「ミライ」か「テスラ」か。未来が始まります。

クリエーティブ・ビジネス塾38「ミライ」(2014.9.17)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ミライ(TOYOTA MIRAI)
社会を変えるクルマ、トヨタが新発売する燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)の名前が「ミライ(TOYOTA MIRAI)」と発表されました(日経9/6)。なにが社会を変えるのでしょうか。
1)燃料電池車は水素を燃やして電気を作りモーターを回しクルマを走らせます。水素が燃えると何になるか。水です。排気ガスが出ません。究極のエコカーです。空がきれいになり、地球温暖化に歯止めがかかります。(水素は鉄鋼や化学の工場で副産物として大量に発生する。しかしガスや石油から作るとその過程で炭酸ガスは出る)。
2)ガソリンを使わない。ということは石油の輸入に頼らなくてよくなる。国を豊かにします。
3)注目は価格。トヨタは700万円程度で発売する予定です。政府は200万円の補助金を出します。500万円で手に入ります。これは驚異的な低価格です。なぜなら、10年前までFCVは1台1億円といわれました。現在、韓国の現代自動車は、自社のFCV試作車を自治体などに納入していますが、その価格は1,500万円。現代の幹部も驚いた価格です(日経8/5)。
問題は燃料の水素の値段と補給する水素スタンドです。経済産業省は15年までにはガソリンと同程度の価格にし、さらにそれ以下にする計画を立てています。水素スタンドは現在は全国で40カ所位。これも高速道路を中心に全国100カ所になります(日経8/1)。
2、テスラ・モーターズ
クルマの世界ではもうひとつ注目すべき動きがあります。電気自動車(EV=Electric Vehicle)の米テスラ・モーターズです。EVとは、バッテリーでモーターを回して走るクルマです。航続距離は200~500キロ、充電は数時間。こちらも環境にやさしいエコカーです。排気ガスを出しません。
テスラはクルマの世界の「アップル」です。まず直販方式。テスラはメーカーが販売しています。
つぎにアフターサビス。テスラのEVはネットの常時接続されています。ソフトウェアのアップデートというアフターサビスが受けられます。現実にセダンの出火事故というクレームに対して、修理ではなく車両の通信機能を使い設定を変え、問題を解決しています(日経8/12)。
そしてもうひとつ、テスラの名物はグーグルのラリー・ペイジが絶賛するCEO、イーロン・マスク(43)です。固定観念を打ち破り、規制に挑戦する起業家です。宇宙開発の「スペースX」や太陽光発電会社を起業しています。テスラは先日、「自動運転システムを自社開発」し、3年後に発売する3万5千ドル(367万円)の新型車に一部搭載すると、発表しました(日経9/9)。
未来の勝者は、水素で走るFCV「ミライ」か、ネットで走るEV「テスラ」なるのか。
3、未来
2013年に世界で生産された自動車は8500万台、HV(Hybrid)は190万台、EVは10万台です。残りの8000万台以上のガソリンエンジン車のなかでの、大きな動きがターボ車(過給器付き)です。ターボは排気量が小さく燃費を改善しながら、大型車なみの出力を持ちます。現在ターボ車は900万台、18年までに2400万台に増えます。HVはガソリン車より50万円高い。中国ではターボだ。先進国でも中大型に小型のターボの動きが広まっています。
地上を走るクルマ、電車。空の飛行機。今から10年後、2020東京オリンピックの後の日本では新しい未来が始まっています。まず国産初のジェット旅客機、三菱航空機の「MRJ」が日本の空を飛んでいます。「MRJ」は、70~90座席、燃費性能のよい小型ジェット機です。すでに全日空が25機発注、そして先日日本航空が32機の導入を決めました(日経8/28)。うれしいじゃありませんか。零戦、隼(はやぶさ)。もう昔語りをしません。ジェットも日本だと胸を張れるのです。
次にリニア新幹線。2027年に東京→名古屋で時速500キロの営業を始めます。新幹線も負けていません。時速400キロを目指して、技術革新が進行中。2020年代には実現します(日経8/26)。
「ミライ」や「テスラ」が道路の主役なるのは、2020年代。そのとき、空気がきれいな日本では、誰がスポーツのスーパースターになっているのでしょう。テニスの錦織圭か。野球の大谷翔平か。ゴルフの石川遼か。それともまだ見ぬ人が世界の注目を集めているのでしょうか。