コンテンツ・ビジネス塾「トランスフォーマー」(2009-22) 6/30 塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながる
ヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、タカラトミー
人間のドラマの中にロボットが登場し、脇役ではなく中心「人物」となって活躍するハリウッドのアクション映画「トランスフォーマー/リベンジ」が人気を集めています(全米1位、日本3位)。
原作を聞いて驚きます。タカラ(タカラトミー)の「おもちゃ」です。米国のH社が、タカラと業務提携し変形ロボットの「TRANSFORMERS」を北米中心に販売し成功します。そしてそれが「トランスフォーマー」シリーズとして日本に逆輸入されます。トランスフォーマーは、玩具(がんぐ=おもちゃ)だけでなく、アニメ、まんが、ゲームとして展開されるようになります。そして、ついに第1作の映画「トランスフォーマー」が、2007年にハリウッドで制作されます。
トランスフォーマーとは、「変形するもの」という意味。自動車がロボットに、そしてまた巨大なロボットが自動車に変身するのです。そんなバカな。実際、これは「こどもだまし」の話です。
2、実写映画
制作総指揮は、「ジョーズ」、「E.T.」、「ジュラシック・パーク」のスティーブン・スピルバーグ。そして監督は、CM監督出身で「アルマゲドン」、「パール・ハーバー」のマイケル・ベイです。
1)太古の昔、故郷の星を破壊された平和的な「オートロボット」と、それに対立する破壊的な「ディセプティコン」の二つのトランスフォーマー集団が、地球にやってきます。
2)彼らの地球来訪の目的は、「キューブ」。トランスフォーマーは金属生命体ですが、その生死をつかさどる物質・キューブを求めて、地球にやってきたのです。
3)トランスフォーマーは、日常では自動車に姿を変え生活しています。戦いになると巨大な戦闘ロボットに変身します。
4)キューブの秘密を握っている地球人が、ハイティーンのサム(シャイヤ・ラブーフ)とその恋人のミカエラ(メーガン・フォックス)です。なんと「キューブ」のかけらはサムのトレーナーに紛れていて、それをミカエラが預かることになります。つまりサムとミカエラが攻撃のターゲットになります。
5)サムの友だちには、バンブルビーと呼ばれる「カマロ」の、トランスフォーマーがいます。サムは、平和を愛する「オートロボット」と、地球を守る米国軍隊とともに敵の「ディセプティコン」と戦います。
3、映像革命
CG映像に不可能はないといわれるようになったのは、10年前です。
10年前とは、「ジュラシック・パーク/ロストワールド」(1997年スピルバーグ監督)が完成した年です。米国ロスアンゼルスで開かれたシーグラフ(CGの世界最大のコンベンション)のプレゼンテーションでは、その映像の一部が紹介され、世界のCG研究者の拍手喝采を浴びていました。
CGは、「スター・ウォーズ」、「ジュラシック・パーク」とともに発達してきました。1993年のジュラシックパーク第1作の恐竜(dinosaur)は、模型を作り、ストップモーション・アニメーション(コマ撮りアニメ)で撮影される予定でした。それをILM (Industrial Light & Magic)のCGクリエーター達がひっくり返し、全編CGで作り上げることにしてしまったのです。
そして「写実」を卒業したCGは、見たこともない映像のビジュアライゼーション(視覚化)に挑戦するようになります。映画「トランスフォーマー」は、この問いに対する答えです。
1)クルマがロボットに変身する。これはまったく想像上の映像でしかありえません。巨大ロボットの動きにはお手本がありません。生み出さねばなりません。
2)アニメはすべて想像上の映像ではないか、という指摘が予想されます。トランスフォーマーの困難さは、リアルな人間世界に無理なく、空想の金属生命体が登場することです。
3)つまり、アニメの文法「笑い・ファンタジー・風刺」ではなく、ドラマの文法「愛・絆・勇気」の世界にトランスフォーマーが登場するのです。
この映画は「オタク」のドラマではありません。まず、主人公サムが国家に献身する「自己犠牲のドラマ」です。つぎに、サムとミカエラの「愛のドラマ」です。そして、サムと両親の「絆のドラマ」です。自己犠牲、愛、絆は、オバマ大統領の就任演説のテーマとまったく同じです。第3作に期待します。