『あまちゃん』の宮藤官九郎に期待します。

クリエーティブ・ビジネス塾51「あまちゃん」(2013.12.31)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、宮藤官九郎
NHKのテレビ小説『あまちゃん』が2013年を代表するドラマになりました。視聴率では平成のドラマでトップの42.2%を記録した『半沢直樹』に負けていますが、『あまちゃん』は27.0%で、『ごちそうさん』の27.3%に続き第3位を記録しました。
驚きを表現する東北地方の方言「じぇじぇじぇ」と、ドラマのタイトル「あまちゃん」(海女で甘えん坊)が、流行語になりました。人気を決定的にしたのはNHK紅白歌合戦です。番組中にドラマのコーナーを設けられ、劇中歌が4曲も歌われ、まるで『あまちゃん』のため紅白歌合戦でした。
あまちゃん』のヒットの原因はいろいろありますがまずは、まず脚本を欠いた宮藤官九郎の才能をあげなければなりません。
2、アイドル
ドラマは、アイドルになりたかったふたりの少女、の物語です。
1)松田聖子・・・80年代の松田聖子薬師丸ひろ子小泉今日子菊池桃子岡田有希子そしておニャン子クラブ国生さゆり河合その子、90年代のバラドルバラエティアイドル)、グラドル(グラビティアイドル)、そして現在のAKB48になる、これがアイドルの歴史です。
アイドルとは、未成熟な可愛らしさ、身近な親しみやすさ、そして日本的な美意識をもったタレントで、メディアが作る偶像です。あこがれの人は完全無欠でなければなりません。歳をとらない。スキャンダルを起こさない。喫煙しない。でき婚しない。外車で事故らない。つまりアイドルは現実の人間よりバーチャル(仮想)のほうがいい。とりわけアイドルには純潔が求めらます、
あまちゃん』では、あまちゃん=あきと友だちのユイが、ふるさとの岩手から、アイドルになりたいと東京を目指します。
2)秋元康・・・アイドルをビジネスにしたのは秋元康です。秋元は1985年に「おニャン子クラブ」を企画し、アイドルの大量生産体制を確立します。そして現在のAKB48でアイドルビジネスを普遍のものとして確立します。アイドルは純潔である。だからアイドルは恋愛禁止。でも完璧なアイドルがバーチャルでは、商売にならない。そこで「会いに行けるアイドル」AKB48を発明しました。
あまちゃん』では、秋元に似た男として荒巻を登場させ、AKB48の舞台裏を見せます。まず荒巻(秋元)は厳しい。なりたい者がアイドルになれるのではない、選ばれた者がアイドルになる。そしてアイドルは新陳代謝の世界である。売れる者だけが残る。売れない者はクビになる。さらにスキャンダルは御法度。問題を起こせば引退です。
3)小泉今日子・・・元祖アイドルが、主人公アキの母親として出演します。しかも母親は荒巻のもとでアイドル志望として仕事をした経験があったという設定。アイドルのなりたいという娘をひっぱたきます。「アイドルになって何になる」。しかし、娘が売れ始めると東京に出て行き、今度はカリスマプロデューサーの荒巻を怒鳴りつけます。そして最後には自ら芸能プロの経営を始めます。娘を殴りつけ芸能界の大物に噛みつく強い母親は衝撃的な存在で、ドラマの大きな魅力になっています。
3、東日本大震災
主人公のアキとユイがアイドルになるために戦っているさなかに、故郷が大震災と津波に襲われる。そして傷ついた故郷をふたりのアイドルが救う、というハッピーエンドでドラマは終わります。アイドル、秋元康、芸能プロ・・・みんながいちばん知りたい物語を軸にしながら、被災地救援のドラマは完成します。故郷を大切にしよう、地元に帰ろう、の大合唱で。
しかし大きな疑問が残ります。若者は、アイドルではなく、自分の恋人とデートすべきです。少子化がますます加速しています。そしてアイドルは鎖国主義です。身内だけで楽しむアイドルは、開かれたコミュニケーションの拒否です。
宮藤官九郎は、1970年生まれ、日本を背負って立つクリエーターです。もうそろそろ新しい時代が来てもいい。『SMAP』のジャニー喜多川(1931年生まれ)と『AKB48』の秋元康(1958年生まれ)を乗りこえ、アイドルの時代を突き抜けたエンターテイメントの時代の創造を期待します。