「おしゃれに食べる」って結構むずかしいね。

クリエーティブ・ビジネス塾38「おしゃれに食べる」(2015.9.23)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ベジタリアンスティーブ・ジョブズ(1955~2011)
生きることは食べることです。美しく生きるとは美しく食べることです。おしゃれに食べていますか。
スマートフォンiPhoneを発明した、アップルのスティーブ・ジョブズは、ベジタリアン菜食主義者)でした。19歳のときにインドを放浪したスティーブは仏教徒で、精進料理の影響を受けた過激なベジタリアンでした。ニンジンサラダやリンゴだけを数週間も食べ続け、突然断食をするというようなことを実践しました。
ティーブは、サンフランシスコ・バークレイのオーガニック・レストラン「シェ・パニーズ」を愛用していました。オーガニック(organic=有機栽培の)とは、化学農薬を使わない、土づくりをする、地球温暖化に配慮する、自然の生きものを大切にするベジタリアンの料理と食の方法です。
オーガニックなベジタリアンはライフスタイル(生き方)のシンボルになっています。「シェ・パニーズ」には、<私たちは、新しいアメリカ人なの>、<それも地球環境を考えるね>、その雰囲気プンプンの昔のフラワーチルドレン、ヒッピー、いまの小金持が集まっています。
2、マクロビオティック=マドンナ(1958~)
精進料理、ベジタリアン、オーガニックに似ている食の方法に「マクロビオティック」があります。「マクロビオティック(Macrobiotic)」は、食生活法・食事療法・長寿法を意味する日本発の日本語です。
石塚左玄桜沢如一そして久司道夫(くすみちお)らによって理論づけられ、普及してきました。「一物全体(いちぶつぜんたい)」、「身土不二(しんごふに)」、「陰陽調和(いんようちょうわ)」が3大理念です。「一物全体」とは、植物でも動物でもその全体を食べることです。精製した白米は粕(かす)、玄米を食べることです。「身土不二」とは、住んでいる土地で収穫された作物を食べることです。そして「陰陽調和」とは、陰と陽の食べ物をバランスよく食べること。たとえば肉は陽でジャガイモは陰です。
具体的には、炊飯した玄米を主食として適切な量食べ、あとは野菜や豆類、海藻類、季節に合った果実を適宜副食として食べること。これが日本の伝統的な食文化であり、マクロビオティックの理想的な食事内容です(『マクロビオティックが幸せをつくる』p.30 久司道夫 成甲書房)。
マクロビオティックを世界的にしたのは久司道夫の功績です。まず1950年代後半から60年代始めにかけて、ボストンでマクロビオティックの講義を始め、西海岸から来たヒッピーたちのカリスマになります。それが自然食運動となり全米に広がります。そして1990年代にはリッツカールトンなどのホテル、大学のカフェテリアにマクロビオティックが普及し、米国立歴史博物館(スミソニアン)にマクロビオティックの実績・資料が永久展示されるようになります。現代アメリカの最高のシンガー、マドンナがマクロビオテックの信奉者です。さらにニコール・キッドマントム・クルーズジョン・デンバーなどの実践者がいます。
3、ヴィーガンパリス・ヒルトン(1981~)
ヴィーガンvegan)とかヴィーガニズム(veganism)は、ベジタリアンの上を行く、極端な菜食主義です。肉、魚のほか、卵、チーズ、ミルクもとりません。世界のセレブリティがベジタリアンからヴィーガンに転向しています。代表は、富豪のお嬢さまで歌手、女優、モデルのパリス・ヒルトンです。ほかに歌手のビヨンセ、女優のアン・ハサウェイもいます。
ヴィーガンは20世紀の中頃に英国で提唱された言葉です。始めは「酪農製品を食べないベジタリアン」、やがてそれは「人間は動物を摂取することなく生きるべきだ」の主張に変わって行きます。
さらに最近の食の流行には、まずロカボア(locavore=地元産食材愛好家)があります。地元で作ったものを食べよう、持続可能(sustainable)で環境に意識した(eco-consciousness)な運動です。地元(local)といってもその範囲は100マイル(160キロ)、東京でなら三浦半島の大根も静岡の魚もその範囲に入ります。レストランでは、"farm-to-table"(地産地消)を、キャッチコピーにしています。
そして、スローフード(slow food)という言葉もあります。これは1980年代のイタリアで、文字通りマクドナルドのファーストフードに反対して、生まれました。伝統の食事、有機農業、健康がその理念です。
「オーガニック」、「ベジタリアン」、「マクロビオテック」、「ヴィーガン」、「ロカボア」、「ファームトゥーテーブル」、「スローフード」・・・おしゃれに食べるとは、地球環境を考えることです。ただしご注意!その食生活が健康によいかは、決して医学的にあるいは科学的に裏付けられたものではありません。