GDPを絶対視しない、経済政策「ウエルフェア・プロジェクト」は、幸福の追究です。

THE TED TIMES 2025-27「超GDP」 7/5 編集長 大沢達男

 

GDPを絶対視しない、経済政策「ウエルフェア・プロジェクト」は、幸福の追究です。

 

1、神田眞人の「ウエルフェア・プロジェクト」

ミスター円と呼ばれるアジア開発銀行総裁・神田眞人が、「『超GDP』未来の経済指標を求めて」(『文藝春秋』2025.6)を、書きました。

面白いのでその要約を紹介します。

まず日本のGDPはかつて米国に次いで世界第2位、現在は米国、中国、ドイツに次いで第4位、さらに2025年にはインドにも抜かれ第5位になると予想されています。

日本のGDPは中国の4分の1です。

次に、かつて使われていたのは「GNP」です。

GNPとは、国民総生産=一定期間に国民が生み出した財や付加価値の総計、です。

1970年に朝日新聞は「くたばれGNP」というキャンペーンを行いました。

大気汚染に対する抗議と水俣病四日市ぜんそく新潟水俣病イタイイタイ病の4大公害病への抗議です。

長く使われてきたGNPは、グローバル化の進展により、日本人や日本企業が海外で活動するようになり、さらに外国人や外国企業が日本で活動することが激増したため、2001年からGDP(国内総生産:一定期間内に国内で生み出された財や付加価値の総額)に変わります。

現在ではGNPという概念はなくなっています。

そして現在、GDPに対する疑問が提出されています。

 

2、GDPの問題点

GDP創始者サイモン・クズネッツは、国民の幸福度と測定しようと考えていました。つまりギャンブル、売春、非合法的活動、広告、軍事費、政府全体の支出も統計から外そうと考えていました。

しかし議論の末にクズネッツは敗北します。

軍事費、政府の活動を包括したジョン・メイナード・ケインズの考え方が主流になります。

そして現在、GDPが議論の的になっています。

経済成長をしても国民は不満を持っている。社会は分断している。与党は選挙で敗北している。GDPの増加に国民は納得しない。

GDPは説得力を持たなくなっています。

1)GDPは、無料のデジタルダービスをはじめ経済の実態を十分に捉えていない。

2)GDPは、経済のサステナビリティ、富や所得の平等、安全、人々の健康、コミュニティの価値などを捉えていない。

3)GDPの限界を認識し、豊かさだけでない多様な「幸福の」価値を補足するのが、「ウエルフェア・プロジェクト」である。

 

3、幸福を追求するための経済政策「ウエルフェア・プロジェクト」

1)無給の家事労働、無料のデジタル・サービスはGDPに計上されていない。一方で有害な薬物の売買も計上されている。

2)政策当局者はGDP以外の多様な指標を活用するべきである。複数の指標を同時に観察するのが「ダッシュボードアプローチ」である。満足度の質的指標の活用、所得階層別の不平等の度合いの把握などである。

3)将来世代への配慮。土地や水質の自然・環境資産の計測、健康寿命の人的資本、社会で共有される価値の社会資本の観点を持つこと。

4)幅広いエンゲージメントの確保。ウエルフェアの優先順位、ウエルフェア把握での適切な指標を選定する。

5)継続的な改善。技術革新、経済社会の進歩で指標をアップデイトすること。

以上に議論に加えて、3点の議論があります。

1)ウエルフェアではなくルエルビーイングという用語もあります。

ウエルフェアは、社会全体の幸福度、弱者保護。ウエルビーイングは個人ひとりひとりの幸福、自己実現の権利保護です。

2)ブータン国民総幸福量(GNH)もあります。ハッピネスです。

3)ウエルフェアの和訳はありません。幸福でも厚生でも福利でも福祉でもありません。

 

4、皇室

以上は神田眞人の所論の紹介で、以下は筆者の感想。

土曜日朝5時15分から30分までTBS「皇室アルバム」、日曜日の朝5時45分から6時までフジテレビ「皇室ご一家」、そして月に1回ですが第4日曜日の6時から6時15分まで日本テレビ「皇室日記」という番組があります。

GHQに与えられた日本国憲法は、米国の独立宣言や米国憲法と同じ人権、自由、平等のリベラリズムの精神で書かれています。

違うのは、日本が米国に報復戦をしないようにした「戦争放棄」と、リベラリズムでは到底説明できない「第一章天皇」の存在です。

かつて三島由紀夫は「天皇は国体である」そして「天皇は神聖である」と憲法に書くように主張しました。

日本は米英のようにアトム的個人の幸福だけを追求する国ではありません。

初詣、祭り、七五三・・・日本には天皇に直結する神社が8万、天皇に間接的に関係する寺が7万あり、天皇は日本人の精神生活の根本を支えています。

ウエルフェアとは皇室の安泰を願うことことでもあります。

ウエルフェアの議論には、祭祀共同体である日本、日本の国体である天皇が問題になります。

皇室アルバム」、「天皇ご一家」、「皇室日記」の視聴率は現在公開されていませんが、かつては20%を超える高視聴率番組だったこともありました。

賛成とか反対とか、是か否か、良いとか悪いとか、ではありません。これが私たちが使っている日本語と日本人の生活の現実です。

日本独自のウエルフェアを指標化する必要があります。