クリエーティブ・ビジネス塾22「セブンカフェ」(2015.5.27)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、コンビニ
ファミリマートとユニーが合併します。ユニーの配下にあったサークルKサンクスも行動をともにします。このことによりコンビニは、セブンーイレブン・ジャパン1万75OO店舗、ファミリマート1万7465店舗、ローソン1万2081店舗の3強時代に入ります(日経3/7,3/11)。
3強といってもコンビニ業界はセブンーイレブンの一人勝ちが続いています。まずセブンーイレブンの年間営業利益が軽く2000億円を越えているのに、他の2社は1000億円を大きく下回っています。平均日販と呼ばれるコンビニの最重要指標でセブンーイレブンが大きくリードしています。セブン66、ローソン54、ファミマ52、サークルKサンクス46。数字に1万をかけたものが、1日当たりの1店舗の売上高です。力の差は歴然(日経3/9)。なぜ、セブンーイレブンが強いのか。鈴木敏文という卓越した経営者がいるからです。
2、セブンーイレブン
セブンカフェを飲んだことがありますか。ほとんど人が「Yes!」と答えるでしょう。いつも挽きたていれたてのおいしいコーヒー。それもわずか100円。2013年からスタートしました。現在年間7億杯、700億円のビジネスになっています。セブンーイレブン90杯、ローソン60杯、サークルKサンクス40杯。1店舗あたりの売上げでも他社に差をつけています。なぜセブンーイレブンは強いのか。単なる小売業ではないからです。
たとえばおにぎり、お弁当、お惣菜は、1日3回生産、3回納品体制をとっています。いつも新鮮です。専用工場を180持っています。92%が自社製品です。他社はせいぜい30数%程度。まるで違います。
しかも年間7〜8割の商品が入れ替わります。年間に2000アイテムの新製品が開発されます。モノが余っているいまの時代のお客様の動きは激しい。売れ始め、ヒット商品になり、売れなくなる。従来はそのカーブは富士山型でしたが、いまはペンシル型。これは売れると思ってもすぐにあきられ売れなくなります。
加えてセブンーイレブンのルールはさらに厳しい。「廃棄ロスより機会ロス」。売れの残りを心配するより、売り切れに注意。お客さんを逃してはいけない。そのために一品一品を管理し、一店一店の特徴をつかむのです。いまではあたりまえになりましたが、1983年にセブンーイレブンは、日本初で世界初の、POS(販売時点情報管理)の開発に成功しています。いつもお客様をみつめています。
3、鈴木敏文
鈴木敏文は民主主義と正反対のことをやります。みんなが反対することだけをやり、成功してきました(週刊ダイアモンド「鈴木敏文の破壊と創造」20156/6 p.32~36)。
まず、1974年の東京・江東区のセブンーイレブン1号店(ちなみにケンタッキー=KFCは1970年に、マクドナルドは1970年に日本に上陸)。これからは大型店舗の時代、なのになぜ小さなコンビニ?と反対されました。しかも事業を始めたのはスーパー業界8番手の弱小イトーヨーカ堂、相手は米国コンビニ最大手4000店舗を誇る7-11。しかしやがて、鈴木敏文は、米国のマンモス企業を飲み込んでしまいます。
つぎにPB(プレイベートブランド)商品、「セブンプレミアム」を始めたときにも反対されました。セブン&アイホールディングスには、イトーヨーカ堂、そごう・西武百貨店があります。コンビニで売っているものをデパートで売れるわけがない。しかしここでも鈴木敏文は勝利します。「セブンプレミアム」は2007年にスタートし、2015年度には1兆円の売上高になろうとしています。年間売上げが10億円を越えるヒット商品が115アイテムもあります(『鈴木敏文 仕事の原則』緒方知行+田口香世 日本経済新聞社 P.194)。
そしてATMだけのセブン銀行。素人がやっても、うまくいくわけがない。専門家はことごとく反対しました。
ところがいまではセブン銀行はセブンーイレブンだけでなく、駅や空港にも、2万1000台。重要な社会インフラになっています。さらなる驚きは公共料金収納サービス、その扱い高は現在4兆円を上回っています。セブンーイレブンは、銀行や郵便局のライバルになっています。鈴木敏文の勝利です。
有名な話があります。チャーハンを試食した鈴木敏文が激怒。「これはチャーハンではない」「売れています!」「こんなものをセブンーイレブンが売ってはいけない」。そして鍋の開発から再スタート。調理温度の高い鍋から理想のチャーハンが生まれます(『セブンーイレブン 終わりなき革新』日経ビジネス文庫p.77)。
セブン&アイホールディングスは2015年2月期に売上高6兆1000億円、営業利益3450億円、いずれも過去最高を記録。82歳の鈴木敏文はまだまだ成長を続けています。