『鬼滅の刃』で敗北した、老人たちに未来はあるのか。

TED TIMES 2020-66「鬼滅の刃」 12/17 編集長大沢達男

 

鬼滅の刃』で敗北した、老人たちに未来はあるのか。

 

Kさん、先日、リベラル思想批判の手紙を書いたことを、反省しています。

イヤな気分にさせた、配慮が足りない、他人が勤務していた会社の批判など、すべきではない。

申し訳ありませんでした。お許しください。

しかし、いい加減な気持ちで書いたもの、ではありません。

藤波孝正氏の、いい句ができれば死んでもいい、には及びませんが、私もそれなり命をかけて書いています。

会社には、東大仏文卒(評論家の立花隆氏のクラスメート)の、先輩がいました。

「オオサワ!お前は得意(クライアント)に魂を売れるのか?」。

酒の席で、いつも議論を吹っかけられていました。大時代的ですが、先輩の意見は正しかった。

涙を流し自己陶酔し、前夜まとめた企画がオーケーにならなかったら、たったの5秒で破り捨てられます。

そしてまた、自らの内面から新たな売り物を、探さなくてはならない。

広告の仕事は自分を極端に消耗する仕事でした。

たかが広告屋が、偉そうになにを言ってる、お笑いください。

Kさんに手紙で書いたことに、不誠実はありませんが、書き方はいかにも素人でした。

お書きになった、『一体改革とアベノミクス』を改めて読み直し、手慣れたプロの文章のすごさを再認識しました。

配慮なさを反省しています。お許しください。

 

ところでKさん、『スパイの妻』で饒舌だった私たちも、『鬼滅の刃』は敗北しました。

日本映画史上の最大のヒットに対してなんの評論もできなかった。

だいいち漢字が読めない。まず作者は、吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)。

そして主人公は竈門炭次郎(かまどたんじろう)、妹は竈門禰豆子(かまどねずこ)、「柱」の煉獄杏寿郎(れんごくあんじゅろう)。

つぎに用語のむずかしさ。鬼殺隊(きさつたい)・・・鬼を撲滅するための組織。鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)・・・鬼の鬼、黒幕、竈門炭次郎の宿敵。普段は長い髪の美少年。柱(はしら)・・・鬼殺隊剣士の最高位。呼吸法・・・鬼を倒すために鬼殺隊が身につける操身術。「全集中の呼吸」とは大量の酸素を血中に取り込み身体能力を瞬間的上昇させること。鬼(おに)・・・鬼無辻無惨(おにむつじむざん)が始祖。人を食べる。再生力がある。日光に弱い。共食いする。藤の花に弱い。

しかし映画で描かれたのは、膨大な世界のほんの一部。理解できる方が不思議、理解できなくても、しょうがない、言い訳は立ちます。

 

Kさん、しかし私たちは遅れています。オールド・メディアの人間です。

「我妻善逸」(あがつまぜんいつ 竈門炭次郎と同期の金髪の剣士)、「竈門炭次郎」、「柱」は2019年のネット流行語のトップテンに入っています。鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)はなんと2020年のネット流行語の年間大賞になっています。

また2020アニメ流行語大賞で金賞「〇〇の呼吸」、銀賞「全集中」、銅賞「煉獄さん200億の男」が選ばれています。

なんと菅首相衆院予算委員会で「『全集中の呼吸』で答弁させていただきます」を、使っているというではありませんか。

なにより私たちが注意しなればならないのが、『鬼滅の刃』がネット発であったことです。

普通に『少年ジャンプ』連載、単行本刊行が、単行本の品薄でインターネットに拡散したのです。

鬼殺隊は「宝塚歌劇団」に似ている、炭次郎と禰豆子の兄妹の関係は「寅さん」だ、そして炭次郎は倒した鬼に対して無上の優しさを示す、以上がヒットの要因として説明されています。

原作の吾峠呼世晴は、31歳の女性!!!私が唯一感動したのは、原作にはないヘビメタ風の音楽でした。

老人たちに未来はあるのか。映画へのお誘い、ありがとうございました。