TED TIMES 2020-22「カルゴス・ゴーン事件」 4/23 編集長 大沢達男
ゴーン事件でわかりました。日本人、カッペね。
1、Mr. Agree
♫新しい上司はフランス人/ボディーランゲージも通用しない/これはチャンス これはチャンス/勉強しなおそう/明日がある 明日がある 明日があるさ♫(ウルフルズ 2001年)
缶コーヒー「ジョージア」のCMソング、♫新しい上司はフランス人♫を聞いたとき、私たちは即座にゴーン社長を想像しました。カルロス・ゴーンが日産の社長に就任したのが2000年の6月です。英語が公用語になる。会社での会議は英語で行われる。日本人のビジネスパースン、全員がビビりました。アイコンタクトをして、相手の話を聞くことができるか。イエス、ノーをはっきり言えるか。コミュニケーションできるかです。
『深層 カルロス・ゴーンとの対話』(郷原信郎 小学館)を読んでいて、こんな初歩的なコミュニケーションに問題があったのだ、と驚きます。
カルロス・ゴーンを日産から追い出した西川廣人社長のニックネームは「ミスターアグリー」(I agree.=ゴーンさんに賛成)でした。ゴーン氏は「西川は非常に忠誠心が高く」、「西川は私の言うことに対して一切反論しない」(p.25~6)、と振り返っています。ところがこの西川氏が、ゴーン氏を検察に売っていました。
2018年11月19日夕刻、ゴーン氏はプライベートジェット機で羽田空港に到着後に逮捕され、その日の午後10時に西川社長は記者会見を開き、ゴーン会長に重大な不正行為があったとして、会長解任の提案する決断をした、と発表します。「ミスターアグリー」は、ゴーン氏に対して「憤り」と「落胆」を述べます。これって何ですか。西川社長は、コミュニケーションで一番やってはいけないことを、やっていませんか。法律、ビジネス、コミュニケーション。それ以前です。嘘をつかない、約束は守る、誠意を尽くす、人間の品格の問題です。
2、無罪
『深層 カルロス・ゴーンとの対話』は、ゴーン氏への容疑を全面的に否定します。まず、東京地検特捜部の起訴への反論します(p.292~3)。
1)金証法違反は、「未払い報酬」に関する有価証券報告書の記載の問題であり、形式犯であるだけでなく、犯罪の成否にも重大な疑問がある。2)新生銀行とのスワップ契約の日産への付け替えの特別背任事件は、日産に実際に損害が生じていない。3)中東ルートの特別背任はCEOリザーブからの支払いが「任務違背」だとする証拠が希薄である。有罪となる可能性は低い。4)レバノンとブラジルでの住宅購入について、検察は立件を見送っている。プライベート・ジェット機の個人使用などは、会社幹部が認識し容認していた事実である。
次に、なぜ日産がゴーン氏を解任したかの理由説明。日産の「元会長らによる不正行為に関する社内調査について」へも反論します(p.180~1)。
1)報酬開示義務違反。2)役員退職慰労金打切り支給額の工作。3)ジーア社への投資資金を住宅購入への流用。4)コンサルタント報酬目的で実姉への75万米ドル支払い。5)コーポレート・ジェットの私的使用。6)会社資金での家族の旅費支払い。7)出身大学への寄付。8)為替スワップ契約での含み損の会社への承継。9)合弁会社(HMBV)から支払い受領。10)販売代理店への不適切な報償金支払い。11)SAR(株式連動型インセンティブ受領権をめぐる不正。
結論。事件の本質は、日産経営陣一部が検察と結託した、「ゴーン会長追放クーデター」です(p.293)。西川社長らの保身、経営幹部のゴーン氏への鬱積した不満・反感、さらに会社を追われた元日産幹部の恨み、そして国内販売を軽視することへの国内ディーラーの反発、これらの力が「ゴーン会長追放クーデター」を引き起こしました。これが『深層 カルロス・ゴーンとの対話』の最終結論です。
3、検察
ト、ホホホ!。なんとも情けない。日産のだれもが、ゴーン氏とディスカッションできなかった、ディベートできなかった。言いなりになって20年間、我慢してきた、それが爆発した、というのです。
まさに♫ボディランゲージも通用しない♫。なのに、勉強しなかった!だから、明日はなかった!
しかし、だれもダメな日産の人たちを笑い者にできません。笑い者にされているのは日本人です。ダメな日本人と結託したのは東京地方検察庁特捜部、なんと日本の国家権力だからです。
田中角栄のロッキード事件、堀江貴文のライブドア事件、カルロス・ゴーンの日産事件。いずれも特捜部は、時代の頂点をいく人、そしてグローバルな問題をターゲットにし、日本の恥を世界にさらしています。