クリエーティブ・ビジネス塾5「トランプ大統領」(2018.1.29)塾長・大沢達男
あなたはトランプ大統領が嫌いですか。
1、脱ポリコレ
米国のトランプ大統領は、「ポリティカルコレクトネス」の行きすぎを是正するために、生まれました。「ポリティカルコレクトネス=ポリコレ」とは、「政治的に正しい言葉遣い」です。
たとえば「メリー・クリスマス」はいけない、「ハッピー・ホリデー」。なぜなら「メリー・クリスマス」はキリスト教徒のための言葉だから、異教徒を差別しています。同じように「ビジネスマン」→「ビジネスパースン」、「カメラマン」→「フォトグラファー」、「スチュアーデス」→「フライトアテンダント」、いずれも女性を差別しています。「土人」→「先住民」、「伝染病」→「感染症」、「痴呆症」→「認知症」。いずれも差別用語です。
メキシコ国境にフェンスを作り、メキシコにその費用を支払わせる。あるいはイスラム教徒の入国を許さない。これらのトランプ大統領の主張はポリコレの行きすぎに抗議したものです。
最近のアメリカ映画には主役系に必ず黒人(「ブラック」→「アフロアメリカン」)が登場します。「白人ではない」、「マイノリティだ」、「社会的弱者」だと社会保障を求める人が増えています。リベラルはそれを利用し「被害者ビジネス」を展開します。ポリコレは歪んでいる、そこで脱ポリコレが新しい主張になりました(『いい加減に目を覚まさんかい日本人!』百田尚樹 ケント・ギルバート p.48~49 詳伝社)。
トランプ批判のほとんどは「脱ポリコレ」に対してです。「白人貧困層の歓心を買おうと繰り返す人種差別的発言は、歴代政権が腐心してきた多民族融和・国民統合の努力を台なしにした」(日経社説1/20)。
トランプ大統領の就任1年目の支持率は38%。ブッシュ(子)83%、ケネディ79%、クリントン54%、オバマ50%。ダントツの史上最低です。しかしトランプ大統領は強い。共和党支持者82%、信仰心の強い毎週教会に行く人は55%が支持しています(久保文明東大教授 日経1/16、日経1/20)。
2、経済のトランプ大統領
もうひとつのトランプ批判は、環太平洋経済連携協定(TPP)と地球温暖化に関するパリ協定からの米国の離脱です。「アメリカファースト」が、中国やロシアの膨張志向を正当化する根拠を与えたいうのです。米国の支配力の源泉は人権の尊重、民主主義、市場経済といった普遍的な価値であった。それをトランプは手放してしまった(日経社説1/20)。
でもこれも党派的な主張です。トランプの共和党と対立する民主党では解決すべき問題の順位が違います。民主党では最大の脅威は気候変動、対して共和党ではイスラム国と北朝鮮の核開発です。共和党支持者にとって、気候変動は最も関心の少ない問題です(日経1/17)。
多民族融和、国民統合、人権尊重、民主主義に逆らう脱ポリコレで、トランプ支持は低迷していますが、米国の景気は好況です。まず米雇用は1年で210万人も増えました。経済成長率は3.2%(2017年7~9月期の年率換算)で公約の3%成長を実現しています。さらに米株は最高値更新を続けています。
3、日本の脱ポリコレ
トランプ大統領の発言は、21%がほぼ虚偽、34%が虚偽、15%が真っ赤なウソとされています(日経1/16)。なんと70%の米国人が、トランプ大統領を嘘つき、正直ではないと感じています。
「ワシントン大統領と桜の木」の話で知られるように、米国では正直であることが、至上の価値です。なのになぜ、嘘つき大統領が支持されるか。トランプ大統領は嘘をついていない、からです。トランプ大統領は、本気で、本音で、本当を、語っているからです。
仕事柄たくさんの外国人に会います。米、英、仏、独、中国、オーストラリア、アジア、南米。みんなそれぞれ個性があり、魅力的です。でも目立つのは断然、米国人です。米国人はまずハッピー。周りを明るくします。ジョークの連発、笑いがあります。楽しく生きようぜ、その心があふれています。トランプ大統領はその代表です。率直で、正直、そしてユーモアにあふれています。
日本人にとってトランプ大統領とは何でしょうか。偉そうにトランプ批判をする人は馬鹿げています。トランプは米国人が選挙で選んだ、米国の大統領です。トランプ批判とはそれを支持する米国人を批判することです。問題は私たち日本人がトランプ大統領の米国とどう付き合うかです。
安倍首相は1年間で17回トランプ大統領と電話で話し合いました。オバマ前大統領とは4年間で17回だけ。安倍首相はトランプ大統領とうまくやっています。日本での脱ポリコレとは、「平和と民主主義」から脱出することです。安倍首相の憲法改正に期待します。