ザハ・ハディドにより、東京は生まれ変わる。

クリエーティブ・ビジネス塾53「ザハ・ハディド」(2014.12.24)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、新国立競技場
衝撃のデザインで登場した新国立競技場の建設をめぐって、議論がまきおこっています。新国立競技場の国際デザインコンクールが宣言されたのが2011年。オリエンテーションとして、1)2019年ラグビーワールドカップ2020年東京オリンピックパラリンピックのメイン会場として使う、2)スポーツだけなく、コンサート、災害時の緊急広域避難所として使う、3)地球環境に配慮する、以上の3点が示されました。全世界から46点の応募案があり、最終的にザハ・ハディッド案が選ばれました。ザハ・ハディッド(Zaha Hadid)は、1950年イラク・バクダッド生まれ、ロンドン在住の女性建築家、もちろんイスラム教徒です。
ザハ・ハディッド案はすばらしい。1)巨大スタジアムにも拘らず流れるような美しさがある、2)21世紀日本のランドマークとして未来を先取りし光り輝いている、3)そして競技場は生き物のように呼吸し歌っている。
しかし・・・そこから苦難の道が待っていました。
2、反対
まず、日本を代表する建築家槙文彦が「新国立競技場案を歴史的文脈で考える」(2013.8)を発表し、建設に反対を表明します。1)高さ75mにもなる巨大スタジアムは神宮外苑の景観を破壊する(現競技場のバックスタンドは23.43m)。審査は鳥瞰図のみで景観は審査されていない。2)8万人収容のスタジアムはオリンピックだけのもので、あとは無用の長物になる。3)建設費は1500億円が3000億円に倍増している(修正案では1600億円)。維持費は現行の年間5~7億円が35億円になる。
次の批判は、これも日本を代表する建築家磯崎新のものです。磯崎は「ザハ・ハディッド展」(東京オペラシティアートギャラリー2014.10~12)の修正案を見て、賛成派から反対派になりました。1)当初案にあったダイナミズムは失せた。列島の「水没を待つ亀」のような鈍重な姿になった。粗大ゴミになる。2)競技会場と開会式会場を別にし、開会式を皇居前の広場で行ったらどうか。3)競技場を小規模にしてザハ・ハディドに修正案を発注すべきである。「水没を待つ亀」とは痛烈です。磯崎は、ザハ・ハディドの親友であるといい、しかも修正案を見てからの反対意見であることが深刻です。
そもそも2020東京とは何でしょう。IOC総会(2013.9)で日本が世界に約束したのは、「史上最大の大会」です。コンパクトや安全・安心はそのあと。史上最高40億人がプライムタイムにオリンピックを視聴することができる大会です(水野正人のプレゼン)。史上最大の大会にするためにはビジュアルシンボルが必要です。「水没を待つ亀」ではだめです。「美し輝く生命体」が必要です。
3、ザハ・ハディト
ザハ・ハディトは「アンビルトの女王(Unbuilt=建設されない)」と呼ばれていました。彼女のオリジナリティとクリエーティビティの造形は、施行技術だけでなく建築思考すらも追いつけないものでした。
1)ザ・ピーク(The Peak 1982~1983)・・・ザ・ピークは香港の丘の上に九龍半島の一部として計画されたリゾートハウスです。ザハ・ハディトはこの国際コンペで優勝し世界的な建築家の仲間入りをします。この作品は、ル・コルビジェが晩年に描いたアルジェの都市計画(1930~1942)のドローイングのようです。
2)ロンドン・アクアティクス・センター(London Aquatics Center 2005~2014)・・・ロンドン・オリンピックのために建設されたプールです。水の流れのような滑らかな曲線を持つ建物は美しい音楽です。普段は翼をたたんだ鳥のようですが、オリンピックの時は翼を拡げ、左右15.000の観客席を作り出しました。
3)インダストリアル・デザイン・・・ザハ・ハディドはスワロフスキーとアクセサリー、ラコステとシューズのコラボレーションをしています。数学的な原理を使った裏と表がないイスのような、家具もデザインします。どれもこれも美しい曲線。その造形はドイツのデザイナー、ルイジ・コラーニ(1928〜)を彷彿とさせます。
ザハ・ハディドの造形は、ルイジ・コラーニのデザインを超えて躍動し、ル・コツビジェの建築を超えて未来を照らし、そしてブライアン・イーノの音楽を超えて鳴り響いています。ザハ案の新国立競技場を限りなくオリジナルデザインに近い形で実現すべきです。21世紀の新しい日本の建設のために必要です。
かつて丹下健三は、国立代々木競技場が予算の都合で設計変更になろうとしてとき、時の大蔵大臣田中角栄に直接電話をし、建設を実現させました。田中の役割を果たしてくれるのは、都知事舛添要一でしょうか、総理の安倍晋三でしょうか。