クリエーティブ・ビジネス塾48「イスラム国」(2015.12.2)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、文明の衝突
11月13日金曜日にパリでテロ事件が起こりました。劇場、レストラン、サッカーの競技場を狙ったものです。死者は130名、負傷者は300名に及びました。パリはことしの1月にも週刊誌「シャリルエブド」の本社が襲撃され、12人が死亡、約20人が負傷しました。いずれもイスラム過激派の犯行です。
世界は驚いただけでなく、恐怖に震えています。明日はテロが我が身を襲うかもしれないからです。しかしどんな識者の意見を聞いても、何が原因でどうすれば解決できるのか、さっぱり分かりません。犯人はイスラム過激派、あるいはイスラム国に賛同するイスラム教徒、イスラムを名乗っているのに、どの識者も「文明の衝突」にしてはならい、イスラム教文明とキリスト教文明の対決にしてはならない、と主張します。
たとえば、ドミニク・モイジ(仏国際関係研究所特別顧問)は、テロがフランスの啓蒙主義の遺産、「自由」と「民主主義」の象徴であるパリが狙われたと指摘しながら、文明紛争に陥ってはならない、これはイスラム教徒との戦いではない、と主張します(日経11/19)。また福富満久(一橋大学教授)は、今回のテロは「文明の衝突」ではない、人類への挑戦であるとし、そして宗教戦争にすれば欧州の死を意味することになる、と警告します(日経11/24)。さらに塩野七生(作家)は、フランス大統領は戦争宣言をしたが、戦争ではなく犯罪にすべきであると主張します。文明衝突を回避するために、テロを犯罪にすれば刑事犯として裁くだけになる、だれもが納得できる結果になるというのです(『文芸春秋』2016.1)。
2、イスラム教徒<イスラム諸国の総人口は、20世紀のあいだに1億5000万人から12億へと8倍になった。これは、ひとつのまとまりをなす宗教団体として、人類最高の増加率を示していると言っていい。ヨーロッパは1900年までに4億6000万人の人口を有し、世界人口の1/4を占めるまで増加したが、それから2000年までの100年間には6億6000万人に上昇した『だけ』で、これにより、イスラムに対しては約3倍の『優勢』から1/2の『劣勢』に転じてしまった>(『自爆する若者たち』p.75~76 グナル・ハイゾーン 猪股和夫訳 新潮選書)
グナル・ハイゾーンとはドイツの社会学・経済学博士です。彼は「ユース・バルジ」理論により、歴史上の戦争の真の理由を説明しました。ユース・バルジ(戦闘能力の高い15~25歳の青年層の爆発)が、戦争を起こすことを明らかにしました。かつてのヨーロッパは15世紀の大航海時代以降、新大陸発見、ユース・バルジにより、世界の植民地化、先住民を蹴散らし、自分たちの子孫をどんどん増やしてゆく歴史を作りました。ヨーロッパのキリスト教徒がしたことをイスラム教徒がいまやろうとしているのです(前掲p.6)。
テロ事件は、文明の衝突、宗教戦争でなくて何でしょうか。すべてのイスラム教徒の米国への入国を禁止する、ドナルド・トランプ(米大統領の共和党候補)の主張は正しいのではないでしょか。
3、キリスト教徒
ヨーロッパ文明はキリスト教文明そのものです。
クラシック音楽の最高峰、バッハの『マタイ受難曲』は、「最後の晩餐」、「イエスの逮捕」、「ユダの最後」、「ゴルゴダ」、「埋葬」と続き、キリストの死を歌ったものです。ポップ&ロックの最高峰、ザ・ビートルズの『ロング&ワインディングロード』ですら、神への道を歌っています。
そして西欧絵画の最高峰といわれるミケランジェロの『最後の審判』もイエス・キリストが描かれています。バチカンのシスティーナ礼拝堂に描かれているこの壁画には、最後の審判で、天国に昇天する人、地獄に堕ちる人、400人以上の人が描かれています。
さらに社会科学の分野でも同じです。アダム・スミスの経済理論は、「神の見えざる手」により市場は均衡する、だから自由に経済活動をさせよと、説きます。『道徳情操論』では、ひとりひとり神に誓って正しい経済活動をせよと説きます。マックス・ウエーバーの『プロテスタンティズムと資本主義の精神』は、ズバリ神への勤勉さにより、経済の繁栄もあると説明しています。カール・マルクスの革命理論も同様、神が地上を支配する千年王国論を信じています。
イスラム教徒は、バッハ、ミケランジェロやアダム・スミスを認めるでしょうか。日本人はいいかげんです。
パリのテロは、キリストが磔刑にされたとされる、13日の金曜日を狙って計画されました。イスラム教徒は明らかに、文明の衝突、宗教戦争を仕掛けています。