クリエーティブ・ビジネス塾27「日韓50年」(2015.7.1)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、首脳会談
1965年6月22日、日本の佐藤栄作首相と大韓民国の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領により、日韓基本条約が締結されてから50年になりました。佐藤栄作元首相は安倍晋三首相の祖父である岸信介元首相の弟です。また朴正煕元大統領は、現在の朴槿恵(パク・クネ)大統領の父親です。50年前あれほど仲良く友情を誓った仲なのに孫と子の時代になったいまは、安倍首相と朴大統領の首脳会談は一度も実現していません。異常です。現在の日韓関係を象徴しています。
国交正常化で50年前に比べて、貿易額は430倍、人的交流は年間1万人から昨年は504万人に増えています。日韓両国とも目覚ましい経済成長を成し遂げています。とくに韓国は素晴らしい。65年当時日本の30分の1しかなかった韓国のGDP(国内総生産)は現在では4分の1以上に接近し、一人当たりのGDPの購買力平価ベースでは2016年に日本を抜き去るまでになっています(日経6/17)。
世界の最貧国ひとつであった韓国は、日本に追いつき追い抜きます。日本は逆に「失われた20年」で停滞しています。日韓の不協和音のベースには、韓国の強くなった経済力があります。
2、3つの問題
1)日韓の大問題の第1は、領土問題の竹島です。50年前の日韓基本条約では、竹島の領有を主張した「李承晩ライン」が撤廃され、領土問題は棚上げにされました。ところが2012年李明博(イ・ミョンバク)大統領が突如、竹島(韓国名・独島)に上陸し、日韓関係は冷え込んでしまいます。互いに領有を主張する竹島問題は解決の糸口すらありません。
2)第2の問題は、「従軍慰安婦」問題です。問題の発端は朝日新聞の「従軍慰安婦」報道の誤報です。そもそも「従軍慰安婦」という言葉すら存在しませんでした。しかし1993年日本政府は「・・・慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」・・・という、河野談話(内閣官房長官)を発表します。ソウルの日本大使館の前にはいまも「従軍慰安婦」を象徴する少女像が立っています。中国は合理的な判断をしますが、韓国は感情で反発します(日経6/17)。
3)第3の問題は「強制徴用工」です。日本政府は戦時下に朝鮮人労働者を「強制的に」動員し徴用した。しかもその賃金が未払いであるから個人補償を求めて賠償請求を起こす、という問題です。まず問題の定義がむずかしい。同時の日本は国家総動員法があり、国民徴用令が施行されていました。「強制」や「連行」はない。しかも賃金の問題になると解決済み。日韓基本条約とその付随する条約には、日韓両国の請求権問題が「完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」と宣言されています。
3、JとK
日本の首相と韓国の大統領が一度も会っていない。3つの大きな問題がある。争いはあります。しかし日韓の関係は切っても切れないものです。徴用工から訴訟を起こされている三菱重工の発電機は韓国の基本インフラを支えています。世界No.1のサムソンのスマートフォンは日本の電子部品がないと作れません。さらに日本を代表するカジュアル衣料品の「ユニクロ」の韓国での店舗数は150店を超え、韓国最大の衣料ブランドに育っています。
ひとつ注意があります。日本人は知らず知らずのうちに韓国の人を傷つけています。「朝鮮」ではありません「韓国」です。「朝鮮半島」ではなく「韓半島」、そして「北朝鮮」ではなく「北韓」です。
政治の世界は遅れています。1998年金大中政権時代は、映画と音楽の日本文化を解禁します。それとともに韓国映画も日本に入ってきて大ヒットを連発します。「シュリ」、「JSA」、「猟奇的な彼女」、「シルミド」、「ブラザーフッド」。そしてペ・ヨンジュンのテレビドラマ「冬のソナタ」のヒットは社会現象になります。韓流は大きな流れになり、日本のファンを獲得します。2002年のワールドカップ日韓共同開催もあります。アサヒビールの人気。村上春樹の小説も読まれています。
日韓基本条約が結ばれた5年後の1970年にソウルに生まれたクォン・ヨンソク一橋大学准教授は、「JかK」ではなく、「JとK」の時代になると予言します。つまり欧米の若者にとって、日韓は区別できない。J-popもK-popも、日本映画も韓流映画も、パリでコラボすれがいいのです。「少女時代」と「AKB48」、ポン・ジュノ監督と北野武監督。そう「JとK」でいきませんか。