空の産業革命、ドローン。

クリエーティブ・ビジネス塾23「ドローン」(2015.6.3)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ドローン犯罪
4月22日に東京・永田町の首相官邸の屋上で小型のドローン(無人飛行機)が発見されました。ドローンはデジタルカメラ、微量の放射性物質の入ったプラスティック容器を積んでいました。逮捕されたのは(威力業務妨害容疑)、元航空自衛隊の山本康雄容疑者(40)で、原発再稼働反対が目的でした。
そして5月9日には長野県の善光寺で、7年に一度の御開帳の儀式の僧侶800人のパレードが行われている最中の石畳にドローンが落下する事件が起きました。犯人は15歳の横浜市在住の少年で、臨時派出所に名乗り出て、厳重な注意を受けました。少年はネット上では有名で、2月の川崎中1殺害事件では容疑者自宅前で中継し、さらには東京・浅草の三社祭でドローンを飛行させると予告し、威力業務妨害で逮捕されています。少年の口座には10数人から約58万円の入金があった、と警視庁少年課が明らかにしました。視聴者が、少年の活動と配信する動画を支援していました。
ドローンとは”drone"で、ミツバチの雄バチのことでブンブンいう音から、無線操縦の無人飛行機を意味する言葉になりました。ドローンは「空の産業革命」と呼ばれ私たちの未来生活を切り開くものです。
2、戦争をする機械
新型の家庭用掃除機「ルンバ」を知っていますね。円盤型の掃除機で、自分ひとりで動き部屋をすみずみまできれいにし、掃除が終われば自分で基地に戻り、次の掃除まで充電して待機する掃除ロボットです。
この世界的に売れている大ヒット商品は、米軍の軍事用の技術を使い開発されたものです。目的は滑走路からクラスター爆弾を片付ける仕事をするため。クラスター爆弾とは親子爆弾。大きな爆弾が爆発するとたくさんの子爆弾が生まれます。子爆弾は不発弾が多く、多数の兵士の命を奪ってきました。ルンバは兵士を守るために、不発弾を処理をしていました。
ルンバの空のバージョンがドローンです。まず米軍の「小型無人軍事偵察機イレブン」があります。全長1m、重さ2kg。兵士は紙飛行機のように投げて飛ばします。高度120mを90分間、ビルの向こうに人がいるか、山の裏側に的はいるか、赤外線カメラなどを使い周辺を偵察します。つぎは米軍の「無人航空機プレデター」です。全長8m、重さ510kg。滞空時間24時間、ゆっくりと低空を、7900mの上空も飛ぶことができます。空対地ミサイルも装備。正確な能力はもちろん機密です。操縦はイラクアフガニスタンで行われません。アリゾナカルフォルニアアメリカ軍の基地です。パイロットはクルマを運転してオフィスに向かい敵を殺害する仕事をし、夕方には家族が待つ自宅で平和な生活を送っています。
3、空の産業革命
首相官邸に降りたドローンは、中国・広東省DJIの製品でした。ドローンの世界シェアの6割を誇るトップメーカーです。つぎに、フランスのパロットは、5万円以下のホビー商品で人気があります。そして日本では、自律制御システム研究所(千葉市)ががんばっています。千葉大の野波健蔵教授(66)がリーダーです。野波教授は、地上から250mまでの空間は人類最後のフロンティアだ、と予言しています(日経5/15)。
1)整備・点検分野・・・橋梁の点検箇所を、壁や天井にそって飛行、ドローンで接写します。全国70万カ所の橋は老朽化の点検を待ち望んでいます。セコムはドローンで、駐車場の警備サービスを始めます。敷地に入った不審車をカメラで撮影、車種やナンバープレートを識別します。
2)測量分野・・・工事前の現場の起伏をドローンで撮影し、3次元データにまとめます。いままで数週間かかっていた作業が、1日で終わるようになります。綜合警備保障(ALSOK)では、ドローンによる大規模太陽光発電所の点検サービスに取り組みます。
3)輸送分野・・・過疎地への医薬品、生活物資の輸送をドローンで行います。スマホで今日のパーティーで履きたい靴を選ぶ、数十分後には、玄関の前に靴の入った箱が配達されている。アマゾン・ドット・コムがこんな未来生活を描いています(日経5/4,5/21)。
千葉大の野波教授は、○犯罪防止のためにドローンの飛行区域はソフトで制限できる、○機体、所有者、使用者を登録制にする、○いざとなったら撃ち落とせる技術開発も必要である、と未来を展望しています。
ドローンの現在の需要は、軍事目的が89%で、民間利用は11%にとどまっています(日経5/4)。これからドローンで始まる「空の産業革命」、面白そうです。