「ならずもの国家」とはどこの国のことでしょうか。米国のことではありませんか。

THE TED TIMES 2022-19「トップ・ガン」 6/1 編集長 大沢達男

 

「ならずもの国家」とはどこの国のことでしょうか。米国のことではありませんか。

 

1、『トップガン マーヴェリック』

映画『トップガン マーヴェリック』(2022 米国 ジョセフ・コシンスキー監督)は、二重の意味で楽しめます。

まずアクション映画として一級の出来です。映画の後のビールがなんと美味しいこと。

つぎに現在行われているウクライナ戦争に大きな示唆を与えられます。

食事をしたその後は、エスプレッソを飲みながら、じっくり話し合わなければならない映画です。

面白いだけでなく、じっくり考えざるを得ない、二度美味しい映画です。

映画のプロットはシンプルです。

ある「ならずもの国家」が核兵器開発プラントの稼働させています。それはNATO北大西洋条約機構)の国々を核弾頭で攻撃できる可能性を持ったものです。

その核施設を破壊するのが、トップガンのミッションです。

 

2、ドッグ・ファイト(dog fight=戦闘機同士の戦い)

かつての名パイロットであるマーヴェリック(トム・クルーズ)が、米海軍のエリートバイロットチーム・トップガンの教官として戻ってきます。

核施設破壊を破壊するミッションのための、バイロットを教育するためにです。

ターゲットの核施設は、谷合の自然の要塞に囲まれている。

だから、攻撃には急降下と急上昇が必要で、極限を超えたGがかかります。

つぎに周辺には迎撃用のミサイルが侵入者を待ち構えている。

さらに、「ならず者国家」の戦闘機が迎撃に飛び立ってくる。

だから攻撃の時間はたったの2分30秒しか許されない。

映画は実写です。CGではありません。

Gに耐える、時間通りに攻撃し、帰還できるかの訓練が行われます。

戦闘機のコックピットにIMAXカメラを搭載し、プロのパイロットが乗って撮影されました。

IMAXカメラは35ミリフィルムの4倍の大きさの70ミリのフィルムの使います。

映像は巨大なスクリーンに拡大しても高密度・高精度なものになります。

***

私はかつてジェットコースターのヴァーチャル・ライド「スター・シェイカー」の日本語版の演出家として、カリフォルニアの「スカイウォーカー・ランチ」で、映像の編集とMA作業(映像に音声をつける)をしたことがあります。

なぜかデジタルではありませんでした。70ミリフィルムをムヴィオラ(ポジフィルムでの編集)を使って編集しました。

スタンリー・キュブリック監督の映画のイギリス人スタッフがいて、アメリカ人を馬鹿にし、からかっていたのを覚えています。

アメリカでは、ランチではなく<パワー>ランチを食べるんだ。何か?知っているか?パンに<スキッピー>のピーナッツ・バター塗りたくるんだ。俺たちも<パワー>ランチを食べようぜ」

できたばかりの「スカイウォーカー・ランチ」にも、目を見張りました。

ランチ(牧場)です。ですから何気ない木戸を開けて、車を走らせます。すると突然ワインセラーや農家が現れます。

そこから地下に入っていくと、スタジオ、劇場、編集施設、ルーカスフィルムのオフィスが現れます。

スカイウォーカー・ランチの住所は秘密、選ばれたものしか入れません。しかも場内は撮影禁止、すべては謎です。

ディレクターとして、あのスタジオでキューを出した日本人は、私以外にいない(のではないでしょうか)、自慢です。

今回の制作会社は、スカイダンス・メディアで、スカイウォーカーランチでは、ありませんが、IMAXということで思い出しました。

***

映画の話に戻れば、ドッグファイトは迫力満点ですが、それ以外のちょっとしたカットの映像も素晴らしいです。

エンターテイメント映画を作るハリウッド実力を感じます。

 

3、ならずもの国家

映画が上映されたTOHOシネマズ六本木ヒルズには、大きなポップコーン・バケットを抱えた、アメリカ人がたくさんいました。

「ならずもの国家」とはどの国のことでしょうか。

かつて米国は、「ならずもの国家」日本と戦いました。

日本は負けました。

天皇人間宣言をさせられ、平和憲法を押し付けられ、二度と米国に反撃できないように言論統制され、民族の精神を破壊されました。

そして民族の誇りを失った日本人は、人口減になり30世紀初頭に、世界地図から姿を消します。

そのあと米国は、ベトナムで、イラクで、アフガニスタンで、「ならずもの国家」と戦いました。

湾岸戦争に勝利した米軍はサウジアラビアで、イスラム教との聖地「メッカ」と「メディナ」に侵攻しました。

キリスト教徒によるイスラム教の聖地への侵攻です。

そして「9.11事件」が起こります。

そしていまは、米国は(間接的にですが)ウクライナでロシアで戦っています。

かつては<米国は自由のために戦っている>で通用しましたが、いまそれは「リベラリズム帝国主義」、「リベラル覇権主義」となって、批判を浴びています。

ジョージアウクライナの将来的なNATO入りを宣言するあたって、当時のブッシュ米大統領が「NATOの扉は常に開かれている」と述べ、主導的な役割を果たしました>(『文藝春秋』 p.143 2022.6)。

ドイツのメルケルとフランスのサルコジは慎重でした。なぜならロシアを強く刺激するからです。2008年のことです。

さらに2014年ウクライナの反政府デモ「マイダン革命」では、オバマ政権の副大統領バイデンが、反政府派を支援し、ウクライナNATO加盟の”超タカ派として動きます(p.149)。

つまりウクライナ戦争の根本原因は、NATOを東方に拡大させた米国の「リベラリズム帝国主義」です。

1991年ソ連邦崩壊のとき、NATOは1センチたりとも東方に拡大しない、と約束し東側の「ワルシャワ条約機構」を解消させました。

にもかかわらず1999年、ポーランドチェコハンガリーを。そして2004年、バルト三国エストニアラトビアリトアニア)、ブルガリアスロベニアルーマニアスロバキアを。

さらに2008年と2014年にジョージアウクライナNATOに誘いました。

NATOと米国は、熊(ロシア=プーチン)の目を、棒でついたのです(p.149)。

ウクライナ戦争は、ロシアの進攻ではなく、ロシアの反撃です。

トップガン マーヴェリック』のエンドタイトルがまだ映写されているときに、ポップコーン・バケットを抱えた米国人はまだスクリーンを見ている観客の邪魔になるのに配慮せずに、ドヤドヤと退場して行きました。

対して日本人はタイトル映写が終わるまで、全員静かにスクリーンを眺めていました。

果たして、米国人と日本人、どちらが「ならずもの」でしょうか。