クリエーティブ・ビジネス塾43「スティーブ・ジョブズ」(2013.11.14)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、偉人か
スティーブ・ジョブズ(1955~2010)を知っていますか。アップルのパソコンiMacとフマートフォンiPhoneを開発し、人類の生活を変えた偉大な発明家です。しかしジョブズは偉人ではありません。日本のネクタイを締めスーツを着たビジネスパースンは、ジョブズに学べと力説しますが、ジョブズを根本的に誤解しています。そのことを映画『スティーブ・ジョブズ』から学びます。
まず映画ではジョブズがLSDを使用し幻覚に酔うシーンが出てきます。LSD(lysergic acid diethylamide )は、幻覚剤で日本では麻薬取締法で規制されています。LSDは強い、ジョブズはその前に、マリファナ(大麻)、コカインなどの幻覚剤も常用していたはずです。
つぎにジョブズは、恋人から妊娠を知らされると父親は自分はじゃないと逃げ回るシーンがあります。医学的にジョブズの子であると証明されても、ジョブズは否定します。
さらにジュブズはジーンズでどこにでも行きます。オフィスをハダシ(裸足)で歩き回ることもあります。そして部下を怒鳴りつけ、その場で解雇するシーンも出てきます。
薬中毒、やり逃げ男、マナー破り。これは偉人の行動でもなく、学ぶべきビジネスパースンでもありません。にも拘らず、なぜジョブズは賞賛されるのでしょうか。
2、ヒッピー
ジョブズは、既成社会への反逆児です。近代から現代へ続く産業社会に反抗しました。
第1にジョブズは西洋文明に反逆しました。肉食は疑問だと、菜食主義を貫きます。豊かさとは物質ではなく心にある。質素な生活をする仏教徒になりました。
第2にジョブズは産業社会に反逆しました。大量生産と大量消費で生活は豊かになった。しかし森林は切り倒され、空と海は汚染された。産業社会は地球環境を破壊したではないか。
第3にジョブズは理性に反逆しました。理性万能によって豊かでみずみずしい感性は眠らされた。無意識や意識下を解放すべきだ。
なぜLSD(麻薬)をやるのか。理性に眠らされた感性を解放するためにです。なぜやり逃げをするのか。共同体ではフリーセックスが当然だからです。なぜマナーが悪いのか。産業社会のマナーが人間性喪失の原因だからです。"Turn on, Tune in, Drop out.(麻薬でラリって、意識を解放し、社会から脱落する)これがジョブズが在学したリード大学のグル(教祖)の教えでした。
ジョブズは日本で理解されていません。ビル・ゲイツが開発したウインドウズPCのユーザーが圧倒的に多いことがそのことを証明しています。パーソナルコンピューターの歴史に輝く2人の巨人、スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツは全く違う人です。ビル・ゲイツは、仕事のためにコンピューターを開発したビシネスパースン。スティーブ・ジョブズは、自由のためにコンピューターを開発しユートピア建設を目指しました(注意:日本で麻薬は違法。麻薬を推奨しているのではない)。
3、友だち
タチの悪い独裁者ジョブズでしたが、映画は「友情」も描いています。
まずスティーブ・ウォズニアック。彼は技術の天才。基板にダイオードを差し込みはんだごてを使ってコンピューターを作りました。彼がいなければアップルの製品は何も生まれませんでした。つぎがジョナサン・アイブ。デザイナーで、iMacやiPhoneの生みの親です。彼がいなければスマーフォンは生まれませんでした。そしてリー・クロウ(映画で名前は出てこない)。広告のクリエーターです。1984年のマッキントッシュ発売のCM、そして1997年のジョブズ復活を告げる"Think Different"のCMを作りました。彼がいなければ、ジョブズは、歴史を動かすカリスマにはなれませんでした。
「クレージーな奴がいる。順応できない、反逆者。(中略)奴らは規則を嫌い。いまの体制をリスペクトしない。(中略)みんなは奴らをクレージーだというが、私たちは天才を見る。世界を変えると思うほどクレージーな奴だけが、世界を変えることができる。Think Different. Apple.」(映像には、アインシュタイン、ガンジー、ジョン・レノン、ボブ・ディラン、ピカソ、エジソン、チャップリン・・・が白黒のポートレイトで登場してくる)。スティーブ・ジョブズもまた、クレージーな人でした。