠陥車疑惑に対して堂々たる英語でスピーチをし、ディベートには日本語で応じました。国際舞台でのあんな颯爽としたビジネスパースンは彼が日本初でした。そして彼は国際C級ライセンスを持つレーシングドライバーでもあります。レクサスをテストし、スポーツカー86(ハチロク)でレース場を走りました。豊田章男もまたトヨタの新しい奇跡を起こしてくれるに違いありません。