TED TIMES 2021-14「What’s going on」 4/1 編集長 大沢達男
青春の蹉跌として「ソウル・ミュージック」、でも決して後悔しない。
1、”What’s going on”(Marvin Gaye)
母さん 母さん / いろいろあるよね 泣かせることが / 兄さん 兄さん 兄さん / ありすぎだよね 命に関わることが
だってさ ぼくたち 見つけたばかりじゃないか / 大切なものを いまここに それも今日
父さん 父さん / おおげさにしたくないよ これ以上 / そうでしょう 対立は答えじゃないよ / 愛だけが 憎しみを超えるのさ
だってさ ぼくたち みつけたばかりじゃないさ / 大切なものを いまここに それも今日
弾圧行為 弾圧表示 / 捕まえないで 暴力はいやだ /話しようよ そうすれば わかるさ
問題は何さ / 何が問題さ / ねえ 何が問題さ / 問題は何さ
(訳詞:アオヤマゴロウ)
2、”Making Of MOTOWN”
ほんとに恥ずかしいのですが、映画『メイキング・オブ・モータウン』を見て、”What’s going on”がなにを歌っているか初めて知りました。あの歌が画期的だったのは、メロディやビートではなく、詞、歌っている内容。モータウン・レーベルでは画期的な抵抗の歌、とういうことだったんですね。ほんと恥ずかしい。
1970年代のモータウン・ミュージックは六本木のディスコで流行っているチャラい音楽でした。人気のテンプテーションズ、シュープリームス、ジャクソン・ファイブは黒人音楽を商業ベースにのせたもので、ソウル・ミュージックの愛好家(ファン)の間では軽蔑されていました。
ソウル・ファンが愛したボーカリストは、オーティス・レディングがナンバーワン。幅広い人気を誇るポップ・シンガーでありながら、深いソウル・フィーリングそして卓越した歌唱技術がありました。ほかにオーティス・クレイ、O.V.ライト。ギターにはB.B.キング、アルバート・キング、フレディ・キングが、そしてグループには、ステイプル・シンガーズがありました。
”What’s going on”を日本で初めて聞いたのは、「ソー・バッド・レビュー」の石田長生(いしだおさむ)の歌唱でした。あの頃、関西発のソウル&ブルース・ミュージックが日本のミュージック・シーンの中心にありました。京大西部講堂、京都のライブハウス「磔磔(たくたく)」がメッカで、東京からクルマを飛ばして聞きに行きました。日本の3大ギタリストは、「ウエスト・ロード・ブルース・バンド」の塩次伸二、山岸潤史、「ソー・バッド・レビュー」の石田長生でした。関西のミュージシャンは抵抗の歌としてソウル&ブルースを取り上げていました。だから石田長生は、モータウンの抵抗の歌”What’s going on”とりあげ歌ったのです。
何も知らずにいた自分は、ほんとに、あー恥ずかしい。そしてもっと恥ずかしいことに、今日の今まで、石田長生も塩次伸二も亡くなっていることを、知りませんでした(山岸潤史は米国で活躍中)。
間違いだらけの青春を送ってきましたが、ただひとつ誇れるのは、あの頃の自分の音楽に対する態度は正しかった、音楽を選び聞く耳は正しかった、ということです。
あの頃に帰り、オーティス・レディングの”I’v got a dream.”を聞きます。たんなるラブ・ソングですが、でも恋敵(こいがたき)の男が権力者や白人だっと想像すると、類稀(たぐいまれ)な抵抗の歌になります。オーティスの叫びは悲痛です。
3、”I’v got a dream.”(Otis Redding)
夢を見たんだ 忘れられない / 夢を見たんだ 忘れられない
ねえ君 君を見たんだ 昨日の夜 / あいつの腕が 君を強く 抱きしめていた
だれも 分りゃしない 僕が感じたこと / 僕は傷付き 彷徨い歩き 泣いたんだ
夢を見たんだ 忘れられない / 聞いておくれ ひどい夢なんだ
わかっているさ 君は言う ただのお友達よ / だけど僕は見た あいつは君に しつこくキスした
この目で見たんだ 間違いない / なぜあいつは あんなに優しく 君を抱いた
(訳詞:アオヤマゴロウ)