クリエーティブ・ビジネス塾49「トランプ当選」(2016.11.14)塾長・大沢達男
「トランプ当選を予測できなかったメディアの敗北」
1、トランプ・ショック
ドナルド・トランプ(70)は、共和党の大統領候補として名を挙げたとき、誰もが相手にしない泡沫候補でした。なぜなら、彼には議員を務めたり、選挙参謀をやったりした、政治経験が全くありませんでした。大金持ちの不動産屋の家に生まれたお坊ちゃんでした。
それどころかトランプは、美人コンテストのイベント会社「ミス・ユニバース」を買収したり、カジノホテルの建設に挑戦したりする、およそ政治の世界とは相容れないような、大胆で野心的な事業家でした。
さらにトランプの私生活は派手、結婚と離婚を繰り返し、3度目の現在の奥さんメラニア夫人(46)は、ファッション雑誌「VOGUE」の表紙を飾る世界的なモデルです。
そのトランプが、大統領選挙に勝利しました。テレビ、新聞などの主要メディア、そして政治評論家などの専門家は、だれも予想できませんでした。民主党のヒラリー・クリントンが楽勝すると予想していたのです。
革命(日経11/10)、激震(朝日11/10)、驚くべき日(産経11/10)、予測不能(読売11/10)。ドナルド・トランプは世界にトランプ・ショックを引き起こしました。
2、過激発言
1)国境の砦
「メキシコ移民は、麻薬を持ち込み、犯罪を持ち込んでいる。彼らはレイプ犯だ(婦女暴行、強姦魔)。南の国境に万里の長城を築き、建設費をメキシコ人に支払わせてやる(15年6月の出馬宣言)」。
トランプが面白いのは、砦の建築費を、メキシコに支払わせる、というところです(そんなことできっこない)。ユーモアです。笑いです。余裕です。観客はやんややんやの拍手をします。
2)日本の軍事費
「日韓は米軍駐留経費を、なぜ100%負担しないのか(16年3月米紙幹部との懇談で)」
米軍は日本に駐留しています。第2次大戦と東西冷戦時代の名残です。米軍はヨーロッパにも駐留しています。何を言おうとしているのか。米国を中心にした世界の安全保障体制はもういらないと主張しています。
そんなことできっこない。だれもがトランプの主張に驚き、最後には笑います。
3)イスラム教徒
「イスラム教徒の米国入国を完全に全面禁止することを求める(15年12月)」
イスラム教徒の米国入国を全面禁止!その通りだ!トランプ!君こそ男だ!でもどうやって、イスラム教徒の入国を拒否する?聞いた人間はだれも、驚き、そして笑います。トランプのユーモアです。
4)女性差別
「スターには女はなんでもやらせる(16年10月にわかった05年の発言)」
かつて、女性の前で男性が猥談をするのは、セクハラまがいのエチケット違反でしたが、いまは違います。レディーファーストこそが女性差別だと、女性が主張し始めたています。
トランプは、本音で、本気で、本当を、ズバズバ口にします。西部劇の酒場のヒーローです。
3、堤未果
「選挙結果は私の予想通り」と、明言した人がいました。国際ジャーナリスト・堤未果さんです。
トランプは、1)企業献金に頼っていない、2)格差の解消などの具体的な政策を持っていた、3)ビジネスで成功、「アメリカンドリーム」を体現していた、4)裏表がない人柄が好感をよんだ、5)大手メディアがヒラリーを擁護したことも逆効果になった。以上が堤さんの分析です(日経11/10)。
白人の支持者:トランプ58%>ヒラリー37%、
黒人の支持者;トランプ8%<ヒラリー88%、
男性の支持者:トランプ53%>ヒラリー41%、
女性の支持者:トランプ42%<ヒラリー54%
獲得選挙人数:トランプ290>ヒラリー228(日経11/11)
得票数:トランプ5953万票<ヒラリー5975万票(開票率92%)
メディアは結果予測で敗北しました。専門家は、マスコミでもない、インターネットでもない、声なき声「隠れとランプ支持者」の声を聞くことができませんでした。