クリエーティブ・ビジネス塾41「エルヴィス⑪」(2019.10.8)塾長・大沢達男
トム・パーカーのマネジメントは失敗。エルヴィスには無限の可能性があった。
1、Without Him
『エルヴィス物語』の初めのころに、エルヴィスはロック歌手であるととも、米国では優れたゴルペル・ミュージック(福音音楽、ニグロ・スピリチュアル)のシンガーとして親しまれていると話しました。キリスト教にあまり関係のない私たちにも親しめるゴルペルの素敵な曲があります。
67年に録音された♫Without Himです。文字通り「彼なしでは生きてゆけない」と歌ったラブソングです。でもここでの彼は、恋人であり、エルヴィス・プレスリーであり、イエス・キリストであります。今日の彼は、エルヴィスとしてお聞きください。ではどうぞ♫Without Elvis です。
2、エルヴィスの別の道
エルヴィスのマネージメントをしたトム・パーカーは、音楽とは無関係の人でした。
トム・パーカーは、ロックンロールの源流になった、カントリー&ウエスタン、ブルース&ソウル、賛美歌&ゴスペルの米国音楽と無関係の、オランダ人でした。
トム・パーカーの前歴は、サーカスやカーニバルで、動物の世話や出店で商売をする人でした。日本でいえば、縁日や盆踊りにやってくるテキ屋さんでした。テキ屋さんをバカにしているのではありません。稀代の音楽的な才能を持ったシンガーのディレクターやマネージャーとしては不適格でした。
パーカーはエルヴィという「巨像」を上手く扱う「象使い」でした。確かに、エルヴィスは成功しました。でもそれはエルヴィスを「見せ物」として成功させた、以外の何物でもありませんでした。
エルヴィスは自らの才能でロックンロールの道を開きました。黒人のように歌う白人になりました。そして反逆と反抗で、世の中を変えました。しかしパーカーはエルヴィスのその後の展開を構想することはできませんでした。20世紀の音楽史を書き換えることができませんでした。ロックンロールの遺産を食いつぶしただけです。エルヴィスに新たな道を示唆することも、ポップミュージックをリードすることも、ロックコンサートの中心に位置することもさせませんでいした。
1)初めの失敗は、徴兵に応じたことです。
エルヴィスはロックンローラーとして徴兵を拒否することが正しい道でした。若者たちはエルヴィスに反抗と反逆の期待していました。裏切られました。徴兵を拒否することはむずかしいことではありません。たとえばヘビー級世界チャンピオンのカシアス・クレイは徴兵を拒否し、イスラム教徒のモハメッド・アリになり、世界で最も好かれるアスリートして君臨し続けました。
2)つぎの失敗はビートルズの距離感です。
ジョン・レノンはエルヴィスがいなかったら、ぼくたちはなかったと明言しています。ビートルズに歩み寄るべきでした。ジョイント・コンサート、コラボ、ゲスト出演なんでもすべきでした。ところが当時のエルヴィスは映画作戦展開中、しょうもない映画に出演し続け、ステージには姿を現すことはありませんでした。
3)そして最後の失敗は、ロック・イベントに出演しなかったことです。
68年のモントレー・インターナショナル・ポップフェスティバルでオーティス・レディング、ジミ・ヘンドリックスと共演すべきでした。さらに伝説のロック・フェス、69年のウッドストックにも出演すべきでした。
ビートルズとの♫Twist and Shout、ローリング・ストーンズとの♫Satisfaction、クイーンとの♫We are The Champion・・・エルヴィスが歌う姿を想像するだけでもゾクゾクするではありませんか。エルヴィスはあくまでもロック・シーンの中心いるべきシンガーだったのです。
『エルヴィス物語』の最後にお聞きいただくのは、♫A Little less Conversation♫です。
いまから50年前の68年録音です。ジャンキーXLにリミックスされ全英チャートナンバーワンになったのは、なんとレコ-ディング後34年後、死後25年後の2002年です。
2002FIFAワールドカップではナイキのCMに使われ、エルヴィスが不滅であることを証明しました。
ロック・ミュージックの頂点にはいつもエルヴィスがいました。エルヴィスは、The King of Rock&Roll であるばかりでなく、The King of Rock Music でした。そしてこの曲がそれを証明します。
これが結論です。
3、A LITTLE LESS CONVERSATION(言葉じゃダメだ)
♫
言葉じゃダメだ 態度で示して/イライラするよ 満足できない
もっとやさしく 大きな声ださないで/ケンカはやめて イチャイチャしよう
お口を閉じて 心を広げて/ぼくをいかせて いかせてぼくを
おめめを閉じて 音楽聴こう/夏のそよ風に 身を任せて
素敵な夜の 素敵な過ごし方知ってるかい/いっしょにおいで 気持ちを楽に
さあおいで 言葉にゃあきた/コートをとって 散歩しよう
おいで おいで/おいで おいで/おいで おいで/
大胆になろう/ リクツはやめて
さあ遅くならないうちに
さあおすわり/じっと待って
言葉じゃダメだ 態度で示して/イライラするよ 満足できない
もっとやさしく 大きな声ださないで/ケンカはやめて イチャイチャしよう
お口を閉じて 心を広げて/ぼくをいかせて いかせてぼくを