THE TED TIMES 2025-14「ディープシーク」 4/3 編集長 大沢達男
ふたつのAIで世界は分断されます。
1、デイープシーク
2025年1月20日まで無名だった企業が世界を真っ二つに分断しようとしています。ディープシークです。
1月20日の発表した生成AIモデル「RI」 により、ディープシークの利用者はわずか7週間で1億人を達成しています。
利用者の1億人達成には、フェイスプックが4年6ヶ月、ユーチュープが4年1ヶ月、チャットGPTでも2ヶ月かかっています(日経2/22)。
すでに中国ではディープシーク「R1」を製品やサービスに実装する企業が増えています。
自動車ではBYDなど20社が、ネット分野ではテンセント、アリババクラウドが自社のプラットフォームでR1を使えるようにしました。
行政では深圳市の福田区政府が、70人のAI公務員がやってきたと、行政の効率化にディープシークを役立てています。
中国企業だけではありません。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、マイクロソフト、エヌビディアでもディープシークのAIモデルの活用を始めています。
2、2つの無い、2つの有る
ディープシークの正式社名は「杭州深度求索(筆者注:ディープシーク)人工知能基礎技術研究」です。
1980年代生まれの起業家・梁文鋒(リアン・ウェンフォン)が2023年に抗州市に設立しました。
面白い話があります。
ディープシークのモデル「R1」の開発には、中国AI業界の「2つの無い」と「2つの有る」があるというのです。
2つの無いとは、「資金力」と「半導体」で、2つの有るとは、「人材」と「自由」です。
2つの無いはわかりますが、2つの有るには説明が必要です。
ディープシークの開発チームは約140人。なかには「天才少女」や数学オリンピック勝者の有名人もいます。
全員が海外経験のない本土人材です。
「自由」とは意外ですが、中国政府は政治批判には厳しく監視しますが政治以外は放任です(日経1.28)。
3、AIチャイナショック
ディープシークは大きな話題となって世界に波紋を広げています。
第1は、その開発費用です。
米オープンAI「チャットGPT-4」は7800万ドルの開発費を使いました。対してディープシークのAIモデル「R1」の開発費は560万ドル。
つまり米企業の10分の1の費用しか使っていないことになります。
ディープシークは無料で公開されている、オープンソースのAIモデルを活用しました。「蒸留」とよばれる開発手法で、いいとこ取りし、ライバルを上回る性能を引き出しました。
第2は、米中対立です。
米国は2022年にAI半導体「H100」の対中輸出を規制し、さらに23年に性能を落とした「H800」も規制対象にしました。
ディープシークが使ったのは規制前の大量の「H800」、そしてディープシークはエヌビディアのライバル、AMD(アドバンスト・マイクロ・ディバイス)に目をつけ業務提携をしています。
第3は、世界の分断です。
日本政府は利用での「留意点」の公表しただけですが、オーストラリア、イタリア、韓国、台湾ではディープシークの利用に禁止、大きな規制があります。
米政府はディープシークがデータをす不正使用していると調査を開始し、さらにサイバー攻撃やテロに悪用される可能性があるとしています。
チャットGPT(利用者4億人)とディープシーク(利用者1億人)の戦いは、まだ始まったばかり、何の予測もできません。