クリエーティブ・ビジネス塾52「シルバー民主主義」(2014.12.17)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、52.66%
12/14投票の衆議院議員選挙が終わりました。自民党と公明党の現政権の圧勝、そして共産党の躍進の結果でした。問題は投票率が52.66%、記録破りの戦後最低だったことです。投票所に行くのは高齢者。若者は行かない。そこで「シルバー民主主義」と名づけられました(日経12/15)。
高齢者だけでもうまく民意を反映していればいいのですが、自らが身につけた旧い価値観だけで投票しているのではないか。共産党の躍進にそのことが表現されています。共産党はとはその名の通り共産主義や社会主義の社会の実現を目指す政党です。それに対して自由民主党とは自由主義と民主主義で資本主義社会の発展を目指す政党です。つまり自民党政権に批判的な高齢者は、昔ながらの資本主義VS共産主義の選挙として考え、共産党に投票したと考えられるからです。
最低の投票率は、政治への無関心、選挙制度の再検討、民主主義の危機などとして論じられるべきでしょうが、ここでは選挙結果に現れた高齢者選挙民の勉強不足をテーマにします。選挙民である国民がどのような価値観を持とうとも個人の自由で、その価値観を尊重することが民主主義の大原則ですが、あえて今回の投票行動に現れた高齢者の価値観を問題にします。
2、大きな政府と小さな政府
ちょっと背伸びして大きな話に挑戦します。経済学のおさらいです。もちろん上っ面の議論、理解を深めるためには各自が学習する以外にありません。
現代にまで直結する経済政策は、1929年の世界大恐慌から始まります。町にあふれる失業者、経済不況を脱出するために登場したのは、ジョン・メイナード・ケインズ(1925~1946)です。需要は市場に任せていただけでは不足する、そこで政府は公共事業により仕事を作り、失業者を救い景気を回復させる。経済を動かすためには、「大きな政府」が必要である、という理論です。それは米国の軍事、ヨーロッパの福祉、日本の公共事業、さらに旧ソ連・東欧の国有企業とさまざまに姿を変えて登場してきました。ソ連の共産主義政権は1917年に誕生しますが1991年に崩壊します。さらに「大きな政府」は革新系政権の福祉のばらまき、非効率は公共事業の経済路線にもなり、財政破綻という結果をもたらします。
対して登場してきたのが、「小さな政府」の経済政策です。フリードリッヒ・ハイエク(1899~1992)、ミルトン・フリードマン(1912~2006)の経済思想をベースにした新自由主義です。「小さな政府」は、国有・公営企業を追放し、規制を緩和し、自由競争を奨励し、国家財政を削減します。英国のサッチャー政権、米国のブッシュ政権、日本の小泉政権です。しかし、「小さな政府」は格差と貧困をもたらします。
そこで登場したのが、大きな政府でも小さな政府でもない、「第3の道」です。英国のブレア政権、米国のクリントン政権、そして日本の民主党政権です。民主党は財政抑制、官僚批判、規制緩和、子ども手当、高校無償化などの政策を打ち出しましたが、デフレ不況を深刻にしただけでした(以上は、『ケインズの逆襲ハイエクの慧眼』松尾�PHP新書、を参考にしました)。
そして現在のアベノミックスになります。アベノミックスは金融政策、財政政策、成長戦略の3つの矢です。
まだ始まったばかりですが、アベノミックスの成否には、世界が期待し注目しています。さまざまな経済理論が唱える最新の経済政策が実験され、資本主義社会の未来が模索されているからです。
3、アベノミックス
選挙の争点は資本主義VS共産主義ではありません。
資本主義はどんどん変貌を遂げています。工業が中心だった産業社会は情報社会になりました。情報社会とは、世界がひとつであり、誰もが世界に向けて情報を発信できる社会です。
共産主義のソ連が崩壊したのは20年以上も前の昔。中国の経済政策はソ連とは違う、社会主義市場経済。共産主義は13億人、50以上の民族を統一するための道具として使われています。共産主義のカール・マルクス(1818~1883)は人気がありますが、その魅力は理論にとどまり、実践論ではありません。
アベノミックスで円高は解消され、貿易黒字が増え、株価は上昇しています。経済には明るい陽が差し込んでいます。思えば長く厳しい道でしてた。来年シルバーは、成人式を迎える若者に、「100円ショップとコンビニだけの失われた日本経済の20年はもう終わりだ」と宣言し、お祝いしなくてはなりません。