「強権支配は、見た目より、弱まる。ー3人の似非(エセ)民主主義者との決別が、2022年に始まるー」

TED TIMES 2022-02「フィナンシャル・タイムズ」 1/8 編集長 大沢達男

 

「強権支配は、見た目より、弱まる。ー3人の似非(エセ)民主主義者との決別が、2022年に始まるー」

(Financial Times  TUESDAY 4 JANUARY 2022)

 

先日のバイデン政権による民主主義サミットは楽観的だったが、111か国のオフライン会議は、悲観的だった。政治的な自由を監視しているフリーダムハウスは、15年ごとの世界規模での「自由の衰退」を記録している。

世界で民主主義の後退は、止められない傾向にある。しかし事態は、2022年に、改善される。世界が注目する強権的なリーダーは、確かな民主主義の力により、力を失うだろう。

政治的な生命が不安定な3人の指導者は、ハンガリーのオルバーン、ブラジルのボルソナロ、フィリピンのドテルテである。みんな世界的な有名人だ。ボルソナロはラテンアメリカの最大の国家を率いている。フィリピンには1億以上の人が住んでいる。そしてハンガリーでのオーバンの似非(エセ)民主主義的な主張は、オルバーンをトランプ右派のヒーローにし、彼の法の支配への背信は、欧州委員会との対決になっている。

3人のうちドテルテとの決別はもっとも確かといえる。2期目の大統領のために憲法改正と狙ったが、支持を集めることができなかった。5月の選挙の後に退任する。大統領退任はフィリピンを混迷させる。国際司法裁判所は、何千もの人の命を奪った、ドテルテの戦争と麻薬を捜査している。ドテルテはまたジャーナリストと政敵を迫害している。

ドテルテの後継者のひとりが、以前の独裁者の息子の「ボンボン」マルコスであるということが、がっかりさせる。さらにマルコスの対立候補が、ドテルテの娘が、サラ・ドテルテである・・・つまり現在の大統領は、影響を持ち続けるかもしれない。しかし大統領宮殿から離れれば、フィリピンはドテルテの最悪の日々から抜け出すことができるチャンスが来る。

メルケル首相が退任した今では、オルバーンはEU最古参の指導者になった。しかし最近の投票行動から見て、次の4月の選挙で野党連合に敗れるだろう。ハンガリーでのメディアと州法へに強権政治は、オルバーンの統治の基盤をダメにするだろう。オルバーンは選挙での敗北を受け入れるだろうか。あるいはトランプスタイルの不正疑惑と外国からの干渉を使って選挙結果への反発をするだろうか。しかしそれ以上の可能性として、オルバーンの10年以上の強権は幕を下ろす。

ボルソナロ、熱帯のトランプもまた、10月の大統領選で敗北するだろう。心配なことにボルソナロは、選挙敗北は不正だとして、紛争の舞台を用意している。ひょっとしたらボルソナロは軍隊を使う恐れもある。古からのライバル、ダッシルバ候補への負けを受け入れずに。しかしブラジルには35年以上の民主主義の歴史がある。憲法はボルソナロの暴挙に耐えることができるだろう。

4人目の強権政治家は、ますます不安定になっているエルドランである。トルコ大統領は2023年まで選挙の洗礼を受けない。しかしインフレの横行と経済の失政がエルドランを以前より弱く見せている。

これからの一年半で、世界の4人の強権政治家は、力を失うだろう。この可能性は、世界的な民主主義後退の敗北的な宿命論に対する、光になっている。

(以上は、「フィナンシャル・タイムズ」 1/4の翻訳です)