ぼくは、君に会うために、生きてきた。君の名は、新海誠」

クリエーティブ・ビジネス塾39「君の名は。」(2016.9.5)塾長・大沢達男

「ぼくは、君に会うために、生きてきた。君の名は、新海誠

1、失恋
映画『君の名は。』を見るために、水曜日の午後、新宿に行きました。新宿ピカデリーの次回のチケットは売り切れ、そして200mほど離れた、TOHOシネマズに向かいました。売り切れ。やっぱりダメか。やむなく電車に乗って池袋に向かいました。長い列に並びました。待つこと50分。ところがぼくの前の人で売り切れ。失恋のような絶望。そして翌日、地元の新百合ケ丘で、ようやく映画に出逢うことができました。
2、再会
なぜここまで苦労して、『君の名は。』に出逢わなければならなかったのか。
好きだったのに、亡くなってしまった人。愛していたのに事情が許さず、一緒になれなかった人。付き合っていたのに、突然どこかに行ってしまった人。好きで好きでたまらないのに、手が届かぬ人。この映画のテーマは、好きな人や愛している人に会いたい、とひたすら願う映画だからです。
物語の構成は、田舎の女子高校生(JK)が都会の男子高校生(DK)に成り替わり、都会の男子高校生が田舎の女子高校生に成り替わる、という奇想天外で、笑いに溢れるものです。だっておかしい。田舎のJKが東京のDKになってイタリアンレストランでバイトをする。大失敗しますよね。東京のDKが田舎のJKになって、ベッドで目覚める。そりゃ、胸の膨らみが気になりますよね。お互いは互いに成り代われるのの、実際のJKはDKに、出逢えない。そこにこの物語の秘密があります。
「俺は夢のなかでこの女とー私は夢の中であの男の子とー入れ替わっている!?」(『小説君の名は。』p.78新海誠 角川文庫)
第2にこの映画には、田舎と都会の素晴らしい風景が登場する魅力があります。
新宿ドコモタワー、代々木、四谷、六本木。新海誠は江戸時代の浮世画家のように現代の東京を描きます。
さらには、飛騨、高山、諏訪湖、信州・・・。すべての自然は宇宙に直結するものとして描かれます。私たち人類は宇宙のどこからこの水の惑星に落ちてきたのだろうか。
「黄昏(たそがれ)。誰そ彼(たそかれ)。彼は誰(かわたれ)。人の輪郭ぼやけて、この世ならざるものに出逢う時間」(前掲p.196)
第3に新海誠の映画の魅力として、ポジティブ(肯定的・積極的)な日本をあげられます。さりげなく、日本の伝統がとりあげられ、私たちの誇りとしてクローズアップされます。先祖と一体感が持てます。
「今日の奉納はな、宮水(みやみず)の血筋が何百年も続けてきた、神さまと人間をつなぐための大切なしきたりなんやよ」(田舎のJKのお婆ちゃんのセリフ p.89)
3.コラボレーション
映画、ゲーム、音楽、CM・・・すべてのクリエーティブ作品の本質は、コラボレーション(共作、合作)です。わがままがひとりいて、作品が生まれるのではありません。わがまま同士がケンカして協力して、傑作が生まれます。とくにアニメ制作には何百人ものスタッフが必要です。
君の名は。』も同じです。言い出しっぺはプロデューサーの川村元気(1979年)。映画『電車男』を世に送り出したいま日本でいちばん元気がいい映画プロデューサーです。川村が有楽町のガード下の飲み屋に新海誠(1973年)を呼び出します。そこから映画製作の話が始まります。そして川村はさらに、音楽にRADWIMPS(ラッドウインプス)の野田洋次郎(1985年)を推薦します。運命のように出逢った3人は、古くからの友人のようにして映画製作を推進します。そして奇跡のようなテーマ音楽が生まれます。
前前前世』(歌手:RADWIMPS 作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
やっと目を覚ましたかい それなのになぜ眼を合わやしないんだい?
「遅いよ」と怒る君 これでもやれるだけ 飛ばしてきたんだよ
心が身体を追い越してきたんだよ
君の髪や瞳だけで胸が痛いよ 
同じ時を吸いこんで離したくないよ
遥か昔から知る  その声に
生まれてはじめて 何を言えばいい?
君の前前前世から僕は 君を探しはじめたよ(後略)