クリエーティブ・ビジネス塾37「日韓」(2019.9.9)塾長・大沢達男
1、日韓関係
「韓国からの旅行客のキャンセルが続いている」。渋谷のホテルチェーンに勤めている友人が嘆いています。大変です。これは単なる僕と友人の個人的な悩みに属する問題ではありません。
なぜなら第1に、友人が勤務するホテルは東京・渋谷を代表するホテルチェーンであるからです。
第2に、渋谷がインバウンド(訪日客)の消費総額でナンバーワンの街だからです。渋谷は訪日客の数では、東京港区、東京千代田、大阪市中央区より下回りますが、買物や飲食の消費総額ではダントツの1強だからです(日経8/4)。
なぜ韓国客が来ないのか。日韓関係の悪化が原因です。東京五輪のボイコットに賛成する韓国人が68.9%(日経8/28)というショッキングなデータもあります。
日経が「冷え込む日韓関係」と題して3回の特集を組みました(日経8/28~30)。
「こわもての外交以上の多少の知恵が必要」、木村幹神戸大教授。
「経済界にまで及んだ日韓対立の出口を見出すのは困難」、深川由紀子早大教授。
「韓日両国がいくら泥沼の戦いを続けても、誰も勝利者になれない」、「個人的な信頼関係や個人の外交的力量に問題解決を託せない」、チン・チャンス世宗研究所日本研究センター。
三者三様絶望的、じっくり読んでも良化への糸口は見つかりません。
2、文在寅大統領
日韓関係悪化の象徴として、8月22日の韓国政府によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄があります。日韓の信頼関係が崩れた、新聞はトップの見出しで報道しました。
しかしこれは日本外交の大勝利であった、衝撃的な主張が佐藤優によってなされました(『文藝春秋』2019.10)。さすが佐藤優です。
戦前米国は「ハル・ノート」を日本に突きつけ、パール・ハーバーの爆撃を誘導しました。それと同じです。
実効性のないGSOMIAを、韓国側から破棄させる。責任は韓国にある。日本外交の「大勝利」です。
さらに佐藤優は、「米国にとっても、北朝鮮にとっても、文政権はすでに用済み」だ、と論じます。
そしてポピュリズムが権力基盤の文政権には、日本に譲歩できる余地はない、使える切り札は使ってしまったからです。対して安倍政権は韓国にいくら譲歩しても政権が揺らぐことはない。
心配は切羽詰まった文政権に起こす武力衝突だけです。
日韓関係は悪化を道を辿りますが、望みは日朝関係にあります。日朝国交正常化、そのとき日韓条約が見直されます。「大韓民国政府は(略)朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される(日韓条約第3条)」。この条項は変えなければなりません。しかしそれは米朝関係が確立されたの後、つまりトランプ再選後です。それまではじっと我慢。やっぱり佐藤優は説得力があります。
3、映画『工作』
タイミングよく映画『工作』(ユン・ジョンピン監督 2018年 韓国)を見ました。
舞台は1992年。南から北の核開発の情報を得るためにスパイが派遣されます。工作員は北と南の共同事業をするビジネスパースンとして侵入します。
そして首尾よく、北の経済のキーパーソンと知り合い、懇意になります。最後には金正日と面会が許されるようになります。
北のモデルを使って広告を作る。共同事業が実現に向けて走り始めます。
しかし南で政変、金大中が大統領に、北への対応が変わります。
「工作員」は祖国によって梯子を外され、祖国によってスパイであることが暴露されます。
映画は北と南を超えた、男の友情、男の仁義を描きます。
キーワードは「祖国はひとつ」です。
東西の両ドイツが統一されたのは、1989年。あれから30年、南北の朝鮮半島の二つの国も統一されるべきです(拉致問題解決は必須条件ですが)。
しかしそのとき、日本は米国、中国、ロシア、南北朝鮮、4つの核保有国に囲まれることになります。平和憲法と安全保障体勢は、根本的見直しが必要になります。
結論。渋谷のホテルチェーンに勤務している友人には、韓国からの宿泊客は諦めた方がいい、中国、インド・・・別のマーケットを開発した方いい、とアドバイスせざるを得ません。