エルビスが発明したロックンロール唱法。

クリエーティブ・ビジネス塾35「エルビス⑤」(2018.8.21)塾長・大沢達男

エルビスが発明したロックンロール唱法。

1、”Baby, Let's Play House (きみといちゃいちゃ '54)”Arthur Gunter 作詞 アオヤマゴロウ訳詞
♫ねえ かわいい かわいい かわいい かわいい子ちゃん/かわいい かわいい かわいい かかかかかか かわいい かわいい かわいい子ちゃん/かわいい かわいい かわいい子ちゃん
こっちのおいでよ かわいい子ちゃん/きみといちゃいちゃしたいんだ
ねえきみは 大学に行くかも/勉強するかも/ピンクのキャディに乗るかもね/だけど どっかで へまをする
さあ かわいい子ちゃん /こっちにおいで かわいい子ちゃん おいで/こっちにおいで かわいい子ちゃん おいで/こっちにおいで かわい子ちゃん/きみといちゃいちゃしたいんだ(A)
さあ聞いて きみに話があるんだ/話って言うのはね/こっちに ぼくにおいで きみはお子ちゃま/だから ぼくたち ままごと遊び(繰り返しA)
さあ このことだけは かわいい子ちゃん きみに知ってもらいたい こっちにおいで いちゃいちゃしようよ
ぼくたちやれるさ むかしのように(繰り返しA)イエ/さあ聞いてよ かわいい子ちゃん わかってね/ 僕から消えて まだきみはお子ちゃま/ほかの男と付き合わないで ねえかわいい子ちゃん♫
2、ロックンロール唱法
エルビス・プレスリーが、ブレイクしたのは、ラジオによってです。1954年夏、初めてのレコーディング曲"That's All Right"が、メンフィスの放送局WHBQでかけられ、大反響を呼び起こします。町中から放送局に電話が殺到し、DJは"That's All Right"を一晩のうちに、連続して7回、11回、7回と放送しなければならなくなります(『エルビス、最後のアメリカン・ヒーロー』P.29 前田絢子 角川選書)。
なぜエルビスの歌声は世の中を動かしたのでしょうか。それはエルビスが黒人のように歌う白人だったからです。エルビスが、ヒルビリーやブルースを歌うと、それが新しい音楽に聞こえました。エルビスは、「ロックンロール」(ロカビリー)を発明しました。それが、1954年11月録音の”Baby, Let's Play House (きみといちゃいちゃ)”を聞くと分かります(『50年代のエルヴィス全曲』p.44~46 ビリー諸川 同文書院)。
1)ヒーカップ唱法(Hiccup=しゃっくり)・・・歌詞の語尾を瞬時にひっくり返して、しゃっくりのように歌う。アルブスのヨーデルが米国に伝わり、カントリーミュージックの「ウエスタン・ヨーデル」に、さらにブルースの「ブルー・ヨーデル」になる。
2)マンブリン唱法(Mumbling=モグモグ言う)・・・口ごもって、モグモグ歌う。黒人ゴスペルの唱法
3)ホンキートンク唱法(Honky Tonk=カントリーミュージックを演奏する安酒場とそこで演奏される音楽のスタイル)・・・鼻にかけて歌うカントリーシンガーの歌い方。
4)ファルセット唱法(Falsetto=不適切な、偽りの声)・・・裏声。ヨーデルはファルセットと低音域の胸声
(地声)の切り返しの繰り返し。つまりヒーカップで歌えるとは、ファルセットでも歌える。
5)シャウト唱法(Shout=ロックの歌い方)・・・いわゆるガナリ系のロック唱法。躍動するリズムが命。
エルビスが発明した「ロックンロール唱法」を説明するとこうなります。エルビスのもっとも優れた理解者で、研究者で、シンガーであるビリー・諸川は、エルビスの「90度の才能」の極め付きのソングとして、"Baby, Let's Play House (きみといちゃいちゃ)"と取り上げています(前掲p.44)。
しかし・・・、エルビスの才能は「90度」ではなく、「180度」。ジャズやクラッシックの歌手としても優れていました。ジャズのビング・クロスビーフランク・シナトラに負けないクルーナー唱法の歌手であり、またオペラのルチアーノ・パパロディやプラシド・ドミンゴと比肩するようなベル・カント唱法の歌手でもありました。
6)クルーナー唱法(Crooner=ささやくように優しく歌う)・・・マイクロホン用のソフトな発声。ビング・クロスビーが代表。低い声でそっとつぶやく歌い方。
7)ベルカント唱法(Bel Canto=美しい歌、美しい歌声)・・・オペラ唱法。イタリア式声楽、発声法。
3、It's Now Or Never (いま でしょう '60) Aaron Schroeder 作詞 アオヤマゴロウ訳詞
♫いま でしょう/さあ 抱きしめて/キスしてちょうだい/きみはぼくのもの/あしたじゃ おそい/いま でしょう/がまんできない(A)初めて会った日/きみはやさしく 微笑んで/心奪われ 身も奪われ/今日まで生きてきたのは/この時のため/いま きみがそばに/ついに この時がきた (A)の繰り返し 涙を流して/海に向かって叫ぶ/もし愛が消え 愛し合えなくなったら/唇燃えて きつく抱かれる/それはいつになるの/また巡り会える日は(A)の繰り返し