クリエーティブ・ビジネス塾51「水素社会」(2014.12.10)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、原発
福島でいまだに自宅に帰れない人たちのことを考えると胸が痛みます。ですが原発即時停止は選択すべき政策ではありません。原発反対は生活の矛盾を増大させます。
第1に、世界の原発は25年後の2040年までに6割も増えます(IEA=国際エネルギー機関の世界エネルギー展望より。日経11/13)。原発が大幅に増える国は、中国、インド、ロシア。やや増えるのは米国、やや減少するのはEUと日本です。いうまでもありませんが、日本は世界有数の原発輸出国です。日本は原発で食っています。第2に、日本では東日本大震災後の原子力発電所の停止で、火力依存度は9割に近くになり、化石燃料輸入額は10兆円も増え、二酸化炭素排出量は過去最高(2013年度)を記録しています。
そして第3に、22年までに全原発を閉鎖する予定のドイツが、深刻な問題に直面していることです。まずエネルギー供給問題に悩み石炭火力発電頼り大気汚染を拡大しています。つぎにドイツの家計は米国の2倍の電力料金を払い、企業は競争力の低下に悩んでいます(日経11/27)。
12/14に投票が行われる日本の衆院選挙で、原発容認は自由民主党だけ、野党は原発即時ゼロ、ないしは原発反対、これってヘンです。エネルギーの最前線で闘っている作業員、科学技術者、ビジネスパースン、経営者をバカにしています。野党は政略でエネルギーを語っています。だから政治はむずかしい、深入りしたくありません。今日は未来のエネルギー社会を展望するために水素社会について学びます。
2、水素社会
トヨタがFCV(Fuel Cell Vehicle=燃料電池車)の「ミライ」を12/16に発売すすことになりました。FCVとは水素を燃やして発電しその電力でモーターを回し走る自動車のことです。水素は酸素と結合し燃えると水になります。ですから排気ガスを出しません。「究極のエコカー」です。トヨタがハイブリッド(電気とガソリンで走る)のプリウスを発売したのは1996年、あれから20年近く、700万台を売り省エネとエコロジーのクルマの革命を成し遂げました。これから20年、未来が楽しみなります。2025年にはクルマが走っていなかった頃の騒音と空気なきれいな社会がやってくるからです。
FCVの第1の問題は、水素の価格です。水素は石油や天然ガスから取り出す、あるいは太陽光、風力の自然エネルギーを活用して水から製造されます。現在の価格はガソリンの2倍。水素ステーションの運用費用の一部を官民で負担する仕組みを作ることで達成可能です(11/14日経)。2020年までには現在のハイブリッド車なみの燃費で走れるようになります。1km10円です。第2の問題は、水素ステーション。現在は建設中を含めて40カ所。1カ所の建設に5億円。目標は2015年までに100カ所ですが、この価格ではむずかしい。ドイツのリンデ社の水素充填システムは、1億4600万円(日経11/22)。日本の移動式ステーション(トヨタ、岩谷産業で開発予定)は、2億〜3億円。水素の充填は3分、ガソリンと変わりません。インフラ整備に困難はありますが、可能性は充分です。
3、2020東京
水素の可能性はクルマだけではありません。家庭向けの定置型燃料電池、水素を使った本格的な発電所、さらにはエネルギーの「貯蔵庫」にもなります。電気は貯蔵できません。余った電気で水素を作り貯めておけばいいのです。
水素社会のショーケースになるのが2020東京オリンピック・パラリンピック、「晴海水素タウン」です。まず燃料電池バス。都バスを中心に50台以上が都民と選手を乗せて走ります。選手村は文字通り水素タウンになります。燃料電池を使った発電所から電気が送電されます。
発電、給湯、暖房、クルマ、そして船の動力源・・・暮らしの身近に水素のある、新しいライフスタイルが、世界に向かってプレゼンテーションされます(日経11/20、11/21)。
原発反対は楽しい提案になっていますか。1000年に1度の地震のための防波堤は建設中止になっています。火力発電で地球温暖化を加速しています。無責任ではありませんか。ビル・ゲイツの小型原発などの新技術を学びませんか。太陽光発電はどうですか。生産コストと不安定な供給が大きな課題。ドイツはそれで苦しんでいます。水素社会にしてエネルギーを貯蔵しませんか。「反対」はおしゃれじゃない。「提案」しましょう。「ミライ」は未来を拓きます。