中国の大問題、実は日本の大問題。

クリエーティブ・ビジネス塾39「中国の大問題」(2014.9.24)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、中国の大問題
前中国大使の丹羽宇一郎が書いた『中国の大問題』(丹羽宇一郎 PHP新書)が売れています。日本人のなかで、いちばんたくさん中国を歩いたと思われる人間の話には、説得力があります。そして大問題なのは、この本が「日本の大問題」を指摘していることです。
1)日本の大問題・・・問題はシンプルです。日本の人口は2060年までに4000万人減少する、つまり売れなくなる、経済が立ち行かなくなる。ではどうすればいいのか。となりの中国を見よ。日本の11倍の人口を持つ市場がある。中国を目指そうではないか。
2)中国共産党・・・14億人の中国国民は8800万人の党員を持つ共産党が治めています。実質には「チャイナセブン」といわれる7人の中国共産党中央政治局の常務委員によって中国は統治されています。独裁です。日本のように選挙制度にできないか。丹羽は不可能と断定します。読み書きからの基礎教育ができなければ当分選挙はできない。ではなぜ、共産党は信用されているか。第一に、中国を豊かにした。第二に、日本に勝った。これが共産党の正当性です。
3)チャイナリスク・・・領土問題、反日運動で日系企業は攻撃されます。「チャイナ・リスク」と呼ばれます。丹羽は問います。では中国を抜け出してどこに行くのか。ベトナム、タイ、カンボジア・・・どこにも違ったかたちのリスクがある。中国の方がまだましだ、後悔してからでは遅い。現実に中国市場での日本の地位は、ドイツ、アメリカ、韓国に奪われています。
2、日本の失敗
丹羽中国大使は在任中に、尖閣諸島の購入問題が浮上したときに「日中関係に深刻な危機をもたらす」と発言し、新中派、売国奴と罵声を浴びせられました。「尖閣は日本の領土であり、領土問題は存在していない」。丹羽は従来からの日本政府の立場と変わらない発言をしていました。
1)尖閣諸島・・・2012年9月9日、中国の胡錦濤国家主席野田佳彦首相は、国際会議のあと廊下で10数分の立ち話をします。翌日、日本政府は尖閣諸島を国有化する、と発表します。丹羽は相手の顔に泥を塗った、激怒させたと批判しています(p.142~144)。外交はタイミングと根回し。なぜこの時点で国有化を突然発表した、ケンカを仕組んだとしか思えない。
2)靖国神社参拝・・・2013年12月、安倍首相は靖国神社参拝をします。中国はもちろん韓国、米国を怒らせます。総理は米国には事前に知らせます(それでも米国は失望を表明しました)。しかし中国には、尖閣と同じ、突然で面子をつぶします。国際的な反日感情を利用して米、ドイツ、韓国は中国進出を加速させています(p.197~201)。国益は失われています。
3)日中共同声明・・・1972年9月27日、田中角栄首相と周恩来総理は日中共同声明を発表します。両国は不正常な関係を終了させ、中国は戦争賠償の請求を放棄します。丹羽はこの声明が、アジアの経済発展を保障したと断言し(p.184)、そして尖閣問題は、「フリーズ(凍結)」させろ、と提案します(p.157)。
3、日本の大問題
「No.1にならなくてもいいもともと特別なonly one」(『世界に一つだけの花槇原敬之作詞作曲)丹羽はこの歌に怒ります。「自己中心的な負け犬の考え方だ」(p.218)。貧しくても自分はいい。要するに、努力はかっこ悪いという風潮が日本に蔓延してしまったと、指摘します。
1)米国ハーバード大学には全世界135カ国から4500人の留学生が集まっています(2012年)。最多は中国の582人、日本は13人(p.187)。ウソー、叫びたくなります。
2)日本の大学進学率は51%(2010年)。OECD経済協力開発機構)加盟国34カ国のなかで24位。トップはオーストラリア96%、米国74%、韓国71%。この事実も信じられません(p.267~268)。
3)日本の労働者の35%は非正規社員。企業は社員の研修費を9割近く削っています(リーマンショック前比)。ブルーカラーの教育ができていない。仕事に向かう情熱がないのです(p.216)。
かつて占領軍は、「太平洋戦争史」、「日本国憲法」、「東京裁判」で、日本を破壊しようと企みました。あれから70年、日本撲滅は着々と成果を上げています。