いまだワインを語らず。

クリエーティブ・ビジネス塾47「ワイン術」(2015.11.25)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、チリ・ワイン
チリの赤ワイン、それもカベルネ・ソーヴィニヨンが好きです。ワインはそれしか知りません。友人に、なぜチリのワインが美味しいかの話を、吹き込まれたからです。
<チリでは、ヨーロッパから苗木が持ち込まれぶどうが栽培され、ワインが作られるようになる。でもそのあとヨーロッパで大変なことが起こる。疫病でブドウの木が全滅してしまう。でもチリにそのブドウの木は残った。つまり、ヨーロッパのワインの伝統を今に伝えているのは、チリのワインだけというわけなんだ。このカベルネ・ソーヴィニヨンもそのひとつ、よく味わってご覧よ>
ぼくはヘラヘラしながら友人の話を聞いていました。しかしこの話はなぜか、記憶に残り、そしてカヴェルネ・ソーヴィニヨンは、ぼくのお気に入りになりした。
疫病とはフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)で、ブドウの葉や根にコブを生成し、枯死しさせる害虫です。19世紀後半にアメリカから品種改良のために輸入されたブドウの樹に付着していて、ヨーロッパのブドウをほぼ全滅させてしまいます。チリでワインづくりが始まったのは16~17世紀。友人の話は真実でした。
2、『男と女のワイン術』
手軽に読めるワインの本が売れています。『男と女のワイン術』(伊藤博之・柴田さなえ 日経プレミアシリーズ)です。以下はそのダイジェスト。
○まず覚えなけらばならない品種は3つ。
赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨン(渋みがある)、メルロー(渋み果実味酸味のバランスがよい)、ピノ・ノワール(渋みが少なく酸味が強い)。
白ワインはリースリング(すっきりした酸味、キリリとした辛口)、シャルドネブルゴーニュのマコン、果実味辛口で中間)、ソーヴィニヨン・ブラン(爽やかな香り、豊かな果樹味)。
○そして味わいの4つの要素。
果実味・・・口中に広がる味わい。対極は辛さ。果実味が強いニューワールド(オーストラリア、USA、チリ)、弱い北ヨーロッパ。トロピカル、フルーティー(白ワイン)
辛口・・・ドライ。辛口は北ヨーロッパ、果実味タイプはニューワールド。シャキッと、キリリと(白ワイン)。
酸味・・・鋭い酸味はリンゴ酸、まろやかな酒石酸。寒い地域ではリンゴ酸が多く、温暖な地域では少ない。白ワインに多いリンゴ酸、クエン酸、酢酸は冷やして美味しい。暖めて美味しい乳酸は赤ワインに多い。
渋味・・・タンニン。価格が高いものほど渋味。カベルネ・ソーヴィニヨンはその代表。
○なぜ高いワインはおいしいか。・・・畑の単位当たりのブドウの収穫量を抑えているから。高級ワインはテーブルワインの1/3しか製造されない。さらに高級ワインを仕込むブドウの樹齢は40年から50年。
○フルボディ・・・うま味。果実味、酸味、渋味など味わいの総量がボディ。グラマー、マッチョ、飲み応え充分。いつまでも余韻が続くようなワイン。信頼できるのは5000円以上のワイン。
3、ワイン後進国
いまから20年ほど昔の話。大手広告代理店に勤務するコピーライターが日本で売られている国産ワインに評論しました。1000円台の安いワインの話です。このワインはバルクワイン(瓶詰めでなくたる詰めで輸入ワイン)で作られていると指摘、あたり前の話です。しかし広告代理店の営業部長は許しませんでした。クライアントの商品の悪口を言っている。コピーライターは処分すべきだ。広告代理店の社長はそのコピーライターの処分を控えました。しかし彼はその後、喉頭がんにかかり、間もなく亡くなりました。
ワイン後進国の日本を象徴する話です。ワイン法って何なのか。なぜいいワインは高いのか。誰も知りませんでした。もっとあります。これは50年ほど前の話です。登山用のナイフについている、コイル状のワインオープナーの役割を当時の大人は誰も知りませんでした。
いい話もあります。フランスのレストランでの話。日本人4人で食事をしていて、ぼくの友人がリースリングの白ワインをテストして、ダメだと突き返しました。サーバーはすぐにメートルドテール(レストランの給仕長)に持って行きました。そして即座に口に含み、ワインをプッーと吐き出し、ノン!!友人は正しかったのです。
私たち日本人は、ワインを語るに若すぎます。あと100年、いや50年は熟成させたい。