各社の社説を、1)説得力(新しいか、面白いか)、2)報道力(現場で書いているか、事実があるか)、3)提案力(具体案があるか、展望があるか)で、採点しました。

THE TED TIMES 2023-01「元旦社説」 1/1 編集長 大沢達男

 

各社の社説を、1)説得力(新しいか、面白いか)、2)報道力(現場で書いているか、事実があるか)、3)提案力(具体案があるか、展望があるか)で、採点しました。

 

朝日新聞空爆と警報の街からー戦争を止める英知いまこそ)

爆音と警報が鳴りやまぬままウクライナは新年を迎えた。「ビクトリー!」。ウクライナ市民は、ロシアへの勝利しか選択肢はない、と思い詰めている。市民は国際機関には失望し、国連は機能不全をさらけ出している。近世以降欧州は、「世界連邦制」や「諸国家の連合」の構想を持ち、「国際連盟」を実現させる。だが26年で挫折する。国際連合では瓦解しないように「拒否権」を考えたがそれが国連を大国エゴの舞台にしてしまった。戦地で思う。人類は戦争という蛮行を止める策を持たない。戦争には勝ちしかない。また戦争は、金融、食糧、エネルギーで、世界に痛みをもたらしている。戦争を止め、防ぐ人類の英知を結集したい。

*現場で書いた朝日は高く評価できる。しかし和平交渉を早くから提案している「フィナンシャルタイムス」を読んでいるものとしては、高校生レベルの論調に思える。説得力C、報道力A、提案力C。

 

毎日新聞(危機下の民主主義ー再生へ市民の力集めたい)

「大ロシアの再建」、「中華民族の偉大な復興」、強権国家への警戒心が強まる。バイデン大統領は「民主主義と専制主義の戦い」と言うが、民主主義国にも「内なる専制」という深刻な問題がある。たとえばチュニジアでは、議会選挙の投票率が1割、フランスとイタリアでは極右政党が躍進、ドイツでは国家転覆計画が発覚。日本では議会軽視で安保政策の転換、原発の新増設が決定されている。市民の力を生かす取り組みが期待される。フランス、英国の「気候市民会議」、日本の東京・武蔵野市では、「食品ロス削減」、「節電」などの市民の意見が、「ゼロカーボン」行政を支えている。地域共同体から、民主主義は再生する。

*新しい事実があり、真摯な提案もあり、申し分ないのだが、文章の構成が問題。プーチンから松下武蔵野市長への展開は無理、素人が偉そうに申し訳ないが、書き直し。説得力C、報道力A、提案力B。

 

○読売新聞(平和な世界構築への先頭に立てー防衛、外交、道義の力を高めよう)

平和構築のために日本は先頭に立つべき、安保理の議長国を務めるのは日本だ。悲劇をもたらすのは独裁者の暴走で、平和を守るのは民主社会である。近年の中国の一方的行動は尋常ではなく、警戒が必要。暴走を止める意味で、「迎撃」本位の防衛体制ではない新しい安保政策は当然である。次は外交、平和への国際世論の構築である。「グローバルサウス」への日本の貢献が必要とされるが、そのためには国力。日本はGDPで世界第3位だが、1人当たりでは2位から27位に低下、大国とはいえない。さらに道義、国際規範に則った行動をしているかだ。国政選挙はない、広島のG7サミットがある、岸田政権に期待する。

*岸田政権支持の読売の主張はいい。しかし「日本」強調の大国意識はどうなのだろうか。国力にあった貢献でいいのではないか。それとやっぱり長すぎる。説得力B、報道力C、提案力B。

 

日本経済新聞(分断を越える一歩を踏み出そう)

ウクライナ侵攻、40年ぶりのインフレ、米中対立、日本での防衛力強化の議論、米国中間選挙では上院民主党と下院共和党習近平は3期目続投だが市民の抗議行動・・・分断で世界は「2つの罠(わな)」に陥っている。1つ目は「ツキディデスの罠」、覇権国と新興国、米中の対立。2つ目は「キンドルバーガーの罠」。覇権国の不在、米中が責任を果たしていない。分断修復の目はある。米中、日中の首脳会談、トランプ支持派の敗北、イタリアのメローニ首相は穏健路線の踏襲。岸田首相は防衛力や原発で、国民に丁寧な説明を。G7サミット議長国、安保理非常任理事国、日本は世界の分断修復に外交力を発揮したい。

*日経の力が落ちている。3日の社説、6人のコメンテーターによる論説はそれぞれ面白く、さすが日経だが。新年社説には見張るような新しい情報がない。説得力B、報道力C、提案力B。

 

産経新聞(「国民を守る日本」へ進もう)

日本の安全保障環境は深刻で、反撃能力の保有、防衛費総額43兆円などは岸田首相の業績である。台湾有事になれば、南西諸島は戦火に尖閣にも、日本有事になる。北朝鮮の核・ミサイルに対して、野党やメディは「反撃能力行使は先制攻撃になる恐れ」を論じ、バカげている。ミサイル対処で日本のような見当違いの議論がなされる国はない。日本でも地下シェルターの整備は急務だが担当相がいない。敵対的な国で日本国民が非道な目に合っている救出しないのが、9条の呪縛である。1976年イスラエル軍ウガンダでテロリストがハイジャックした民間機を急襲し自国民を救出した。国民を守れる国への道は遠い。

*榊原氏に不満はないが、乾正人氏はどうしたのか。産経は現場で書く伝統があったがそれが失われいるのが残念。説得力B、報道力B、提案力B。

 

東京新聞(我らに「視点」を与えよ)

一年の計は元旦に、と私たちは張り切りますが、イスラム世界、中国、エジプトなどでは、元旦は日常と変わりません。干支のウサギも同じ。お月様に見えるのは日本ではウサギですが、ワニ、ロバ、髪の長い女性、いろいろです。米国マリアナ・グランデさんに「あなたの視点で自分を見てみたい」、POV(ポイント・オブ・ビュー=視点)という曲があります。大谷翔平は、投手の視点で自分の打撃を、打者の視点で自分の投球を見る、唯一無二の存在といえます。「人の身になって考えよ」が分断や対立を穏やかなものに変えていきます。POVには旅や読書が役立ちます。年頭です。「なるべく、毎日、新聞を読む」なんていかが。

*「都新聞」の伝統、粋でいなせな社説。本来要約は不可能。お許しを。大谷翔平が出てくるのがいい。最後の笑いもいい。説得力A、報道力B、提案力C。

 

 

 

 

「元旦社説ランキング」

元旦社説を、元新聞記者2人、放送局アナウンサー1人、元国会議員秘書1人、元銀行員1人、元広告クリエーター1人、元広告代理店経営1人、7人で採点しました。

その結果 1位毎日46点、2位朝日41点、3位読売40点、4位東京38点、5位日経31点、6位産経29点 という結果になりました(A-3点、B-2点、C-1点で採点)。

朝日・・・論説委員長自らが「ウクライナ取材」し書いたものである。内幕が明かされました。ただし論がないとの批判あり。

毎日・・・「絶賛」の評価はなかったのですが、総合でトップの評価になりました。「民主主義」の人気です。

読売・・・「新聞のプロ」の二人から今年の読売はよく書けていると高い評価がありました。

日経・・・ふたつの「ワナ」論議が評判良くありませんでした。

産経・・・「ウソだ!」「これを評価したらいかん!」罵声がありました。

東京・・・評価したのは「東京」出身のふたりだけ。後は相手にしてくれませんでした。

以上。