マックよ元気になれ、原点に立ち返れ。

クリエーティブ・ビジネス塾28「マクドナルドの危機」(2015.7.8)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、サラ・カサノバ
カナダ出身の「ハンバーガーギャル」、サラ・カサノバ社長(日本マクドナルド社長兼最高経営責任者)が率いる日本のマクドナルドが苦闘しています。既存店売上高は2014年まで3年連続マイナス、最近では5月まで11ヶ月連続2桁減、さらに131店舗閉鎖、希望退職者100人の募集を検討しています。
なぜ日本マクドナルドは低迷しているか。まず期限切れ鶏肉問題。上海福喜食品は青く変色したナゲット用の鶏肉を出荷していました。地元テレビ局はそのスクープ映像を放映し、マクドナルドの期限切れ鶏肉は世界に報道されてしまいます。つぎに、今年1月の異物混入問題、サラは出張中の米国から急遽帰国し、対応を迫られました。そして、世界的なマクドナルドの不振があります。現在のヘルシーメニューのサブウエイの時代です。サラ・カサノバは日本語が得意ではありません。しかし「自他ともに認めるハッピーパースン」(日経6/23)。サラの苦闘を検討します。マックの復活はあり得るのでしょうか。
2、下平康雄
サラはまず前会長の原田泳幸(66)のアドバイスに従い、日本のFC化の立役者、店舗運営のプロ下平康雄(62)を本社の全店舗統括責任者として呼び戻します。下平は地区本部制の復活を宣言します。全国を東日本、中日本、西日本の3地域に分け、地域独自の販売政策が取れるようにします。本部の指令はピント外れが多かったのです。次は「ヘルシーメニュー」への挑戦です。新作のバーガー、サラダ、ドリンクにトライし、市場調査を続けています。「マックにはもう行かない」「産地は明記してあるが海外産だし」(モスバーガー愛用者)。マックは女性に敬遠されています。
そしてサラは、全国47都道府県で母親の意見を聞く「タウンミーティング」を開いています。「顧客に教えてもらい」ファンを取り戻そうとしています(日経6/25)。「Mom's Eye(ママズ・アイ・プロジェクト)」ママの目線で、安心できるマクドナルドへ。マクドナルドのお店を「ママの目線」でチェックするキャンペーンを始めています(店内のトレーに敷かれるペーパーから)。さらに品質問題では、外部機関を利用した全店舗の重点検査を抜き打ちで行っています。チキンは中国かタイに調達先を変えています。
共通言語を持たない、カナダ人のサラと日本人の下平。日本マクドナルドのトップのいらだちは、「Mom's Eye(ママズ・アイ・プロジェクト)」のキャンペーン・タイトルに現れています。
3、レイ・クロック
なぜ日本マクドナルドはジタバタするのでしょうか。お客さまに教えてもらう、などと謙虚なことを言うのでしょうか。マクドナルドはハンバーガー・レストランです。ハンバーガーとは米国を代表する国民食ハンバーガーが支持された理由の中にすべての答があります。ハンバーガーは愛で、自由で、平和です。
第1にハンバーガーは子どもと老人にやさしい愛のメニューです。
ハンバーグは、挽肉とみじん切りにした野菜で作られています。栄養があり、消化によい。何よりも咀嚼力(かむ力)の弱い、こどもや老人にやさしい食材です。原型はタルタルステーキで、13世紀にヨーロッパに攻め込んだモンゴル帝国タタール人のよって伝えられ、ドイツのハンブルグで労働者用のメニューとして発達します。その後18~20世紀にかけて米国に移住したドイツ系移民により米国で流行しハンブルグ風ステーキ、ハンバーグステーキと呼ばれるようになり、ハンバーガーに発達します。
第2にハンバーガーは自由の象徴です。マクドナルドのハンバーガーは1940年代にマクドナルド兄弟によって始められます。それを世界的なチェーンにしたのはレイ・クロックです。シンプルメニュー(基本はハンバーガーとコーラだけ)、セルフサービス(自分で買いテーブルに運び、食後は自分で片付ける)、フィンガーフード(ナイフとフォークはいらない。手で食べる)、これがファーストフードです。クルマで買いに行き、どこででも、たとえクルマの中でも食事ができました。
第2にハンバーガーは平和です。アメリカ生まれの国民食は、世界のどの国でも、どの地域でも愛されました。ハンバーガーは国境もイデオロギーも越えました。ハンバーガーを食べている国同士は戦争をしないという神話さえ生まれました(現実は平和神話を裏切っていますが・・・)。
ハンバーガーは、愛で、自由で、平和です。ハンバーガーには力があります。サラ・カサノバはなぜこのハンバーガーの基本的な潜在力に注目しないのでしょうか