中国首相の国会演説は、スピーチのお手本です。

コンテンツ・ビジネス塾「温家宝」(2007-15) 4/17塾長・大沢達男
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○中国首相の国会演説は、スピーチのひとつのお手本です。
温家宝首相が来日し、4/12に国会で演説しました。昨年10月の安倍総理の訪中が日中間の、氷を割る旅(破氷之旅)、今回の温首相の訪日は、氷を溶かす旅(融氷之旅)。訪日は新たな日中関係の始まりです。さらに重要なのは、この国会演説が香港を含む中国全土でライブ中継されたことです(日経 4/16)。中国政府の対日政策の大きな転換が中国の全人民に知らされたのです。そしてこの演説が私たちにとって重要なのは、主張すべきことを主張し、読み物として一級品でだれもが感動できるように構成されていることです。スピーチを書いたスタッフの実力は高く評価されています。以下は原文(Web版山梨日日新聞掲載)を大沢が全体の約1/10に要約したものです。
1(序論)。国会で演説させていただくことを大変うれしく思っています。今回の訪日の目的は、昨年の安倍総理の氷を割る旅をうけた、氷を溶かす旅です。これが本日の演説のテーマでもあります。
2000年にわたり中華民族日本民族は学び合い発展してきました。遣唐使阿倍仲麻呂は、中国で数十年も暮らし、王維や李白と交流しています。僧侶の鑑真は、日本に仏教を伝えるための航海に5度も失敗し盲目になりますがそれでも6度目の航海に成功し、中日の交流にすべてを捧げています。孫文先生も周恩来先生も日本で勉強しました。中日の友好往来は、世界文明の歴史でも例のないものです。・・・にもかかわらず、50年あまり関係が絶たれたことがあります。日本の中国侵略戦争です。しかし侵略戦争の責任はごく少数の軍国主義者が負うべきもので、一般の日本国民は戦争の被害者でもあったわけです。戦災にあった日本人孤児や帰国する日本人に愛の手を差し伸べた中国人の美談があります。恨みをかかえ続けるのではなく、歴史の教訓を未来のためにいかさなければなりません。
2(本論)。今年は中日国交正常化35周年。中日関係は大きく発展してきました。改革開放と近代化のための日本の支援を中国国民は忘れません。中日指導者は戦略的互恵関係を築き、中日関係をさらに新たな段階へ進めようとしています。そのためには次の原則を把握する必要があります。
1)相互信頼を増進し約束を履行することです。「台湾独立」は絶対に容認できません。
2)大局。小異を残し大同につくことです。東海(東シナ海)は、平和・友好・協力の海にすべきです。
3)平等互恵、共同発展を目指すことです。両国は、互恵、ウィンウィンの関係にあります。
4)未来に目を向け、交流を強化することです。青少年は国家の未来と希望です。
5)協議を密にし、挑戦に立ち向かうことです。エネルギー、環境、テロ、大量破壊兵器などの問題に対応し、国連改革と国際社会で大きな役割を果たします。
3(結論)。発展途上国の中国には、社会生産力の発展と社会の公正と正義の推進の、2つの任務があります。そのための2つの改革が、市場経済と民主政治です。これらの発展を通じて、中国はこれからも平和発展と調和のとれた世界の構築を推進します。
ひと組の石灯籠が、中日で燃えています。ひとつは中国の鑑真記念堂、もうひとつは日本の唐招提寺。このふたつの火は、中日両国人民の子々孫々にわたる友好の明るい未来の象徴です。中日両国関係には、風雨、紆余曲折がありましたが、友好の土台は泰山と富士山のように動揺しません。
中日関係の美しい未来のために、たゆまぬ努力をし、アジアと世界の平和の発展のために努力しようではありませんか。ご清聴ありがとうございました。
温家宝首相(Wen Jiabao)と合意文書。
2003年から首相。1942年天津市生まれ。北京地質学院大学院修了。不思議、日本と違い中国の指導者は理科系が多いのです。民衆の利益を最優先の「平民総理(庶民派首相)」。京都では農民とトマトの苗を植えました。趣味はジョッギング、東京でも市民と走りました。関西の立命館大学では野球もやりました。天津の名門南開中学で野球に親しんだと伝えらましたが、キャッチボール姿は、かなりヘンでした。「戦略的互恵」のなかに明るい話題があります。羽田と上海の国内空港・虹橋にジェットが飛ぶことです(たぶん来年以降)。東京からの中国は1時間以上近くなります。08年北京オリンピック、10年上海万博。いよいよ平和の戦いが始まります。