コンテンツ・ビジネス塾「スティーブ・ジョブス」(2008-23) 6/10塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、iPhone(アイフォーン)
07年6月に米国で発売され全米を興奮に巻き込み、わずか10ヶ月間に欧米で540万台を販売したアップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)」が、いよいよ今年中(2008)に日本でも発売されることになりました。アップルと契約に成功したのはソフトバンクモバイルです。NTTドコモも契約交渉をしていましたがこちらは不調。しばらくはソフトバンクだけのアイフォーンになりそうです。
アイフォーンはいままでのケータイとは姿も形もまったく違います。テンキーやキーボードがありません。大きな画面だけがあり、さわるだけでつぎからつぎへと画面が変化する、直感的なタッチパネル式です。特徴を簡単に言うと、音楽を自由に楽しめるiPodの機能を持ったケータイということになりますが、ユーチューブ、ニコニコ動画、大きな画面で映像を自由に扱えるのが魅力です。
静かなレストランで外国のクリエーターに、アイフォーンでポートフォリオ(作品集)を見せてもらいました。引き締った鮮明な映像は充分に説得力があります。クリエーターの資質を完璧に理解できます。フランス料理を食べながら、ビジネスのプレゼンテーションをさりげなく受ける、なんてまさに夢です。iPhoneには、ビジネスを変え、世の中を変える力があります。
2、スティーブ・ジョブス
アイフォーンを発売しているのは、米国のアップル社です。しかしこれはひとつの会社の製品ではありません。アップルのカリスマ経営者であるスティーブ・ジョブスのきわめて個性的な作品と言った方がしっくりきます。スポーツカーのポルシェがフェルディナンド・ポルシェの作品であり、ホンダのスーパーカブが本田宗一郎の作品であるように、アイフォーンはジョブスの作品です。
ジョブスの初めてのパソコンは1977年発売のApple 1 。1984年のマッキントッシュでは、いまのPCの原形にたどり着きます。アップルは、創立10年で4000人の従業員、20億ドル(4400億円)の大企業。世界で初めてPC事業に成功した男は20代でフォーブスの長者番付にのる成功を収めます。
しかしジョブスは、30才にしてアップルを追放されます。あまりものわがままが嫌われました。ジョブス退任のあとのアップルは低迷しますが、やがてジョブス復活の日がやってきます。解任から12年後の1997年に暫定CEOとして、アップルに戻ります。まず、iMac、iTunes、iPod を成功させます。つぎに、CGアニメの制作会社・ピクサーのオーナーとして、映画「トイストーリー」ほかのヒットを飛ばします。さらに、ジョブスは、いつのまにか、なんとディズニーの筆頭株主にまでになっています。
アイフォーンは、世界を代表するカリスマ経営者の作品なのです。
3、いつまでもハングリー。いつまでもおばかさん。
ジョブスから学べることは3つあります。
第1は、いつも最新技術のとなりにいることです。象徴は1984年のマッキントッシュです。そこには現在のパソコンのすべてに使われているアイコン(GUI)が登場しています。それはゼロックスの研究所にあった生まれたての技術でした。
第2は、ハイテクをハイタッチに仕上げることです。使いやすくかっこよく仕上げるのです。ハンダ付のラインが気に食わない。プリント基板のパターンが美しくない。とんでもないことにジョブスはノーを言います。だからiMacもiPodもiPhoneもかっこいいのです。
第3は、圧倒的なプレゼンテーションでマーケットを獲得していることです。
ジョブスはプレゼンの天才といわれますが、間違いなく原稿と練習に多くの時間を使っています。
05年にスタンフォード大学でやったジョブスの伝説のスピーチがあります。女子大生の私生児として生まれた出生の秘密、アップルをクビになったこと、そしてすい臓ガンからのカムバック。プレゼンのお手本のような3部構成のスピーチ。ジョブスは若い頃から、きょうが人生の最後の日だったとしたら、きょうのスケジュールをこなすか、と自らに問いかけることを習慣にしていると言います。1日1生。朝(あした)に生まれて夕べに死す。
スピーチの最後は、” Stay Hungry . Stay Foolish ." いくつになっても知的好奇心を失わずに、いつも自由に表現しよう。いつまでもハングリーで、いつまでもおばかさんでね。