クリエーティブ・ビジネス塾50「LGBT」(2014.12.3)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ティム・クック
アップルのCEO(最高経営責任者)がゲイ(同性愛者)であることを告白したのは、10月末のことでした。自らの同性愛的な嗜好を社会的に明らかにすることを「カミングアウト(coming-out=デビューする)」といいます。ティム・クックはカミングアウトのそのわけを、自分の性的指向を受け入れられない人を助け、孤独な人に慰めをもたらし、そして権利の平等を求める人を勇気づけるため、と説明しました(日経11/25)。ティム・クックのカミングアウトは、同性愛に偏見が強い米国社会に風穴を開け、アップルがジョブズ後の新しい時代に入った、ことを印象づけました。
しかし世界の一流企業のCEOのカミングアウトは異例です。まずキリスト教保守派の一部はアップルの不買運動を始めました。そして同性愛者を弾圧するロシアでは故スティーブ・ジョブズの記念碑が撤去されました。米国では同性婚を合法化する州が増えていますが、世界の77カ国で同性愛は犯罪です。サウジアラビアなど5カ国では死刑もあります。
2、LGBT学生
性的マイノリティー(少数派)はLGBTと呼ばれます。
Lesbian=同性愛の女性、Gay=同性愛・ホモ、Bisexual=異性と同性の両方に性的欲求を持つ同性愛者、Transgender=自分の性に違和感を持つ人。
LBGTの人は5.2%、20人に1人います(2012年電通総研調べ。日経11/25)。これから社会に出て行くLBGT学生にとっては、就職活動が大きなカベとなっています。ゲイの自分は、公務員になれるだろうか、面接で明かすことができるだろうか、そして就職してからカミングアウトができるだろうか。心配は徐々に解消されつつあります。社会はLGBTを認める方向で動いています。
まず、LGBTが働きやすい外資系企業ランキングがあります。つぎに、ICU(国際基督教大学)のジェンダー研究センターでは、LGBTが集まるサロンが開かれ、就活の悩みを聞いています。さらに外資系企業のモルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスではLBGT学生向けのセミナーや相談会を開いています(前掲日経)。
最近よく聞く言葉があります。「ダイバーシティ(Diversity)」。ダイバーシティとは、多様性、個々人の違いを尊重して受け入れること。多様な能力、価値観、発想を持った人材を活用することです。
3、美輪明宏
「ごきげんよう、さようなら」。LGBTの大先輩、美輪明宏(1935~)は、NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』のナレーションで、またまた時の人になりました。ドラマの中で使われた『愛の讃歌』が話題になり、79歳で紅白歌合戦の出場します。
16歳で「神武以来の美少年」としてデビューし『メケ・メケ』のヒット。24歳、日本で最初のシンガーソングライターとして『ヨイトマケの唄』。32歳、舞台『毛皮のマリー』。70歳テレビ番組『オーラの泉』。美輪明宏は奇跡を起こす人です。音楽会では足の不自由の人が歩けるようになる、行く先々で不通の電車動き出す、欠航の飛行機が飛ぶ、不思議な能力を持った人です。
LBGTタレントの3強がいます。美容師のIKKO(イッコー、1962~)は、北九州美容専門学院出身。そしてマツコ・デラック(1972~)、千葉県㸿橋(こてはし)高校(木村拓哉と同じ)、東京マックス美容専門学校出身。さらにミッツ・マングローブ(1975~)。慶大卒、英国ウエストミンスター大中退です。イッコー171センチ85キロ(減量で65.5キロ)、マツコ178センチ140キロ、ミッツ182センチ70キロ。みんな辛口でやさしく、堂々としています。
性の多様性(ダイバーシティ)は、性の乱れではありません。「平安からのお小姓の歴史を現代版にアレンジしようとした」(「『花子とアン』私のブームは何度も来る」美輪明宏『文芸春秋』2014.10)と、美輪明宏は主張します(「小姓(こしょう)」は、貴族や武将の秘書、同性のセックスパートナー)。
平安時代の白河上皇は平清盛の父平忠盛と恋仲、ギリシャの哲学者プラトンは師ソクラテスの愛人、性の多様性(ダイバーシティ)は近代の産業社会に封印されました。LGBTを認めることは、性の復活、性のルネサンンス、人間の解放につながります。