いよいよバイオ燃料の登場です。

コンテンツ・ビジネス塾「バイオエタノール」(2007-16) 4/24塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

○日本でもいよいよバイオ燃料が登場します。
4/27からバイオ燃料とガソリンを混ぜた自動車用の新しい燃料が売り出されます(日経 4/17)。バイオ燃料とは植物を原料にした燃料で、地球温暖化の切り札として、注目されているものです。
なぜ地球環境にいいのか。原理は簡単です。バイオ燃料もCO2(二酸化炭素)を排出しますが、植物は大気中のCO2を吸収して育つので、差し引き排出量はゼロと計算されるからです。
バイオ燃料の代表がバイオエタノールで、サトウキビ、トウモロコシ、小麦などの搾り汁を発酵させたアルコールです。日本ではガソリンに混ぜてよい割合が、3%以下、今回は小麦を主原料にした、ヨーロッパ産のエタノール加工品が使われます。
温室効果ガスの排出削減を約束した「京都議定書」では、日本は1990年比で2008~2012年までに6%の削減が義務づけられていますが、そのうちの1%をバイオ燃料で達成できると日本政府は考えています。

エタノールブームに警告。
いいことづくめのようなエタノールに疑問が提出されています。
中東の石油に頼らず、トウモロコシを使って自動車を走らせる夢を、米国人は昔から抱き続けてきました。しかしトウモロコシの値段が上がれば、肉、牛乳、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム・・・トウモロコシを飼料とした動物から作る製品もみな値上がりするのです。大型車のガソリンタンクをエタノールで満タンにするためには、人間1人が1年に食べる穀物が必要なのです。自動車に乗る8億人が、貧しい生活をしている20億人の穀物を奪うことになるのです(レスター・ブラウン 米アースポリシー研究所長 日経 4/14)。
健康リスクも指摘されています。エタノールを使用した場合、ベンゼン、ブタジエンなどの有害物質は減るが、「シックハウス症候群」の原因物質であるアセトアルデヒトやホルムアルデヒトの発生量は増えるというのです。有害オゾンに関連した死亡率、入院、ぜんそくが増加するのです(マーク・ジェーコブソン準教授 米スタフォード大 ビジネスアイ4/20)。
国家間の対立もあります。南米エンルギー会議でのことです。南米最大の石油産出国ベネズエラは、言いました。「バイオ燃料の生産拡大が食料の安全保障への脅威になる可能性がある」。それに対して、エタノールの主要産出国ブラジルは言いました。「牧草地の活用などでバイオ燃料と農産物の生産は両立できる」と。会議の宣言文は極めて歯切れの悪いものになりました。
ベネズエラチャベス大統領は「バイオ燃料がガソリンの代わりになることは絶対にない」と言い捨てて会場を立ち去ったと伝えられています(日経 4/19)。

○火付け役は、ブッシュ政権
米国は「石油中毒」。中東からの石油輸入を75%減らし、バイオエタノール生産を国策にすると、ブッシュ大統領は2006年の一般教書で表明しました。さらに2007年の一般教書では、10年間でガソリン消費量を20%減らすと演説したのです。もちろんつぎの時代の主役はエタノールです。トウモロコシは増産され、エタノール工場が続々誕生し、コーンベルトと呼ばれる中西部の米国農家は空前のエタノールブームにわいているのです(日経 4/14)。
エタノールの話には、なぜかハイブリッド・カー(Hybrid Car)の話が出てきません。エンジンとモーターを併用し、燃費35.5キロメートルの省エネカー、トヨタプリウスです。同じように、電気自動車、水素自動車、燃料電池車の話もあまり語られません。エタノールブームには、石油の代わりにエタノールが使えるぜ、アメリカは不滅だぜ。何となく脳天気なところがあります。エコカーの失敗が米自動車の危機を招いているにもかかわらずにです。
自動車はすばらしい、でも自動車のない生活はもっとすばらしい。早朝散歩でハナミズキの白い花を見ながら思うのですが、どうでしょうか。