さらばホリエモン。

コンテンツ・ビジネス塾「さらばホリエモン」(2009-10) 3/17塾長・大沢達男
1)1週間分の日経、ビジネスアイとFTが、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)あすの仕事につながるヒントがあります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、堀江貴文被告
ホリエモン事件は、2006年1月16日にライブドア本社と堀江氏の自宅などが、東京地検特捜部に証券取引法違反容疑で家宅捜索されて、始まります。06年1/22逮捕、07年3/16東京地裁、懲役2年6ヶ月の実刑判決、08年7/25東京高裁控訴棄却、弁護側即日上告、最高裁の判決を待つ状態で現在に至っています。
堀江貴文被告は先ごろ「徹底抗戦」(堀江貴文 集英社)を出版しました。無実を主張しています。極めて説得力に富むもので、その明快な論旨は、堀江被告が世界で戦える才能を持ったビジネスパースンであることを示しています。しかし結論は、「正直者は馬鹿を見る」という自虐的なものです。無罪を祈りますが、判決がくつがえることはないでしょう。堀江被告は間もなく犯罪人として塀の中の人間になるでしょう。この事件から学べるものは何かを考えてみます。
2、フィナンシャルタイムズ
家宅捜索の2日後にイギリスの経済紙「フィナンシャルタイムズ」が、「日本の古い勢力がリベンジを始めた」と、社説で堀江支持を表明し、驚かせました。
1)堀江氏は、官僚主義と慣行主義を打ち破り、日本に新鮮な空気を送り込むヒーローである。
2)堀江氏は、金融市場のルールの不備を、テストするような取引であぶり出している。
3)堀江氏は、古い勢力の経営者に危機感を与え、彼らにやる気を起こさせている。
3年前のフィナンシャルタイムズは現在の状況を見通しています。「彼は、日本の古い勢力のビジネス秩序に異議を申し立てた、もし彼が有罪ならば、それは安心の青ランプとなって、日本中の役員会議に流される。古い勢力は気分のいい古いやり方でいいと安心する」。そして結論は、捜査結果のいかんに関わらず、日本には堀江氏のような勇敢な革新勢力がまだまだ必要である、というものでした。
この論調は当時の日本の新聞の主張のそれとはかけ離れていました。さすがの日本経済新聞も左右に大きく揺れていました。まず学べることは、セカンド・オピニオンの大切さです。
3、検察庁
ホリエモン事件で最初に動いたのは、証券取引等監視委員会でも、金融庁でもありません。東京地方検察庁特捜部です。堀江被告は、たとえば時間外取引などの節目では金融庁の指導を受けながらビジネスをすすめていたと主張しています。ですから、いきなり検察庁は晴天の霹靂(へきれき)であったと振り返っています。なぜか。以下は「徹底抗戦」からです。
1)検察庁は、捜査、逮捕、起訴できる、国内唯一の機関である。起訴は99%の有罪につながる。
2)検察庁は、検察官一人一人の独任官庁。検察官の胸三寸で事件化されるかどうかは決まる。
3)経済事件の重罪化は、検察OBに、企業コンプライアンス法令遵守)特需をもたらしている。
検察官は使命感に基づいて、堀江氏を捜査し、逮捕し、起訴し、有罪にしようとしたのです。その使命感とは、「こいつらだめだから、おれがやる。・・・世直しの発想」(佐藤優 『フィナンシャルジャパン』 07.5)です。
古くは、「金権政治」の田中角栄を許せないと考えた検察官がいました。そして、「稼ぐが勝ち」と宣言した堀江貴文は若者に悪影響を与えると考えた検察官がいました。そして今、小沢一郎の民主政権は、かえって日本を混乱させると考えた検察官がいた、と推測できないでしょうか。
ここから学べることは、検察の独走を許さないために、司法制度がおかしいなどと騒ぐより、とりあえず陪審員制度に協力することです。遠回りですが、現実的な選択です。
もうひとつ学べるのは、ビジネスで成功したら、儲けたカネを社会のために寄付することです。憂国の検察官をカネもうけで刺激しないことです。40年以上株主の虚偽記載をしてきた、堤義明元コクド会長は執行猶予でした。つまり彼は儲けを社会に還元してきたからでしょう。
堀江貴文と同じ1972年生まれには、日本の未来を決めるスーパースターがいます。木村拓哉貴乃花熊川哲也高橋尚子、そして故飯島愛。さらばホリエモン。また会う日まで。