クリエーティブ・ビジネス塾52「AI(人工知能)」(2016.12.7)塾長・大沢達男
「AI(人工知能)に負けてたまるか」
1、シンギュラリティ
1956年、ジョン・マッカーシー博士(米)により、「AI(人工知能)」という言葉が生まれました。機械が、人に似た判断や学習ができるようになる、未来への夢を語ったものです。
そして2016年3月に米グーグルの「アルファ碁」が、世界のトップクラスの囲碁棋士を破りました。
さらに2045年には、人工知能(AI)が人間の知能を超える「シンギュラリティ」が来ると、レイ・カーツワイル(グーグル)によって予測されました。「我々の脳をスキャンして作った第2の脳がよりスマートに考え長生きする。人類の知能は拡充し文明は新段階に入る」(日経11/6)。
2、AIの世界
○僧侶・・・北京にある建立1千年を超す龍泉寺には、AI僧侶が活躍しています。身長60センチのロボット僧侶「賢二」です。高僧の膨大な説法データを解析し、人々の悩みや問いかけに答えるのです。多くの人が寺と仏教に注目してくれるようになりました。
○作曲・・・全米ヒット曲ランキングの2~3%はAIが作っています。20年後には80%になる予想されています。デビッド・コープ名誉教授(カリフォルニア大サンタクルーズ校)はAIが作った1千曲の著作権料を受け取り生活しています。
○小説・・・直木賞作家の朝井リョウはAIとの共作をしています。テーマを考えるのは自分、あらすじや登場人物を決めるのはAI、そのあとに小説家は文章の執筆に全力を投入します。
○軍事・・・AIは火薬、核兵器に続く第3次戦争革命を引き起こします。追いつめられた国やテロリストがAI兵器に頼れば世界は危機に陥ります。
○弁護士・・・米国での弁護士作業のひとつ証拠集めはAIが主役です。資料や証拠が整理されていないと、判事からちゃんとAIを使ってください、と指導されます。
○社員・社長・・・AIは残業や備品状況、働き方をチェックしています。AIは空気を読まず公正に人事評価をします。3DのAI社長も開発、部下からの問い合わせ、業務上の対話の8割をこなすようになります。
○宇宙物理学・・・欧州合同原子核研究機関(CERN)ではAIを使って、宇宙の3割を占める暗黒物質の検出を目指しています。もし見つかればノーベル賞ですが、問題は、AIが導きだす結論に至までの過程が、難しすぎて人間が理解できなくなる可能性があることです。ノーベル賞はAIに与えれます。
○外国為替市場・・・投資の世界は人間には複雑になりすぎています。AIが売買する自動取引が主流です。世界の花形ファンドマネジャーの時代は終わります。マネーの世界は、進化したAI の多様な個性が競う、時代になります。しかし、未曾有の天変地変には、経験から予測するAIは、判断を誤るかもしれません。
○囲碁棋士・・・AIのアルファ碁に負けたのはイ・セドル(韓国)です。AIに負けたとき彼は人間に負けたときをは比較にならないほど当惑しました。AIは人間の弱点をさらけ出しました。感覚を妄信しない。イ・セドルは反省しました。さらに大胆で独創的なり、計算するようになりました(日経『AIと世界』11/4~8)。
3、脳科学
人工知能の知能とは何でしょうか。知識と才能、知性の程度です。「才能」はやっかいです。個人の素質が含まれます。AIでテーマになっているのは、知性の程度です。人間の脳は3つのレイヤー(階層)からでしています。いちばん下が本能の大脳古皮質(ワニの脳)、その上が感性の大脳旧皮質(ウマの脳)、そして知性の大脳新皮質(ヒトの脳)。AIで扱っているのは、いちばん上のレイヤーである大脳新皮質だけです。
最新の脳科学も同じです。人間の脳は1000億のニューロン(神経細胞)で構成されています。現在の脳科学は、ニューロンが密集しているいちばん上のレイヤー、大脳新皮質の研究に明け暮れしています(『つながる脳科学』 P.94~96 理化学研究所脳科学総合センター 講談社)。
ところが知性には、第1と第2のレイヤーが関わっています(専門的なりますが・・・)。
たとえば、恐怖記憶の消去には第3のレイヤー前頭前皮質と第2のレイヤー扁桃体、そして第1のレイヤー青斑核が動員されています(p.204~7)。また双極性障害(躁と鬱を自発的に繰り替えす精神疾患)には、視床室傍核という第1第2のレイヤーが関わっていることがわかってきました(p.274)。
現在のAIも、脳科学もまだ鼻クソのような研究です。シンギュラリティの議論は早すぎます。
「AIは 耐えて忍んで 恋をするか 無我になれるか 清く死ねるか(達男)」