禅を知ろう。座禅を始めよう

クリエーティブ・ビジネス塾47「禅・T鈴木」(2016.10.30)塾長・大沢達男

「禅を知ろう。座禅を始めよう」

1、仏教
禅を学ぶとは、仏教を学ぶことです。禅宗は仏教の一派に過ぎません。禅は二人の鈴木により世界に紹介されました。鈴木大拙(D鈴木)、そして鈴木俊隆(T鈴木)です。
鈴木俊隆(1904~1971)は1959年に渡米し、カリフォルニアで当時にヒッピーたちに、禅を紹介しました。アップルのスティーブ・ジョブズもその一人です。『禅マインド ビギナーズ・マインド(Zen Mind Beginner's Mind)』(鈴木俊隆著 松永太郎訳 サンガ新書)は、 T鈴木の法話をもとに60年代に米国人の弟子が米国で編集出版したものを、日本に逆輸入したものです。でもこの方が、はるかにわかりやすい。
2、初心(Beginner's Mind)
1)禅の修行の初心のものには多くの可能性がある。しかし専門家にはほとんどない(p.30)。
なぜなら、禅の修行の目的は初心を保つことにあるからです。空(エンプティ)の心は、どんなことことも受け入れる、どんなことにも開かれているからです。仏道を学ぶとは、自己を学ぶことである。自己を学ぶとは自己を忘れることです(p.156)。
2)座禅を組む(結跏趺坐=けっかふざ))ことが、正しい心の状態である(p.37~38)。
左足を右のももの上に、右の足を左のももの上に置くことで、二本の足はひとつになる。二つではない、一つでもない。私たちの心と身体は二つでありながら一つです。私たちは互いに支えあう、と同時に、自立しています。私たちは死ぬ。そして死なない。心に身体にも終わりがある。しかし同時に、心も身体も永遠です。
3)大いなる心(ビッグ・マインド)の中で、あなたはブッダと一つになる、あなた自身が仏になる(p.81)。
大いなる心の中で、天と地、男と女、師と弟子、二元的な関係は脱落します。師は弟子に対して礼をします。弟子と師はブッダに対して礼をします。私たちは、犬や猫にも礼をします。すべてをあるがままに受け入れ、ブッダに対すると同じように、尊敬の念を払います。生きとし生けるもの、すべてに仏性があります。
4)禅の修行は、始まりのない時間で始まり、終わりのない未来へと続く(p.89)
禅の修行は、私たちの本物の姿(本性)の直接表現です。私たちの努力の方向は、達成するすることということから、達成しないことへ向かわなければなりません(p.114)。純粋というのは、何か不純なものを磨いてきれいにする、という意味ではない。純粋というのは、ありのまま、そのまま、という意味です(p.115)。
5)与えるほうが、得るよりもいい気持ちになる。与えることは、執着しないことである(p.128~130)。
私たちの人生は川を渡ることです。目標は向こう岸=彼岸に到達することです。与えることは、なにかを作り出すこと、人々に渡し船を与えること、人々に向こう岸に渡るための橋を架けてあげること、です。
6)生と死は同じものと知れば、死に対する恐怖も、人生の困難もなくなる(p.188)
「死ぬ(pass away)」というのはあまり適切な表現ではありません。「引き継ぐ(pass on)」とか、「続ける(go on)」あるいは「加わる(join)」のほうがいい表現かも知れません(p.192)。自分が川と一つであることを知らないとき、宇宙と一つであることを知らないときに、恐怖を感じます。水滴であろうと大河であろうと水は水です。生と死は同じです。水の一滴は川に戻ったときに本性に戻ります。
7)私たちの修行の目的は、ぐるぐる回っている業(カルマ)の心を切断してしまうことである(p.200)
人間性はエゴを持っていません。エゴとは妄想であり、私たちの仏性を覆い隠しています。私たちはいつもエゴの考えを作り出し、それを追いかけています。そして人生はエゴを中心にした考えで占領されています。これが業(カルマ)です。もし悟りを得ようとするなら、それも業です。何かを獲得しようと考えるのは単なるカルマの繰り返しです。妄想の中で純粋な心に目覚めることが、修行です(p.270)。
3、スティーブ・ジョブズ
亡くなる5年前、ジョブズスタンフォード大学で歴史に残るスピーチをしています。それは禅の教えです。
1)人生最後の日・・・ぼくは、若い頃から<きょうが人生最後の日だとしたら、きょうの予定をそのまま、こなすか>と、自らに問いかけることを習慣にしてきた。朝(あした)に生まれて夕べに死す。1日1生です。
2)死への直面・・・ぼくはある日、ガンと診断された。そして悟った。死に直面することが煩悩から逃れる最高の道である。ぼくたちはハダカです。心のままに生きればいいのです。
3)Stay Hungry. Stay Foolish.・・・スタンフォードのスピーチは、この言葉で結ばれます。ジョブズは、初心(Beginner's Mind)を説きました。空(くう)です。自己を学ぶとは自己を忘れること、ですから。