ジャニーさんへ。

クリエーティブ・ビジネス塾29「ジャニー喜多川」(2019.7.16)塾長・大沢達男

 

1、ジャニーさんへ

「ジャニーさんへ/(前略)あなたが命尽きるまでの/最後の最後までの時間を使って/出逢ったすべての人へと宛てた/無垢な愛に胸が熱くなったよ/(中略)/愛しているよ/ありがとう/宇宙一大好きだよ」(Kinki Kids堂本剛 サンケイスポーツ7/12)

7月9日午後4時47分にジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川(喜多川拡=きたがわ・ひろむ)さんが都内の病院で亡くなりました。昭和6年生まれ、87歳でした。

堂本剛のお別れの詩を読んで、驚きました。ため口です。敬語が使われていません。ジャニー喜多川は自分に対して、敬語を使うことを禁じていました。なぜでしょうか。信じられません。

推測します。

ショウビジネスはお客さまを満足させるもの、ショウを作り上げていくためにはスタッフは対等でなくてはならない。観客にサービスし、いいショウを完成させるためには上下関係はない。敬語はいらない。

本木雅弘(元シブがき隊)の言葉がひときわ心に残りました。

「14歳の終わり、『じゃ来週からね』と笑顔で改札まで見送っていただいた。電車の中で止まらなかった胸の高鳴りが自分の原点です。心より感謝とご冥福をお祈り申し上げます」(日経7/11)。

人を笑顔にさせること、人に歓びを与えること、それがショウビジネスです。

自分だけのために生きることしか考えてこなかった少年たちは、ジャニー喜多川の言葉に驚き感動します。

2、Show Must Go On

”Show Must Go On."。ショウは続けなければならない。ジャニーズ事務所のすべてのアーティストがジャニー喜多川の教えとしてこの言葉を胸に刻んでいます。

”Show Must Go On."は、ショウが進行中にどんな障害・失敗があろうとも、お客さまを楽しませるという執念です。そして"Show Must Go On."は、楽しみに終わりはないように、表現に完成はないように、歌とダンスのために一生をかけて戦い続ける決意の表明です。

ジャニー喜多川は、1962年にジャニーズ事務所を設立し『ジャニーズ』をデビューさせます。

日本人には不可能とされていた、歌とダンスのショウ、ミュ-ジカルを実現させるためにです。

いいお手本がありました。奇跡のような映画、『ウエスト・サイド物語』(1961年)です。目標はハッキリしていました。あれから50年、「シブがき隊」、「少年隊」、「光GENJI」、「SMAP」。ジャニーズ事務所、いやジャニー喜多川の力によって、日本のダンスはうまくなりました。

しかし・・・歌はどうでしょう。ジャニーズ事務所のミリオンセラーは、『世界に一つだけの花』(SMAP 312.9万枚)、『硝子の少年』(KinKi Kids 179.2万枚、『愛されるより 愛されたい』(KinKi Kids 164.4万枚)、『夜空ノムコウ』(SMAP 162.4万枚)。SMAPを日本を代表するボーカルグループと呼べるでしょうか。

理想はともかく、日本のダンスのレベルを格段に進歩させたジャニーさんの功績は、偉大です。

3、ジャニーズ事務所

日本の芸能界におけるジャニーズ事務所は帝国です。年末の国民的イベントであるNHK紅白歌合戦の出場者を見ればいい。「Hey!Say!Jamp」、「Sexy Zone」、「King & Prince」、「関ジャニ」、「嵐」、そして司会の櫻井翔。20数組出場の白組にうち、5組と1人がジャニーズ事務所に所属しています。

ジャニー喜多川の死は、帝国の崩壊を意味します。そしてそれはジャニーズパッシングとして、始まっています。「ジャニー喜多川 審美眼と『性的虐待』」(週刊文春7/25)、「(ジャニーズ事務所がテレビ局に対して)元SMAP出演に圧力か」(日経7/18)です。

性的虐待とは、『SMAPへ』(木山将五 鹿砦社)に代表されるような、元ジャニーズ事務所に所属していたタレントからのジャニー喜多川の性行動の告発本です。覗き見趣味の話にしか過ぎません。

テレビ局への圧力とは、元SMAP草薙剛香取慎吾稲垣吾郎のテレビ番組出演へのいやがらせ、独占禁止法の「取引妨害」です。新しい事務所「CULEN(カレン)」(飯島三智代表取締役)とジャニーズ事務所との熾烈な戦いは大変です。でも・・・私たちには関係ありません。

"Show Must Go On"。うまい歌手と素敵なダンサーを聞きたい見たい。歌って踊ってはムリとしても、夢に少しでも近づけるアーティストの出現を待ち望みます。ひとりいました。引退した安室奈美恵です。できれば、野球の大谷翔平のような、アーティストが欲しいです。

ジャニー喜多川さん、ありがとうございました。お疲れさまでした。合掌。