GTRを見ましたか。

コンテンツ・ビジネス塾「GTR」(2007-45)11/13塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

フェラーリよりポルシェより速い、GTRをクリスマス・プレゼントに。
日本初の最高時速310kmのスーパーカーがデビューします。12/6から全国で発売されるニッサンGTRです。V型ツインターボ、排気量3.8リットル、最高出力480馬力。スタートから時速100kまでの加速性能は、3.6秒。フェラーリF430の4.0秒、ポルシェ911ターボの3.7秒より速い、とんでもないクルマです。しかも価格は、800万円前後、911ターボの1921万円の半値以下。さらに驚くべきはその静粛性です。逆位相の音を出して雑音を消す、BOSEヘッドフォンのノイズ・キャンセリング・システムと同じ原理を採用し、300km/hで走行中に助手席の彼女と愛を語れるというのです。あわてないでください。もちろん東名や第3京浜を300km/hで走ることはできません。180km/hでリミッターが働きます。しかし、ここからが粋(イキ)です。GPSがサーキットだと認識するとリミッターが解除され、300km/hを思う存分エンジョイできるというのですから(「ENGINE」07.12 新潮社)。
東京モーターショー
GTRは、幕張メッセで開かれていた第40回東京モーターショーの目玉になっていました。「環境」がテーマのイベントでなぜスーパーカーのGTRが話題なのか。そこに日本クルマ社会の苦悩が象徴されています。GTRの競合は、フェラーリでもポルシェでもましてやトヨタでもない、自動車への「無関心」である、とニッサンのマーティング関係者が発言しています(前出ENGINE)。日本の若者の自動車離れが深刻になっているのです。国内新車販売は、登録者ベースで、27ヶ月連続前年実績割れ(ただし10月はプラスに)。モーターショーには、GMなどの米国メーカーの首脳が来場していません。東京モーターショーは、デトロイト、フランクフルトと並ぶ世界の3大モーターショーですが、「上海モーターショーと統合したら・・・」と提案されているのです(日経10/25)。市場は、日本から中国とインドへと変わっていくのです。
なんだか景気の悪い話になりましたが、GTR以外の東京モーターショーの印象を紹介します。
やはり説得力のあったのは、「2007 F1 CHAMPION」のキャッチコピーをロゴの下に小さくレイアウトしたフェラーリです。イタリア人には内緒ですがF1レースは、フェラーリのブランドイメージを守るためのイベント、でしかないのです。さらにクルマを発明した歴史を持ち「Culture of Driving」のキャッチコピーを掲げたベンツも堂々としていました。ジーゼルエンジンは環境エンジンとして生まれ変わるのです。「私の夢を実現してくれるクルマはどこを探しても見つからなかった。だから自分で造ることにした」という、ポルシェもキザ(気障)でした。あともうひとつ、「MINI.」(小型の)というキャッチコピーのミニもオシャレでした。DJを中心にしたクラブのような展示ブースの構成が、ミニをいまのトップファッションにしていました。では、どこの会社の展示をベストに選ぶか。GTRの日産でしょうか。いえいえ、それは違います。トヨタです。世界のナンバーワンは、やはりトヨタです。
○GTRに負けない。トヨタには、レクサスIS Fがあります。
「Harmonious Drive」。これがトヨタのキャッチコピーです。調和のとれた、人と仲のよい、快適。これがハーモウニアスの意味。ズバリ、トヨタの展示は、ハーモウニアスです。まずカアログがいい。一本のヒモをモチーフにしたアートに好感が持てます。大きなところでは、レクサス・ブランドの立ち上げが大成功しているのです。豊かさへの夢、高性能への夢、FIへの夢、環境への夢、交通弱者への夢、すべてを十分に語ることができているのです。
トヨタは世界で強いだけでなく国内でも、新車販売シェアで51%と独り勝ちしています(日経11/2)。その裏にはカイゼンへの努力があります。レクサスには、100個のコピュータが積まれています。ソフト技術者は1万人を超えています。ライバルはグーグルだというのです。リナックスのプログラムを全世界のプログラマーが書き変えるように、全世界に広がるトヨタのネットワークが、生産方式をカイゼンしているのです。「この中に評論家が何人かいる」。役員会議の空気を凍りつかせた、渡辺社長のひと言です(日経10/31)。カイゼンとは提案と行動です。渡辺社長はハーモウニアスのなかで423馬力のレクサスIS Fを、ゴーン社長はパッションで480馬力のGTRを生み出しました。さて、どちらをクリスマスプレゼントに選びましょうか。・・・・・私たちの選択は、レクサスです。