もう待ったなし、英語を完璧にマスターしましょう。

コンテンツ・ビジネス塾「日本語が亡びるとき」(2009-09) 3/10塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、日本語が亡びるとき
日本語が亡びるとき」(水村美苗 筑摩書房)は、私たち日本人が今後どうやって生きていけばいいかの人生の指南書であり、私たち日本人は次の世代に何を伝えていったらいいかの教育書です。
今どきの若者は漢字が書けない、最近の日本語が乱れている、このままでは日本文化の伝統が失われてしまうなどの、偉そうな物言いの、どうでもいいような日本語論ではありません。
話題を呼んでいます。「文学界」、「新潮」、「ユリイカ」が特集を組みました。梅田望夫蓮見重彦平野啓一郎片岡義男などのそうそうたるメンバーが意見を表明しました(日経2/21)。
水村さんの主張は簡単です。1)世界は英語の世紀には入った。これはインターネットの時代になりますます加速されている。2)文章は英語で書こう。音楽が世界共通の楽譜、数学が世界共通の数式で書かれているように、論文、小説は、世界の「普遍語」である「英語」で書くべきだ。3)地球には6,000の言葉あるがそのうちの80%は今世紀中に亡びる。日本語をそうさせないために、国語教育をしっかりさせよう。そのためには子どもたちに近代文学を読ませよう。以上の3点です。
2、時代とともに変わる「普遍語」
「普遍語」とは、民族や国家を超えて通用する言葉です。その下には近代になって成立した国家だけの「国語」、さらにその下には小さな部族でしか通用しない「現地語」があります。
江戸時代までの日本では漢文(中国語)が、普遍語でした。漢字は「真名(まな)」、ひらがなは「仮名(かな)」と呼ばれていました。仮名は、漢字から作り上げられた仮の文字で、女性しか使いませんでした。正式の文章はすべて漢字で書かれていました。「坊ちゃん」で知られる明治時代の作家夏目漱石も実は、たくさんの「漢詩」を残しています。いまとなっては鑑賞できません。つまり、つい先ごろまで日本のインテリは、普遍語である漢文で文章を書いていたのです。
西洋では近代まで、ラテン語が普遍語でした。天動説に代わって地動説を唱えたポーランド生まれのコペルニクスも、「それでも地球は動く」と言ったイタリア人のガリレオも、リンゴが頭に落ちてきて万有引力の法則を発見したイギリス人のニュートンも、みんなラテン語で論文を書いていました。
明治維新になって日本には、英語、フランス語、ドイツ語の普遍語が入ってきました。なかでも普遍語のような威力があったのがフランス語でした。西洋文明の真髄を象徴する言葉フランス語は、なんとイギリスの王室でも使われてたというのですから驚きです。しかし、第2次世界大戦終了とともに、ヨーロッパとフランス語は落ちぶれていきます。
そして、ドルとインターネットと、普遍語として英語(米語)の時代になっていくのです。世界で最も優秀だとされる20の大学のうち17がアメリカにあり、ノーベル賞受賞のうち70%の学者がアメリカの教壇に立っています。驚きは、パリのパスツール研究所が英語で論文を発表していることです。
3、何をなすべきか。
以上までの話なら、なるほどな、でおしまいです。しかし現実はきびしい。お前は英語をどうするんだ、お前の会社では英語教育をどうしているのだ、と私たちに迫ってくるからです。
発展目覚ましいシンガポールは、国民総バイリンガル社会です。マレー語、北京語、タミル語、英語の4つが公用語ですが、だれもが英語を使え、作家はなんと英語で小説を書きます。インドには、100から数100の言葉があるといわれていますが、公用語は「ヒンディ語」で準公用語が「英語」です。東インド会社から数えて400年、インドの英語には長い歴史があります。
中国、韓国の英語熱は要注意です。英語圏の大学・大学院の中国人学生は驚くほど増えています。それを上回るのが韓国です。留学専門の中・高学校から、インドと中国に次ぐ人数の学生をアメリカの大学に送り込んでいます。総人口ではインド・中国の1/20にも満たないというのに・・・。
水村さんの「日本語が亡びるとき」は、アメリカ・アイオア大学での開かれた国際的学習会の話から始まります。集まったのは20数カ国の人々。それぞれのお国柄と人柄が魅力的に語られるエッセイです。外国で、「はずかしい・・・」、思いをした経験がある人なら、だれもがニッと笑ってしまいます。だからよけいに、英語を勉強しなくてはと、英語の普遍語説に共感してしまうのです。