銀座に行ってますか。

コンテンツ・ビジネス塾「銀座」(2007-46)11/20塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

○東京・銀座がおもしろい。
イタリアのアルマーニ・グループの旗艦店「アルマーニ銀座タワー」が11/7に、オープンしました。晴海通りをはさんで向かい側には「グッチ」が、そしてグッチ側から見れば、アルマーニの左隣に「ディオール」が、少し離れた右側には「エルメス」があります。近くには、シャネル、セリーヌ、ヴィトン、プラダカルティエのお店もあります。さらには、ブルガリ、アルフレッドダンヒルの旗艦店も年内にオープンします。加えて銀座松屋は、ビル全体を、「ルイ・ヴィトン」の巨大なバッグに変身させています。デザインはジャパン・アートの第1人者である村上隆。これは期間限定のクリスマス・デコレーションですが、銀座は世界でも珍しいブランドのメッカになっています。マンハッタンの5番街、ロスアンゼルスのロディオ・ドライブ、パリのシャンゼリゼにしても、これほどブランド店が集中していません。銀座はすごいのです。さらにニュースが銀座にあります。有楽駅前に「有楽町マルイ」がオープンしたことです。お店の中にいるのは、これまでの銀座の人たちではありません。渋谷や池袋からの若者、あるいは埼玉や千葉からの家族連れが多いのです。銀座は富裕層だけの街ではありません。ターゲットを広げ、さらに巨大な市場に変身しようとしているのです。
アルマーニの野心。
イギリスの調査会社ミルフォード・ブラウンではブランド価値ランキングを発表しています。それによれば、総合部門では、グーグル、GE、マイクロソフト、コカコーラ、チャイナ・モバイル。ラグジュアリー部門では、ルイ・ヴィトン、シャネル、カルティエエルメス、グッチ。アルマーニは第10位です(ビジネスアイ07.4/30)。つまり銀座での話題は、ラグジュアリー部門でのブランドの話題です。しかしこの部門でもさらに分類して考えた方が問題がハッキリします。
エルメスルイ・ヴィトンがメゾン・ブランドであることです。メゾンとは家、家系。家とはフランスのナポレオン3世の王室のことです(第2帝政、1852~1870)。エルメスは王室御用達の馬具商、ルイ・ヴィトンは王室御用達の荷造り業者でした。つまりメゾン・ブランドは、産業社会の市民に王室御用達の「品質」と「希少性」を売ることで成功してきたのです。対するシャネル、アルマーニは、デザイナー・ブランドです。産業社会の申し子です。「デザイン」と「大量生産」で売ってきました。シャネルは封建社会のコルセットから女性を解放し、女性の体を自由にしました。アルマーニは工業社会の肉体労働から女性を解放し、女性の精神を自由にしました。
わかるのは、メゾン・ブランドを議論しても、何も始まらないことです。ジョルジオ・アルマーニ株式会社の設立は、ビル・ゲイツマイクロソフトと同じ1975年。ゲイツが、パソコンからホームオートメーションに戦場を移すように、アルマーニもライフスタイルをデザインしたいのです。銀座タワーには、ファッションのほかに、インテリア、カフェ、レストラン、そしてアルマーニ・スパがあり、エステやマッサージを受けられるます。さらにアルマーニは東京で高級ホテルの開くことを発表しています。私たちが訪れた銀座タワーのベッドルームは、静謐な薄暗いライティング。そのテイストは、ヘルシーなものとは違います。いけない秘め事に誘われたように、頭がジンジンしてくるものです。
○2016年の世界都市。
新聞ではあまり話題になっていませんが、銀座で次第に存在感を強くしているブランドがあります。銀座の「ユニクロ」です。ユニクロは、鳩居堂のとなりのとなり銀座のなかの銀座、一等地にあります。ユニクロは完全に「銀座OL御用達」に、アジアからの旅行者の「東京ショッピングの定番」になっています。ラグジュアリーでもデザイナーでもない、カジュアル・ブランドのユニクロは銀座の勝者です。銀座の次の話題は、デパートの再生です。三越松坂屋がそれぞれ2010年と2012年にモデルチェンジします。デパートは、エルメスやヴィトンとほぼ同時代の古いビジネスモデルです。デパートには革命が必要です。
昔、東京は「世界都市」としてのイベントを、そのときの知事の決断で自ら放棄し、停滞の道を選びました(1995年)。東京オリンピックは2016年、そのときまでに銀座は、ウラハラ、アキバを統合し、ラグジュアリー、デザイナー、カジュアルを超えた、クール・ブランドの街に変身しているでしょう。