大島優子の映画『ロマンス』は、芸術してる。

クリエーティブ・ビジネス塾36「映画『ロマンス』」(2015.9.9)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、大島優子
小田急線のロマンスカーアテンダントの制服を着た大島優子が町中を全力疾走します。車内販売のお菓子を万引きしようとした長身の中年男性を追いかけています。男は警察の手から逃れるために必死、大きなストライドで懸命に走ります。しかし大島優子ははるかに速いピッチで走り、犯人を追いつめ捕まえます。
大島優子は152cmと小柄、でも運動神経抜群。走る姿はかっこよく、映像になり躍動しています。優子ちゃん主演の映画『ロマンス』は、そのシーンだけでも見る価値があります。
映画は、万引き犯と捕まえたロマンスカーアテンダントが、ひょんなことから意気投合してしまい、クルマに乗って箱根を旅をすることになってしまう話です。
優子ちゃんと男性の会話が魅力的です。男性が女性にみやげ物やで買ったストラップをプレゼントします。もらった女性は。ありがとうとも言わずに、ストラップをじっと見つめて「ダッサイー!」とひと言。男性それに対して「こういうのって、はずしてないでしょ、ダサさを!」。気の利いた会話が連続します。
そして映画の最大の魅力は、大島優子の笑顔。映画『紙の月』でもらった優秀女優助演賞の演技力はここでも発揮されています。愛くるしい瞳と微笑み、大島優子の魅力が大きなスクリーン一杯になります。映画は大島優子のビッグスマイルでおしまい。・・・この映画を見てよかった、素晴らしい休日になった・・・
2、悲しみの人々
なぜ、犯人を捕まえた女性と万引き犯が、旅をすることになるのか。それはふたりとも悲しみをかかえていたからです。女性は、母子家庭で育ちました。母は次々に男を変え幼い娘の前でも、イチャイチャしていました。学校から帰宅した娘が家に入ろうとすると、母と恋人のセックスの喘ぎ声(あえぎごえ)が聞こえてきて、ドアを開けられないこともありました(実は大島優子自身も父子家庭で育ちました)。成人してからは母と娘は別居する、悲しみの人でした。
万引き男も同じでした。仕事は映画のプロデューサー。簡単にいうと映画製作の資金集め係です。映画はギャンブルです。大ヒットすれば、途方もない巨額の利益をゲットできます。だれもがその夢を見て映画を作っています。もちろん目的はカネだけではありません。映画は芸術でありエンターテイメント。いいものを作り、不朽の名作にする、そして歴史に名を残す。それが目的です。映画づくりには魔力があります。そうして万引き男は巨額の負債を抱え、家庭が崩壊している悲しみの人でした。
悲しみのふたりが、利害では対立していたにも拘らず、肌を寄せ合うように旅を始めてしまう、設定です。ふたりはラブホテルで一夜を過ごす羽目に・・・悲しみのセックス。映画の中味はこれ以上は言えません。
映画『ロマンス』の脚本・監督は、タナダユキ(1975年〜)。ゆずの『守ってあげたい』のミュージックビデオ、蜷川実花監督の『さくらん』の脚本担当、当代女流のトップランナーのひとりです。タナダ監督は悲しみの人々を描いています。失恋、喪失、敗北、そしてやるせなさ、切なさ、淋しさ。『ロマンス』は大島優子主演の明るく楽しい映画ですが、全編に悲しみが溢れています。
3、童(わらべ)系女子
おかっぱ、前髪パッツン、ショート・ヘアで少女のようなメークをした「童(わらべ)系女子」が増えています(日経8/22)。『前髪切り過ぎた』を歌うモデルの三戸なつめちゃん(25)がイメージリーダー。なつめちゃんも152cmと「小さな女の子」です。
でもこの「童系女子」は可愛いけれども、あまりにも悲しすぎます。売りは、「男性にこびない強さ」、「同性に愛され、仲間内での地位を高める」ことにあるそうです。つまり同性をターゲットにした、女性のヘアメーク、ファッションです。ギモンです。女性の美容とは男性に自分を売り込むためのものではなかったのですか。セックスアピール。だから色白の透き通るような肌に、真っ赤な口紅を塗るのではありませんか。そんなことは説くまでもありません。自然界のオスとメスの違いを見れば明らかです。
悲しみのデータがあります。「将来子供を何人希望するか」。独身男女に聞きました。厚生労働省の13年の調査で、男性の15.8%、女性の11.6%が「0人」と答えました。理由は「自由な時間が持てなくなる」「出費がかさむ」(日経8/24)。無責任な自由で何が達成できるのでしょうか。人口減少を続ける日本は、30世紀までのこの地球から姿を消します。これこそ悲しい話ではありませんか。