なぜ、『グレート・ギャツビー』なのか。なぜ、村上春樹がそれを言う

クリエーティブ・ビジネス塾14「グレートギャツビー」(2017.4.3)塾長・大沢達男

「なぜ、『グレート・ギャツビー』なのか。なぜ、村上春樹がそれを言うのか」

1、フィッツジェラルド
なぜ、スコット・フィッツジェラルド(Scott Fitzgerald 1896~1940)なのか。なぜ、『グレート・ギャツビー』(Great Gatsby 1926)なのか。村上春樹は、自らが影響を受けた小説として、「グレート・ギャツビー」、「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー)、「ロンググッドバイ」(レイモンド・チャンドラー)の3つをあげ、なかでも「グレート・ギャツビー」がナンバーワンだというのです。
グレート・ギャツビー」は1920年代、ニューヨークで証券関係の仕事する男の家の隣に住む、ギャツビーという名の大金持ちの話です。家があるのは豪邸が多いロングアイランド。ギャツビーはそこで、週末ごとに派手なパーティーを開きます。来客のほとんどはギャツビーが何者かを知らない。人々は自慢のクルマに乗り、派手なコスチュームに身を包み、お酒を飲み、噂話をするために集まってきます。しかしギャツビーがパーティーを仕組んでいるのは、対岸に住むかつての恋人に、会うためにであることがわかってきます。
2、名文
1)イントロ。In my younger and more vulnerable years my father gave me some advice that I've been turning in my mind ever since.‘Whenever you feel like criticizing anyone,' he told me,'just remember that all the people in this world haven't had the advantages that you've had.("The Great Gatsby" Scott Fitzgerald Penguin Books p.7 僕がまだ若くウブだったころ、父はあるアドバイスをしてくれ、ぼくはいつも心で繰り返していた。「だれかを批判したくなったら・・・」、父は言った、「忘れるなよ。世の中のみんなが、おまえのように恵まれて育ってきたわけではないことを」。以下、翻訳はすべて大沢)
2)4章。The officer looked at Daisy while she was speaking, in a way that every young girl wants to be look at sometime, and because it seemed romantic to me I have remembered the incident ever since. His name Jay Gatsby,・・・.(p.73 将校はデイジーが話しているときに彼女を見つめていた。それは若い女の子がいつかは見つめられたい思うようなものだった。そしてそれは今まで見たなかでいちばんロマンティックなものだった。将校の名前ジェイ・ギャツビー・・・)
3)7章。I suppose the latest thing is to sit back and Mr.Nobody from Nowhere make love to your wife. Well, if that's the idea you can count me out・・・Nowadays people begin by sneering at family life family institutions, and next throw everything overboard and inter-marriage between black and white.(p.124 最近の出来事は、俺の彼女がどこかのだれかにレイプされているのを、黙って見ているようなものだ。俺を黙らせることができると思うか。今どきの若いもんは家庭生活や家族制度をあざ笑っているようだが、つぎには何でも投げ捨て、シロとクロが結婚するようになるさ)
4)エンディング。Gatsby believed in the green light, the orgastic future that year by year recedes before us.It eluded us then, but that's no matter - tomorrow we will run faster, stretch out our arms further ・・・ And one fine morning - So we beat on, boats against the current, borne back ceaselessly into the past.(p.171~172 ギャツビーは緑のシグナル、愛を、信じていた。心ときめく未来は年ごとに自分たちに関係なくなってくるけれど。あのとき、緑のシグナル、愛は僕たちをすり抜けていった。でも大丈夫さ。あした、僕たちはもっと速く走り、もっと遠くに手を伸ばす。そしてある晴れた朝には・・・。僕たちは進む、流れに逆らって進むんだ。過去に飲み込まれそうになりながらも)
3、ロックンロール
グレート・ギャツビー』は、「文学史に残る傑作」でハイスクールでの必須の副読本で、いまでも毎年数万部も売れている(『グレート・ギャツビー村上春樹p.349 中央公論新社)。小説のオープニングとエンディングは、「息を呑むほど素晴らしい」、「定評のある名文」。フィッツジェラルドの文章には、「音楽を思わせるような優美なリズム」( p.339 )があると村上春樹は説明します。
チンプンカンプン・・・わからない。名文がわからないのはしょうがない。でもなぜ文学史に残る傑作のかはわからない。そして日本人の村上春樹がそれを言うのが、もっとわからない。僕たちがアメリカを知っているは、エルビス、ジェームス・ディーン、ジミ・ヘンドリックススティーブ・ジョブズがいたからです。
1920年代の小説『グレート・ギャツビー』に入れ込む、団塊の世代村上春樹とは何者なのでしょうか。