資本主義を磨く。

THE TED TIMES 2022-07「新しい資本主義」 2/28 編集長 大沢達男

 

資本主義を磨く。

 

1、資本主義

現在の資本主義、経済社会の問題点は、以下の3つに要約されます。

1)小さな政府か。大きな政府か。

2050年にカーボンゼロを実現しようとすれば、年4兆ドル(約460兆円)の投資を30年まで続ける必要があります。

また人工知能(AI)や量子の先端分野の研究にも政府の支援が必要です。

そしてCovid-19の流行も政府の役割を拡大させています。

大きな政府」による公的資金の投入には限界があります。国と地方の21年度末の長期債務残高は、GDPの2.2倍に当たる1222兆円になっています。

さらには、経済安保の大義名分で、政府の過剰な介入が広がりかねません。

日本経済の停滞は、競争が足りなかったからです。デジタル化やグリーン化にフロンティアを求める民間の活力を引き出す必要があります。

「より良き市場」と「より良き国家」を共に追求することが、強権的な権威主義体制と一線を画すものとなります。

2)ステーク・ホルダーか。シェア・ホルダーか。

2019年8月に米経営者団体が「企業の目的に関する声明」を出し、「企業は顧客、従業員、取引先、地域社会、株主を大切にすべきだ」と主張しました。

これを短絡し、株主還元を減らし従業員などに分配せよと、の主張にしてはいけません。

いまの日本に必要なのは、企業統治改革を軌道に乗せることです。

株主への分配で日米企業を比べると、配当・自社株買いの総還元額の比率は、米大企業では80%を超え、日本企業の約半数は20~40パーセントにとどまります。

株主と株主以外のステーク・ホルダーは対立する存在ではありません。株価上昇は社会全体に恩恵をもたらし、社会を活性化します。

3)高齢者か。若者か。

社会保障制度の欠陥は、高齢者中心の再分配制度にあります。所得格差を表すジニ係数の改善度を年齢別に見ると、65歳以上が44~54%改善、20~34歳の若年層は10%、35~59歳は20%にとどまっています。

社会保障で救われているのは高齢者で、若年層や子育て世代は恩恵を受けていません。高齢者を一律に弱者とみなすのはやめる必要があります。安全網に欠陥があれば、経済の原動力は失われます。

2、失われた30年

30年前に世界最大の時価総額を誇った、日本の株式市場は見る影もありません。

失われた30年間、日本の実質賃金は4%増、米国は約5割、ドイツ、フランスは3割増です。

まず起業を増やすこと、つぎに失敗しても再挑戦できるようにすることです。

なぜ日本から「ユニコーン企業(企業価値10億ドル=1150億円以上)が生まれないのでしょうか。

それは、人材の多様性がないからです、生え抜きの日本人だけでは国際展開ができないかです。そして働く人に学ぶ意欲がないからです。

さらには労働市場流動性がないからです。だから人材の移動で優れた技術やノウハウが共有されません。企業は職場環境や処遇の魅力を競い合っていません。

一言にすれば、日本の労働市場は開国していません。日本の労働者は鎖国しています(以上は日経社説 1/3,1/4,1/6,1/7,1/10を参考にしました)。

3、日本国憲法

日本人が鎖国してしまった原因は日本国憲法にあります。日本人は、日本国憲法により、日本人であることをやめてしまいました。

第1に、日本人は、天皇と皇室について、語れません。

日本人は、いまだに皇室があることを恥ずかしい、と思っています。多くの知識人は、日本がいまだに共和制を確立していない、遅れている国だと考えています。

皇室は日本人の総本家です。苗字を持っていません。諸外国の王室、ウインザー朝、ルイ王朝と日本の皇室は比べらるものではありません。

天皇は「象徴」よりも、「神聖にして侵すべからず」に近い存在です。天皇は神の上にあります。日本人は全国8万の神社に、お参りしています。

第2に、日本人は、大和民族を、語れません。

日本人は、日本語で書き、話します。万葉集をはじめとする和歌集、源氏物語をはじめとするに日本文学があります。

新年には宮中で新春歌会始があり、天皇と国民が集まり、和歌を読みます。日本人にとって日本語は特別なものです。

文学、茶、能、芸能、技能、武道、スポーツ、相撲、日本文化の頂点には、天皇がいます。

第3に、日本人は、憲法第9条の「戦争放棄」と「戦力の不保持」について、議論することができません。

世界有数の軍備を持つ自衛隊の存在と戦力不保持の憲法の矛盾を、外国人とディベートすれば、必ず負けます。

戦争は、毎日、世界のどこかで行われています。

外交交渉としての戦争を語れない、だから停戦への提案ができません。

戦争はいけない。平和だ。日本人は戦争する世界を軽蔑するだけです。

日本人は平和という霞を食って生きている仙人です。俗界に住んでいません。

結論。

日本人は世界の人と話ができません。天皇大和民族日本国憲法を、自分が誰であるかを、語れません。日本人としての教育を受けていません。

ディベートすれば必ず負ける。だから世界に出て行けない。だから出て行きません。

日本人を鎖国から開国に向かわせるためには、日本国憲法の改正が必要です。