THE TED TIMES 2023-07「エルヴィス13」 2/15 編集長 大沢達男
拝啓 大滝詠一様。
「大滝詠一さん語る会・ナイアガラ道場」で「天才的なエルヴィス・ファン」の話をします。
1、拝啓 大滝詠一様
大滝さん、その後いかがお過ごしですか。
現世のこちらより、そちらのあの世のミュージック・シーンのほうが、元気のようですね。
今年の1月に、3大ギタリストのジェフ・ベックが、CSNYのデヴィッド・クロスビーが、テレヴィジョンのトム・ヴァーレインがそちらに、そして日本からはシーナ&ロケッツの鮎川誠が行きました。
盛り上がっているんじゃないですか。
2月に私は、こちらで「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」の東京ドームの公演に行ってきましたが、私にはもうひとつピリッと来ない。
私ももう、そちら世界に近い人間になのでしょうかね。
今日は、「天才的なエルヴィス・ファン」、である船橋羊介の話をします。
船橋羊介(1972~)は、『1954年ー56年のエルヴィスは神がかっていた』という本で、衝撃的に登場しました。
なぜ驚いたか、船橋が私たちより20年以上も若い若者でありながら、私たち以上にエルヴィスを正確に評価したからです。
大滝さんは1948年生まれでしたね。
なぜエルヴィスは、1954-56年がサイコーなのか、船橋羊介の説明を聞きましよう。
「この時期のエルヴィスのカッコ良さは神ががっていて(中略)、髪型、顔、服の選び方、ジュエリーの着け方、どれを見てもため息が出るほどカッコ良く、完璧だ」(p.023)。
まあ理屈はどうでもいい。船橋の言う初期のエルヴィスを聴いてみましょう。
2、Trying to get to you(お前が欲しくて)
♬何マイルも旅してきたんだ/大きな谷を通り抜けてね/昼も夜も動き続けて/いつも走っていたさ/ベイビー君を口説きたくて
君のレター読んで/その気だとわかったのさ/昼も夜も動き続けて/いつも走っていたさ/ベイビー君を口説きたくて♬
1曲目は1955年7月11日の録音。この曲は、エルヴィスがピアノを弾いている、ということで知られています。でも私にはよく聞こえない。大滝詠一さん助けてください。
「Trying to get to you(お前が欲しくて)」
3、拝啓 大滝詠一様
大滝さんのジュークボックスに入っていた、エルヴィスの20曲をアルバムにしたCD、「Eiichi Ohtaki’s Juke Box」がありますね。
「冷たくしないで ハウンドドッグ キングクレオール ラヴァー・ドール GIブルース ベストは尽くしたが サレンダー ロンリーマン ロカ・フラ・ベイビー 心の届かぬラブ・レター あなたは何処から ラスベガス万才 ホワッド・アイ・セイ スイムで行こう ユール・ビー・ゴーン キッスン・カズン 胸に来ちゃった イージー・クエスチョン いかすぜ、この恋」以上の20曲です。
55年~57年に該当するのは『冷たくしないで』(56年)、『ハウンド・ドッグ』(56年)のたったの2枚だけで、あとは1960年~65年のエルヴィスです。
私は恥ずかしいんですが、船橋のいう初期の2枚のCDを、ろくすっぽ聴いてきませんでした。
つまり同時代の音楽としてエルヴィスを聞いてきたんで、初期のエルヴィスが得意ではありません。
大滝さんもそうではありませんか。
とはいえ、1972年生まれの船橋羊介のエルヴィスに関する意見は、全くその通りで、賛成します。
大滝さんもそう思いませんか。
2曲目は、初期のエルヴィスの傑作中の傑作と言われる、「Old Shep=老犬のシェパード」、1956年9月2日の録音です。
4、Old Shep(オールド・シェップ=老犬のシェパード)
♬あの時僕はまだ子供だった/犬も子犬だった/丘を越え草原を越え僕らは彷徨った/少年と犬/そうやって僕らは大きくなった/
泳ぎに行った夏の日を忘れられない/僕は誰の目にも溺れていた/だけど犬がいた/助けに来ていたのだ/犬が飛び込み僕を助けたのだ/
光陰矢の如し/犬は年老いた/目はうつろ/ある日獣医が僕を見て言った/犬にしてやれることはなにもない/
震える手で/僕はピストルを持った/そして犬の頭を狙った/僕にはできないことだった/逃げ出したかった/誰かに代わりに撃って/
犬は隣にきて/僕を見上げた/頭を僕の膝の上に横たえた/僕は一番大切な友を撃った/愛犬を撃って泣いて、狂った
(「Old Shep(オールド・シェップ)」はナレーションの途中から BGで入り、ナレーションが終わったら、フルボリュームに)
5、拝啓 大滝詠一様
船橋羊介がいう最高のエルヴィスの1954~56年とは、エルヴィスの19歳、20歳、21歳の3年間です。
エルヴィスのレコード言えば、「Elvis Presry 登場」と「ELVIS」の2枚だけです。
さらに船橋は、私たちにはほぼ聴くことが不可能なサンレコード時代のSPレコードにも触れ、サイコーだと評価します。
大滝さん、もう完全に私たちの負けです。あげくに船橋は、メンフィスでしばらくエルヴィス・ファッションのお店を経営していたのですよ。
船橋羊介は、「天才的なエルヴィス・ファン」としか、いいようがありません。
「オールド・シェップ=老犬のシェパード」はいい。
でもなんだか、湿っぽくなってしまいました。
詞を読んでいて、涙でビショビショになってしまったからです。
気分を変えましょう。
今日はナイアガラの白ワインを買ってきました。ワインをシュポット!開けて。
最後はエルヴィスらしく、ラブソングで行きます。
あー、そういえば、大滝詠一さん、リサ・マリア・プレスリーもそちらに行きましたね。
リサの前で、歌ってあげてみては、いかがですか。
6、So glad you’re mine(恋がかなった)
♬彼女はスラっと背高のっぽで/ぶっ飛んでいる/抱き締められるたびに/僕はうめいてしまう/
彼女はうめくウィーイー/僕もいかなくては/彼女は女の悦びと言う/僕も君に会えた悦びを言うさ/
彼女は知ってる/僕の感じるところ/もっともっと強く抱いて/朝も昼も夜も
1956年1月30日に録音、21歳のエルヴィスは絶好調。「So glad you’re mine(恋がかなった)」
(Thank you so much. See you next time)