「モノのインターネット」が、夏休みの宿題です。

クリエーティブ・ビジネス塾29「IoT」(2015.7.15)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、IoT
新しい産業革命の主役は、米粒ほどの超小型のセンサーです。日立製作所が開発したセンサーは、縦2.5ミリ、横2.5ミリ、厚さ0.2ミリの超小型、あらゆる部品に取り付けることができ、従来の2万5000千倍の感度で、物体にかかる圧力や振動などの多様なデータを計測します。たとえば自動車のエンジン内部の圧力を計測し最適なガソリン噴射量を算出する。航空機エンジンの回転数を計測し保守業務に役立ててる。電動アシスト自転車では、「こぐ」ときの圧力を検出し、モーターを動かすための部品として利用する。医療機器では手術中に血液を体内に送り込むポンプの稼働状態を監視する。そのほか建設機械、エレベーター、風力発電装置で故障を予測する実証実験も始められています。
この超小型センサーが主役になってすべての製品はネットでつながれるようになります。このことを「IoT」(Internet of Things=モノのインターネット化)といいます。いままでインターネットでつながれていたのはIT(情報技術)機器だけでしたが、こらからは工場の生産設備、自動車、家電、あらゆる機器がインターネットにつながれるようになります。日立は100万個の超小型センサーの発売を予定。世界では2020年までに500億台の機器がネットでつながると予想されています(日経7/3)。新しい産業革命です。
2、第4の産業革命
IoTは、世界を変えます。まずヨーロッパではドイツが中心になって「インダストリー4.0」が進められています。インダストリー4.0とは、蒸気、電気、オートメーション(自動化)につぐ、第4次の産業革命。センセーショナルなネーミングです。IoT化で部品製造から組み立て販売まですべての現場が連結され透明化されます。その結果、意思決定が最適化され、高効率かつ柔軟な多品種少量生産が可能になります。ドイツでは2025年までに化学、自動車、機械、電気、農業、ICTの6分野で毎年1.7%の付加価値成長を実現します(「IoT可能性と課題<上>坂村健東大教授 日経7/9)。
そして米国では「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」が、AT&T、シスコシステム、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBMインテル、独ボッシュにより運営され、IoT化の普及が進めれれています。目指すところは、自社製品の閉じたシステムではなく、オープンに予防保全や運転効率化の枠組みを確立しようとするものです(前掲 坂村健)。
IoTの本質はサービスです。IoTは「モノ」のインターネットと訳されますが、正確には「Things」、つまり「コト」=サービスのインターネットです。身の回りのあらゆる「コト」が必要に応じてデータ化され、グローバルに識別可能なタグが付けられ、それがネットにより時間と場所を超えて相互につながります。これまで経済的な取引が可能でなかった「コト」が次々に、ビジネスモデルの対象として登場してくるようになります(「IoTの可能性と課題<下>」西岡靖之 法政大教授 日経7/10)。産業革命の始まりです。
3、ユビキュタス・コンピューティング
日本の情報社会のトップランナーである坂村健東大教授は、IoTについて、数年前によく話題にされた「ユビキュタス・コンピューティング」と同じ話題に過ぎないと冷静です。さらにはモノづくりの世界でのIoT化はトヨタ自動車の「カンバン・システム」と変わらないと、これまた冷笑的です(前掲 坂村健)。しかし日本の得意分野であるからといって、油断をしてはならないと警告します。
第4の産業革命の課題とは何か。
第1に、「閉じたIoT」が「オープンなIoT」になれるかどうか。インターネットのようなオープンシステムでは特定の管理主体がない。この社会的な問題を乗り越えることができるかどうか(前掲 坂村健)。
第2は、IoTにより、中小企業やベンチャー企業が、海外企業や海外の消費者と直接につながり、大手企業と対等に戦えるようになる(前掲 西岡靖之教授)。
第3は、IoTによる地方経済の活性化できる。設計者、デザイナー、生産技術者が世界とつながることができるようになる。個性溢れる地方の時代がくる(前掲 西岡靖之教授)。
米GEのジェフ・イメルトCEOは、都内のシンポジウムで生産性の向上にはIoTがカギになる、とスピーチしました(日経 7/10)。さらに日経では7月28日に「IoTで実現する物流革命」という勉強会を開催します。IoTはこの夏休みの大きな課題になります。